第1361話  ダンジョンマスターからの提案

「っというわけで、ぱんんげあたいりくは、すでにまんをこえるじんこうになっているでち。みなさまにも、あんちんちてくらしていただけるとおもいまちゅ」

 舌っ足らずな口調で話す幼女は、モフリーナに命じられてはるばる星の裏側までやってきているもふりん。

 はるばるとは言っても、すでにダンジョン化している部分があるため、移動に時間など掛からないのだが、距離的にはとんでもなく離れている…という意味でだ。


「ふむ。では、例の現地活動用サイバネティックス・ボディの2人は、完全に管理局とは切れたという事か?」

 もふりんの相手が問いかけると、

「そうおもっていただいてかまいまちぇん!」

 妙に元気よくもふりんは言葉を返した。

「なら、もうそろそろ良いんじゃないか?」

「タイミング的には、少し早い気もするが…」

「他の奴らはすでに接触しているらしいじゃ無いか」

「出遅れは恥ずい?」

「早ければ良いってもんじゃないだろう?」

「いや、お前は早いじゃん!」

「お前ら、多分早いが指す言葉の意味が違うとおもぞ?」

「え、俺は遅いけど?」

「早くても回数熟せばいいんだよ!」

「何の話してんだ?」

 もふりんが向き合っている者達は、好き勝手に話し始めた。

「いや、ちょっと落ち着け俺達! 今はそんな下品な話をしている場合じゃない!」

 先程、もふりんと言葉をかわしていた者が、全員を見回しながら声を荒げるが、

「うっせーよ、この早漏!」

「だまっとけ、この仮性人が!」

「そうだそうだ、この短小め!」

「俺は太ももが好きだ!」

「何だと~? 俺は尻だ!」

「いや、やっぱおっぱいだろ?」

「おっぱいは大きさじゃない! 形が全てだ!」

「やっぱ好みとしてはBからCだな」

「ぼ、ぼくは…ちいさいのも、す、好きなんだな」

「Tシャツ短パンの大将が混じってるぞ!」

 またもや下品な言葉が飛び交う場となってしまった。

「だから、ちょっと黙れよ俺達! 互いを罵ったって、全部元は一個の俺なんだぞ!? 全部自分にブーメランってのを忘れて無いか?」

「ギャランドゥ?」

「今の誰だ?」

「懐かしいじゃねーか!」

 誰かの余計な一言で、また場が…。

「いいから、ちょっと黙れって言ってるだろ! 今は、このダンジョンマスターからの提案をのむかどうかの話あいの最中なんだぞ!」

『……………』

 やっと静かになっ…たかな?


「つまり、局長の意識が世界の外に向いているうちに、あいつを覚醒させようっていう計画で間違いないな?」

「そのとおりでち!」

 もふりんの答えに、先程まで煩く騒いでいた者達も、静かに考え始めた。

「例の上空に映し出された地球…か」

「暗にあれが局長の興味がこの世界の外に向いたっていう証拠か…」

「派遣員の2人が、完全に切れてって言うなら、俺は賛成だ」

「ふ~む…」

「まあ、直に接触した方が覚醒は早いだろうな」

「だが…」

「それならば…」

 静かにもふりんが彼等にした提案についての検討会が続いていた。 


 彼等の結論が出るまで特にやる事も無くなってしまったもふりんは、ぼへぇっと空に浮かぶ星々を見つめていた。

「じぶんがせかいのいちぶだというこちょにきじゅかにゃいとは、きょくちょうもだめだめでちゅねぇ…」

 ぽつりと呟いたその言葉は、意外に思い一言の様なのだが…誰も聞いて無かった。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る