第1223話 隠してる?
「だけど、真面目な話…あの威力って、どうなってんだ?」
派手に爆発を繰り返す対岸の崖を見つめながらユズキに話しかけた。
ずきゅーーーん!
「もちろん、呪法だけでは実現不可能でした。あれは、魔石を使った魔道具とのミックスです」
ずきゅーーーん!
「そうか、確かにそれなら可能かもしれん! 俺は呪法具は呪法だけで造る物だって思い込んでた!」
ずきゅずきゅずきゅずきゅーーーーーーーん!
「僕も初めはそう思ってました。組み合わせると、『ずきゅーーん!』結構色々な事が『ずきゅーーん!』できる可能性が…」
「やかましーーーー! ちょっとお前ら、撃つのを止めろ!」
「「ほっ?」」
俺とユズキの会話の間中、俺達の間に陣取ったミヤとヒナが、威力最小限に絞ったマスケット銃で対岸を撃ちまくっていた。
単発銃の為か、射撃までに少々時間が掛かるらしいが、とにかくすぐ横で撃ちまくるもんで、めっちゃうるさい。
ユズキとの会話の邪魔でしかない…ってか、こいつらまた勝手に出て来たよな?
「お前ら、ちょっと離れて撃ってこいよ。ユズキとの会話の邪魔だから」
「「やだ!」」
駄々っ子かよ…。
「だったら、せめてユズキと話してる時ぐらい、撃つのを止めろ!」
「「それもやだ!」」
反抗期か? 反抗期なんだろ?
「んじゃユズキ…あっちで話をしよう。こいつらはここが良いらしいから」
「「やだやだやだやだやだやだやだややーーーーーだーーーーーー!!」」
めんどくせー! こいつらマジで面倒臭せーーーーー!
「だったら、ちょっと静かにしてろ! こっちは大事な話をしてんだからな? 話の邪魔する様なら…」
「「奈良は鹿と大仏?」」
何でそんな事知ってんだよ? 見てみろ、ユズキがめっちゃ笑ってるじゃねーか!
「ボーディ達に言って、引き取ってもらう!」
「「がーーーーーーーーーーーーーーーーん!」」
そのポーズは、ムンクの叫びか? お前ら、ちょくちょく小ネタ鋏むよなぁ…俺の記憶の中から、変な知識引っ張って無いか?
最後忠告を2人に突き付けると、急に大人しくなった。
よっぽどボーディ達の元には帰りたくないみたいだ。
「それで、ユズキ。あれらの軍事技術は、民需産業に転用できるのか?」
ただの兵器としてだけのための技術なら、残念だがこれらは封印させてもらおう。
こんな技術がこのファンタジー世界に広まったりしたら、間違いなく戦争に使われる。
今の所実現してはいないけど、それでもスローライフを目指している俺としては、それは許容できない。
のんびり平和な世界が一番だ!
あ、俺が金儲けして大金持ちになる事は、スローライフの基本です!
そんな基本聞いた事無いって? 良いんだよ、俺がそう決めたんだよ!
「無論、可能です。あのミサイルを発射するための爆発に耐える発射管は、技術の粋を集めて造られた新しい合金です。そしてあの爆発力は鉱山開発などに利用できます!」
「あ、鉱山開発は駄目な。その技術って結局は誰かが兵器に戻して戦争に使う事になるだろう?」
「確かに、言われてみれば…」
「別に開発を止めろとは言わない。どんな技術も道具も、結局は使う奴次第だってのは分かってるし、これが俺のエゴでもあるって事は重々承知している。だけど、せめて俺の領地からは、そんな危険な技術を世界に出したくないんだ」
まあ、それでもどこかで誰かが開発するだろうけどね…火薬とか。
「なるほど! では、開発に関しては都度都度ご意見をお伺いします」
「ああ、そうしてくれ」
ユズキが素直で良かったよ。
「でも…確か侯爵様の話では、過去に王国を襲った敵が持てった武器も、どうにも銃とか手榴弾としか思えないんですけどねぇ」
「…言われてみれば、確かに…」
ユズキに言われるまで完全に忘れてた!
それがあったから、あの地の調査に父さん行ったんじゃん!
確か敵は全員姿を消したとか聞いたけど…あいつらの持ってた武器とかは、一体どうなったんだ?
もしかして…王国が隠してる? いや、研究してる?
待て待て待て、それならこれまでの戦争で使わなかったのは何故だ?
おかしい…何か思考の歯車が何個か壊れてるような、ピースが足りない様な…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます