第1301話  戦闘訓練?

 ま、結局のところ、俺は今の爵位と領地を返上する事も、誰かに譲る事もする気は無い。

 だから、エド君に王族の婚約者が出来たこと以外は、特に変化は無い…っと言う事にしておこう。

 この先の精神の安寧の為にも…。


 いや、まぁメリルが何でこんな馬鹿な質問をしたのかっていう気持ちは分からなくもない。

 あの視界いっぱいに広がった青い星を目にしてしまったんだから、来る決戦がそう遠くない事に気付いたのだろう。

 それと、もう間もなく出産を迎える母として、我が子の未来を考えたからってのが大きいだろうという事。

 俺だって生まれてくる子供の未来を考えたら、色々と思わなくもない。

 あの神の如き管理局長と我が家のメンバーとがまともにやり合って、全員が無傷ですむなんて楽観もしてない。

 きっと誰かが傷つき、または死ぬだろう未来なんて簡単に予想できる。

 そしてメリルなら、そんな時には俺と父さんは率先して動くだろう事も想像できたからこそ、先々の話をしたんだと思う。

 その想像力は尊敬に値する。

 何故なら、俺や父さんが率先して危険地帯に突っ込むって想像は、非の打ちどころ無く正しいから。

 愛する家族を守るため、間違いなく相手が神であろうと戦うのが、俺や父さんだ。

 嫁ーず序列1位のメリルとしては、個人的な感情は別としても、俺や父さんがいなくなる未来を考えならなければならないだろう事は、重々承知している。

 そして、そうはなって欲しくないという個人的感情も、これまた痛い程よくわかる。

 だからこそ、俺はそんな悲しい未来にならない様、覚醒せねばならないのだ!

 いや、覚醒したからって、あの局長を打ち倒せるとも思えないんだけど…。

 それでもダンジョンマスター達の言う様に、まずはしっかりと覚醒し、局長と戦えるだけの力を手に入れなければならないだろう。

 うん、なんか俄然やる気出てきた!


 そういや、ボーディ達は地下の格納庫の整備に余念がないけれど、サラとリリアさんはいつ帰って来るんだろう?



「も…限界…やめて…」 

「あら、もう限界ですか? まだまだこれからだというのに」

「いや、マジで死ぬから…これ以上やったら、呼吸できなくなるから…」

「でも、ここはまだまだ欲しがってますよ?」

「ちょ、ちが! それはサラちゃんの意思じゃ…」

「ほう、無意識だと?」

「そうじゃなくて! お前が私をこんな風にしたんだろうが!」

「あら、私がサラをこんな風にしたと? 良いでしょう、では責任をとって…」

「こ、こら、そうじゃない! いや、まって…あっ…だ、だめ…や、やめて…」

「口ではそんな事をいっても、身体は正直ですねぇ」

「身体って、それはサラちゃんロボの身体だよ! なんでサブミッションばっか仕掛けて来るんだよ!」

「リリアロボを手足の様に扱うには、徹底的に私と同期させる必要がありますからね。遠距離船よりも、むしろ接近戦…特に関節技なの方が、よい訓練になります」


 ここはパンゲア達陸のダンジョン最下層薄暗くも広大な空間。

 そこで巨大なメイド姿のロボが、組んず解れずなにやらやっていた。

 無論、誰もそれを止めたりはしなかったが。 

 

 ※注 ここからは危険なのでロボ同士の絡みの情景はカットし、

    2人の会話と一部解説のみをお送りします。


「んな事言うけど、わたしゃあんたに何も出来ねーんですけど!?」

「無論、サラには何もさせません! 特にこれは私の得意分野ですし」

「あほかーーー! って、あ…ちょ、何でロボット戦で横四方固めなんだよ! って、そこから腕十字への変化だと~!?」

「ふむ、なかなかいい感触ですね。どうせ過負荷でもサラは痛くもないはずですから、ちょっと色んな技を試してみましょうか」

「あほー! 痛くないわけあるかーーい! 腕の関節が壊れる寸前までは、私も痛いんじゃ――――!」


 基本的に、サラとリリアの新しい肉体は、この巨大メイドロボと全ての感覚器がリンクしているので、過負荷でロボの皮膚が裂けたり、金属骨格や各関節などが破損など、搭乗者本人の肉体まで損傷を起こす恐れがある場合は、そのリンクが自動で切れる様になっている。

 なので、ロボが破損しても搭乗者であるサラには影響は無いのだが…結局、ぎりぎりまでは痛いのである。


「次は股裂き固めを試してみましょう」

「そりゃプロレス技…い、いててててーーーー! やめろーーー!」


 この巨大ロボが優秀なのは、リンクしているあらゆる感覚器官の感度を調節できるという点である。

 一般的なノーマル・モード、感度を落としたロー・モード、戦闘時などに空気の流れさえも感じる事が出来るハイ・モードなどがそれである。

 だが、リリアがモフレンダに要求して付けた裏モードがある…。


「ちょ、おま、どこ触ってんだよーーー!」

 …巨大ロボ同士の戦闘訓練?

「え、何でそんなとこの感覚が!? しかも、超敏感なんですけど!?」


 そう、裏モード…それは、超敏感ビンビン・モードである。

 実は、その存在をサラは知らない。


「超微弱な風だけルストハ〇ケーン! …ふぅ~♡」

「あ…ゾクッと来た! って、なんだその機能!? そんな機能あるのかよ!」

「私の機体だけのオリジナルです」

「はぁ~!? って、おま…なんでスカートたくしあげてんだよ!」

「もちろん、裏モードで敏感になってるここを刺激するためです! 微弱電流+超振動…サンダー・バイブレーション・フィンガー!」

「ん…あ、やっ…やめ…あふん」

「ほっほ~。この裏モードは、なかなか面白いですねぇ」

「裏モードって何だよ! あたしゃ聞いてねーぞ! って、めっちゃ感じるんですけどぉ!? …いや、今は駄目だから…それ以上は…マジでやめ…………あっ♡」


 戦闘訓練…だよね? 

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