第1222話  沈めてやりたい…

ずどぉぉぉぉぉぉぉんんん!

「た~まや~!」

どぐぁぁぁぁぁぁぁぁんんん! 

「か~ぎや~!」

ずどどどどどどどどどどどど!

「…自衛隊の総合火力演習みたいだなぁ…」

 目の前に光景に思わず呟いてしまったのだが、目ざとくそれを聞きつけた者がいた。

「トール様、じえいたいって何ですか?」

 情報収集と分析を得意とする、わが嫁ーずの頭脳担当であるマチルダである。

「あ~うん、どっかの国の軍隊みたいな物…かな」

「なるほど、軍隊ですか」 

 自衛隊は一応は軍隊ではない…事になってるから、みたいな物って事で。

「でも、軍隊でもないのに、この様な武器を装備しているというのであれば、本当の軍隊だとどうなるのでしょう…少々怖くなりますね」

「ああ、うん…そうだね」

 核を持たないとはいえ、もはや自衛隊は軍隊と言っても過言ではない武装だしね。

 一応、自衛隊はJapan Self Defence Force(JSDF)って呼ばれてる。

 直訳したら自営の為の力って、軍事力に対抗する為の力なんだから、軍隊と同等だと思うんだけどね。

 それでも自衛隊なのだよ、自衛隊!

 お国の大きさが違うからアメリカさんの軍隊なんて、とんでもない規模だしなぁ…。


 おっと、そんな事はどうでもいい。

 今は、この目の前のとんでもない状況をの説明を求める!

「おい、ユズキ!」

「はい、どうしました?」

 俺の迫力ある声(頑張ってみました)に動じることなく、いつものぽやぽやした声のユズキ。

「どうしたもこうしたも、この世界にあんな威力の火薬なんて無いはずなのに、どうやったらあんなことが出来るんだよ!」

 そう怒鳴りながら俺が指さしたのは、上流から下流までの対岸で、派手な爆発を繰り広げている光景。

 いや、その爆発を起こしている原因は明らかだ。

 ユズユズ夫婦がこのワイバーン討伐の為に用意した、どっからどうみても地球の軍隊が持ってる携行式の兵器群だ。

 それらを筋肉エルフさん達が全部担いで上流から下流まで綺麗に別れ、全弾残さずお向かいの崖に向かって発射中。

 ミヤとヒナによって切り裂かれてつるつるぴかぴかになっている崖の斜面を、全マッチョ・エルフさん達が一斉攻撃中。

 花火じゃないけど、目茶苦茶に目の前でドンパチやってるんだから、「た~まや~! か~ぎや~!」と言いたくなるのもわかるでしょ? 

 とは言え現在は真昼間…って事は、運動会の開会の花火に近いかもしれんな。

 まあ、的の素材が岩とか土である崖なんで、火災の心配はなさそうだけど…。


 もうあまりの事に呆れ果て、この状況を純粋に楽しむしかないと開き直って眺めている事しか、俺には出来ないわけなんだが…。

 しかし、しかしだ! 俺には確認しておかねばならない事がある!

「無論、これは僕と柚夏との愛の結晶です!」

 ユズキがふざけた事を言いやがった。

「やかましーわ! そんじゃ、ユズノちゃんも、あんなふうにどっかんどっかんなるんかい!」

「ひっど~い! 柚乃は、恋した相手の心臓をハートの弓矢で射止めるだけよ~!」

 そこに柚夏も参戦!

「お前もやかましーわ!」

 何なんだこの夫婦は!?

「あの攻撃力の正体を聞いてんだよ! 形が似たようなのは、まぁ造ることも可能だろうけど、火薬も無しにどうやってあんな威力が出せるのかって聞いてんだ!」

 確かに色んな画像で色んな兵器の形状を目にする事はあった。

 だから、ガワだけ真似る事はそう難しく無いだろう。

 だが、しかーし! あの見るからに硬そうだった対岸が、見る見る間にいびつな形に…いや、はっきり言ってボッコボコになるほどの高威力の兵器など、この世界の技術力ではまず不可能ははずだ。

「だから愛の結晶なんですよ! あれは柚夏と2人で前に研究してた呪法具の改良の成果です!」

 ………あれが呪法具?

「ちょっと待て! 2人で前に研究してたって…造ったの、以前の事なのか!?」

 そんな物をいつの間に!?

「えっへん! コルネちゃんとユリアちゃんの専用車の武装アタッチメントを開発した時の物の改良版です!」

 ゆ、ユズカ…お前は…

「まだ、アレの開発続けてたのかよーーーー!」

「「当然です!」」

 くっ…この夫婦を腐海の底に沈めてやりたい…。 

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