第1295話 さっさと脱げ!
時は少しばかり遡る。
パンゲア大陸内の施設で、いよいよサラとリリアの中身が新しいボディへ移植(?)される日が来た。
2人の目の前には、中身が入っている水槽と、そうでない水槽の2対2組の合計4つの水槽が並ぶ。
中身の入っている水槽には、2人の為に新たに造られたボディーが何やら薄緑色の怪しい液体の中ですっぽんぽんで浮かんでおり、残る2つの水槽の中は空っぽで、それぞれ隣接する形で並び立っている。
「2人とも…全部脱いで…」
何やらモニターのような物に向かい2人を一瞥もせず、モフレンダがそう指示を出す。
「えっと、全部?」
その指示に困惑気味にリリアが尋ねると、
「もちのろん…ブラもパンツも全部…脱げ」
別に起こっている訳でもなさそうだが、モフレンダは命令口調でそう言った。
「私、何か嫌な予感がするんですけどぉ…もしかして、全部脱いだ後にこっちの水槽に入る…とか?」
2人を見守るように立っていたモフリーナに、サラが恐る恐るといった感じで問いかけると、
「ええ、その通りです。よくお分かりになりましたね。着衣を全部脱がれたら、サラ様はこちらのカプセルに、リリア様はあちらのカプセルへとお入り下さい」
改めてそう言われて、じっとカプセルと言われた物を見つめていたサラが、ぼそりと呟いた。
「これって、完全に…新造人間キ〇シャーンやんけ…」
しかし、リリアの感想は違った。
「絶対に蠅とかカプセルに入らないようにして下さいね? ちゃんと確認してくださいね?」
いつもは冷静な口調を滅多に崩さないリリアが、焦っているのか困惑しているのか、はたまた怖がっているのか、いやそれらの全てを合わせた様な声と表情で訴えてきた。
これにはさすがのダンジョンマスター達も何かあるのかと心配になったのだが、
「は…ハ〇男は嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
と、サラまでもが錯乱状態に陥ってしまった。
サラとリリアが恐怖のズンドコ…もとい、どん底に叩き落されたかの様な恐慌状態に陥った原因。
それは…トールの記憶の中に有ったアメリカの映画のお話に出てくる物質電送機の実験での出来事だ。
知っている方もいるだろうが、物質電送機という物体を瞬時に別の場所に移動させる装置の研究をしていた研究員が、自ら被験者となるべくその転送装置に入ったところ…ハエが紛れ込んでしまい、同時に転送されて混ざり合ってしまいハエ〇になってしまったという恐怖映画の事だ。
遺伝子レベルで混ざり合ってしまったハエと人間は、元に戻すことなど到底不可能で、だんだんと姿も思考もハエへと近づき…という内容なのだが、この時の物質電送機が形は違えども、どうしても2人には同じ仕組みに思えて仕方がない。
自分がだんだんとハエになっていく姿を思い浮かべれば…怖がるのも当然だろう。
今までサラやリリア達がボディを交換する時に、この様な装置を使ったりすることは無かった。
もっと直接的な外科的な手法を用いての中身の移植がメイン。
今回も同じ手法を取ると勝手に考えていた2人だったので、この手法が信じられ無かったのだ。
「心配するでないわ! この部屋は妾達の転移を使わねば入れぬ部屋じゃ。もう密室状態と言っても過言でない部屋なのじゃから、ハエなど入り込むはずなかろう?」
ちょっとキレ気味のボーディ。
「誰かの背中とかにくっついて、一緒に転送している可能性も…」
リリアが、可能性の話を始めた。
「無いわ!」
ボーディ、こめかみに青筋1本。
「ノミ女もいやだーーー! ネコ耳女とヒツジ女が居るんだから、ノミ飼ってるかもーーーー!」
「飼ってません!」「…こいつ失礼…」
サラの絶叫に、モフリーナとモフレンダが反論する。
そして、またボーディのこめかみに青筋が1本追加された。
「あ、安全確認は出来ているんですか?」「そうだそうだ! まずは自分達で安全性を証明しろーー!」
リリアとサラの抗議? は続いていたが…、
「やかましいわ! さっさと脱げ! そして、とっととカプセルに入れ! ハエもノミも混ざらんわ!」
とうとう、ボーディの我慢の緒がブチ切れた。
「ぬ、脱げ!? セクハラ!?」「サラ、この世界にセクハラの概念はありません」
ボーディの言葉にサラが即座に反応するが、ここでリリアが冷静に捌く。
「面倒じゃ! もふりん、カジマギー! こいつらひん剥いてカプセルに放り込め!」
「あいあいさー!」「ラジャー!」
未だギャーギャー騒ぐサラと、幾分落ち着きを取り戻したリリアの下へと走る、もふりん&カジマギー。
まあ、結局どうなったかというと、サラはもふりんとカジマギーによって、ド突き回されて昏倒させられたうえ、無理やり服をひん剥かれてカプセルに放り込まれた。
何故か落ち着いてきたリリアは、自分で服を全て脱ぎ、カプセルへと向かった。
リリアがどうして落ち着けたのかは不明だが、2人がカプセルに入ったのを確認したモフレンダは、
「ポチッとな」
髑髏マークの赤いボタンを、その白魚の様にしなやかな人差し指で押すのだった。
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