第1297話  ここは敵だらけ

 まあ、そんなこんなでドタバタしたものの、何とかサラとリリアは新たな身体へと移る事が出来た。

 サラが何とか落ち着いたのを確認したモフレンダは、カプセルから呼吸のための溶液を抜き取り、新たな肉体を手に入れた2人をカプセルから出したのであった。

 ちなみに、流石にすっぽんぽんは不味いと感じたダンジョンマスター達は、2人が元の体の時に着用していたメイド服を着る様に指示したのだが、ここで小さな問題が発生した。

 問題とはリリアの下着を含めて胸と腰回りのサイズが少々合わなかったという事。

 仕方がないので今は無理をしてでも着用し、後程サイズ直しした物を着る事でなんとか決着をした。

 だが…サラは元の下着も服も、新しい肉体となっても、ジャストサイズのぴったんこカンカンだったので、本当に小さな問題…いや、色々とサイズが小さい事が問題では無いので、そこは突っ込まない様にしていただきたい。


「さて、2人共落ち着いた様じゃが、まだトールの元へと帰る事は出来ぬぞよ?」

 着替え終わった2人を前にして、ボーディがそう告げた。

「えっと…それは何故でしょうか?」

 新たな肉体を手に入れたのであれば、すぐにでも変える事が出来ると思っていたリリアなので、その理由が知りたい。

「簡単な事じゃ。以前話した、例の巨大兵器の扱いをマスターしてもらわねばならぬでな」

 ボーディの考えでは、2人が新たな肉体へと精神体(魂)とエネルギー体を無事移し換える事が出来たなら、あの巨大兵器を扱う訓練が必要だと考えていた。

 そもそも慣れない新たな肉体を手にした2人が、今の状態でまともな日常生活など送れるるはずも無く、そこにきて巨大兵器の操縦どころかマニュアルすら読んでいないのだ。

 このまま、あののんびりしたネス湖の湖畔での生活に戻ったりしたら、あの巨大兵器の操縦訓練のために、このパンゲア大陸に再び戻って来るとも思えない。

 なので、新たな肉体と巨大兵器の訓練を徹底的にこの大陸で行い、モフレンダの許可が出るまでは帰宅させないつもりだ。

「巨大兵器は別としても、新たな肉体に関して訓練など必要なのですか?」

 ボーディの説明を聞いてなお、リリアは疑問をぶつけたのだが、

「お主等に与えた肉体と脳は、前の肉体以上に高性能じゃ。無論、結界発生装置も内蔵されておる。この場では実感できぬかもしれぬが、後で思いっきり動ける広い場へと連れて行ってやる故、そこでいかに性能が変わったか実感するが良いのじゃ」

 こう返されては、黙るしか無かった。


 もっともサラは、

「高性能!? って事は感覚も鋭敏に?」

 何故かモフレンダに詰め寄っていた。

「ええ、まぁ…」

「って事は、サラちゃん超敏感!? 感じやすいって事は…げへへへへ…色々と捗りますなぁ~!」

 その高性能を変な事に使おうとしている様だった。

「なるほど、では私が実験に付き合ってさしあげましょう。び・ん・か・ん…なサラの肉体を責めたら、どんな声で啼くのかしらねぇ」

 雉も鳴かずば撃たれまい。

 サラがアホな事を言ったばっかりに、リリアという超ド級のSの心に炎を付けてしまったらしい。

「ひょえっ!? り、リリアには関係のない話でござんす…よ?」

「いえいえ、新しい肉体のリハビリを兼ねた慣熟訓練も必要な様ですから、サラの感覚器官の感触も確かめねばなりませんよね」

「え、い、いや…それは帰ってからショタで確認したいなぁ…なんて」

「いえいえ、私の肉体の訓練も兼ねてますので、どうか遠慮なさらず」

「え、遠慮しまっす! 絶対に嫌です!」

「ふっふっふっふっふ…私から逃げられるとでも?」

「ちょーー! ダンジョンマスターの皆さーん! この変態を止めなくていいんですかー!? まっさらのサラちゃんボディが変態の手で弄りまわされそうですよーーー! これは大問題では無いで…しょうかーー?」

 リリアの魔手から逃れるべくダンジョンマスター達に助けを求めるサラであったのだが、

「くっくっく…別に構わんじゃろ? (笑)」「…それぐらいでは壊れない…ぷぷ(笑)」「頑張ってください…ぷっ(笑)」

 ボーディもモフレンダもモフリーナも、笑いをかみ殺しつつ、そう言った。

「ちょ、誰も助けてくれない? えっ、ここは敵だらけなのーーー!?」

 いや、ここだけでなく、サラに味方する者など、見た事も聞いた事も無い気がするのは、気のせいだろうか?

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