第1339話 お前、前世は…
「君に前世の記憶と人格が残っているのは、すでに俺達にばれている。なので、俺の言葉が通じているのも分かっている。だから、ゆっくり話をしようじゃないか」
ベビーベッドでこちらをじっと見つめるエド君に、おれはそう話しかけた。
「まあ、話しをしようと言ったところで、まだ君は言葉を話せないだろう。なので、YES・NOで答えられる質問を俺からしようと思う。YESの時は…そうだな、だぁ! とでも言ってくれ。NOの時は、だぁだぁ! と2回、答えられないもしくは質問や答えが分からないときは沈黙で良い。出来るか?」
こう俺が問いかけると、「だぁ!」と言ったので、どうやら理解出来ている様だ。
「君が俺の言葉を無視したり知らん顔したりしない、素直な性格で良かったよ。まあ、質問の前に俺の自己紹介だ。さっきも言ったが、俺はこの世界での君の兄にあたる、トールヴァルド・デ・アルテアンという。次の正月で19歳だ。一応、国からは伯爵の位を賜っている。俺と君の父親は、ヴァルナル・デ・アルテアンと言って、侯爵位だ。そして君はエドワード・デ・アルテアン。ここまでは良いかな?」
今現在、自分が置かれている立場をまずは理解してもらおう。
「だぁ」
「母さんの名は、ウルリーカ・デ・アルテアン。君には2人の姉も居る。長女は、コルネリア・デ・アルテアンで次女はユリアーネ・デ・アルテアンだ。んで、俺には5人の妻が居る。まあ、次女には少々込み入った事情があるし、俺の妻の紹介などはの詳しい話はまたこの先機会があったら話そう。家族構成に関してはこんな感じだ…理解出来たかな?」
「…だぁ」
ちょっと詰め込み過ぎ? いや、いきなり兄貴に嫁が5人ってだけで混乱するか。
「さて、現在俺達は色々と複雑な事情があるので、あまり時間的な余裕がないので、早速本題に入ろうと思う」
「だぅ」
…何か、返事が微妙に変わった気がするけど、まあいいや。
「君は前世の記憶を持っているか?」
「だう!」
ふむ、ここら辺の見立ては間違いないか。
「君は前世は大人だった…あ、これじゃ駄目だな。前世は20歳以上だったか?」
「………だう」
えらく間が空いたな?
「君は前世で死んでこの世界に転生したんだと思うが、死因を覚えているか?」
「だぁ…だう!」
ふむ、憶えてない…だろうか?
「ちなみに、俺の前世は大河芳樹という。つまり、君と同じく、前世の記憶を持っているんだが…君は前世の名前を憶えているか?」
「だぁ」
覚えていると…。
「転生の時、輪廻転生管理局の誰か、もしくは神様の様な光の巨人に会ったか?」
「だぁ…だう」
会って無いのか。
「ふむ、これは想定外だな…まあ、いい。君の前世は地球か?」
「………………」
答えられないのか? いや、待てよ、
「住んでた所が地球かどうか分からないのか?」
「だう!」
これは意外な答えだ。
自分が住んでいた天体の呼び名が分からないって事か。
確かに今俺が住んでるこの星にも名前は無いから不思議では無いのだが…。
「ちなみに…だけど、大河芳樹って名前に心当たりあったりする?」
「だぁ」
え、知ってるの? え、んじゃ何で前世が地球って知らないんだ?
「ちょっと待って。俺の名前に心当たりがあるのに、地球を知らない?」
「だ~う!」
おぉ、めっちゃ力強く答えよったぞ、こいつ!
って、これってどういう事なんだ?
エド君の答えの意味が理解出来ずに俺が悩んでいると、
「マスター、差し出口をお許しください」
ナディアがそう言いながら俺の横に立った。
「どうした? 何か気になる事でもあったか?」
「はい。マスターは根本的な部分の質問を忘れておいでです」
ん?
「どゆ事?」
「では、私が代わりに質問いたしましょう。構いませんか?」
気になる事があるなら、別にナディアが質問したってOKだぞ。
「ああ、構わない」「だう!」
……エド君も俺と同時にOKしやがった。
そしてナディアは、「僭越ながら」と前置きした後、
「では、質問させて頂きます。エドワード様、貴方様の前世は男でしたか?」
おぅ! 確かにその質問はしてなかった!
「…だう」
やっぱ男だったか。
「貴方の心は男でしたか?」
何だ、その質問は?
「だぁだぁ!」
そうか違うのか…………って、
「お前、前世は男の娘だったのか!?」
「だ…だぁ…」
恥ずかしそうにモジモジすんな!
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