第1302話  洗濯の生地は重要です!

「順調にテスト項目を消化出来てる…後は127項目を残すだけ…」

 トールの邸の地下格納庫の改造は、一旦もふりんとカジマギーに任せ、モフレンダ達ダンジョンマスターはパンゲア大陸で自分の身体と巨大メイドロボのテストを兼ねた、サラとリリアの慣熟訓練の様子を見に戻って来た。

「うげぇ…まだそんなに項目が…?」

 モフレンダが呟いたテスト項目というのは、つまりは実戦配備前に行う最終的な試験であるが、あまりにも細かく多い項目にサラは少々飽きて来たようだ。

「まあ、そう言うな。実際、このロボたちはロールアウトしたとはいえ、まだまだ稼働試験は必要じゃ。何せ、最終決戦時に不具合で動けなくなったりしたら大変じゃからのぉ」

 そんなサラを励ます様に言葉を掛けたのはボーディ。

「そうですね。確かにいざという時に不具合が見つかったら目も当てられません。とはいえ、実際の戦闘になったら不具合は出るかもしれませんが…」

 これはリリアの言。

「設計と試験場で問題無くても、実際に動かしたら問題が出るっていうやつ?」

「ええ、その通りですサラ。例えば戦闘機でもそうですが、テスト飛行は気が遠くなる様な数を熟さねばなりませんし、それでも十さん配備された後に不具合は出るものです。なので、随時アップデートが必要なのは、このロボでも同じ事ですよ」

 リリアがそう解説をするが、それでもすでに何十時間もテストを繰り返しているサラからすると、面倒な事は面倒なのだ。

「ま、まぁ…まだ時間は多少あるかと思いますので、気長に頑張ってテストをしましょう」

 ちょっと焦りながら、なんとかこの場を収めてサラにテストを続けさせようと、モフリーナが宥める。


「へ~へ~、分かりましたよ…っと、ところで何であんなおかしな機能を付けたんです?」

「えっと、サラさんは何か気になる機能がありましたか?」

 一度は納得したサラであったが、気になる点をモフリーナに問いかけた。 

「感覚リンクシステムの、超敏感ビンビン・モードだよ!」

「あぁ~……アレですか……。モフレンダ、説明を」

 サラの叫びを聞いたモフリーナは、悦明をモフレンダに丸投げした。

「リリアの要求通りに付けただけ。いやならリンクを切ればいい」

 実に簡潔に纏めた説明である。

「切れねーんだよ! ってか、切り方知らねーんだよ!」

「教えてない」

 サラがキレないと切れた…いや、切れないとキレたのに対し、モフレンダの非情な一言。

「何で!?」

 サラがそう言うのも当然か?

「教えるなとリリアに言われた。現状は教師び〇びん物語…違った、超敏感ビンビン・モード固定」

「何かおかしな事言わなかったか? トシち〇んが出てたドラマの名前みたいなの聞こえたぞ?」

「気のせい」

 モフリーナの説明に喰いつくサラと、無表情で軽く躱すモフレンダ。

「気の…まあいいや。どうせ私にゃ選択の余地なんて無いんでしょうし!」

 とうとう、サラが拗ねた。

「そうです、選択の余地は無くとも、洗濯の生地は重要です! 何であのサボットのパンツの生地は、あんなにゴワゴワなのですか!? 私は断固シルク製もしくは総レース製を要求します」

「サボット? ちょっと略しすぎなんじゃね!? ってか、リリアは一体何を言ってんだ? ロボのパンツの生地なんて何でもいいだろーが!」

 とうとうロボットの名称がこんなに略されました。

「あれはパンツではない! スク水だ!」

 サラの悲痛(?)な叫びなど完全に無視したモフレンダが、リリアに告げる。 

「な…なんと!? まさか、メイド服の下がスク水とは斬新…これは1本とられました。なるほど、股間部分しかずらせなかったのはその為なんですね…」

「リリア、お前何言ってんの!?」

「流石だ。もうそこまで確認しているとは…」

「いや、モフレンダも何感心してんだよ!」

「ですがあの色は…まさか、白スク!?」

「まさか色まで確認済みとは、恐れ入ったぞ、リリア」

「あの幻の白スクなの!? って、何でそんなの着せてんだよ!」

「もしや胸部には…『さら』と書かれたゼッケンが?」

「勿論、付けてある。アイロン・シールで」

「それ…どこかで着た記憶が…って、何でそれをモフレンダが知ってんだよ!」

「ほう、なかなかこだわっておりますね」

「いやいや、それほどでも」

「サラちゃんの言葉は全部無視!?」

 自分の機体の話のはずなのに、完全に話に置いてけぼりのサラ。

 ついでに、モフリーナもボーディも初めて聞くロボのメイド服の下に驚愕。

「お前ら…揃いも揃って、アホばっかりかよ!」

 流石のサラも、完全無視となれば癇癪玉が破裂するのも当然…なのだが…。

「「お前にだけは言われたくない!」」

 リリアとモフレンダの息の揃った反撃の前に、あえなく撃沈したサラであった。

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