第1215話 野営
俺の手紙を大事そうに抱えて、蜂5匹の1個分隊が夜空へと飛び立った。
いや、夜に跳んで行って、本当に彼女達に会えるかどうかは不明なんだけど…蜂達が今か今かと急かすんだよ。
きっと今回の先頭で活躍する場が無いであろう事を、何となく理解しているんだろう。
そんな蜂君達のお仕事を与えてあげねば…と、妙な使命感が溢れちゃったのだ。
いや、手紙の内容自体は、全然大したもんじゃないんだけどさ。
手紙を抱えた1匹を、4匹で全周警護して、もの凄い勢いで飛んで行った。
張り切るのは良いけど、迷子になったりすんなよ~。
さて、それでは本日の野営です。
敵であるワイバーンの巣は、ここから約1kmほど先の崖の中腹。
ここで焚火を焚いたとしても、その火は生い茂る木々に阻まれて、そうそうワイバーンの目に留まる事は無い。
煙や匂いが届く可能性が無くは無いが、それでも活動が極端に悪くなる夜間であれば、たとえ気付いたとしても確認に来る事も無いだろう。
ってのが、エルフさん達の野生の知恵。
なので、堂々とここで野営をしようと思う。
ちなみに、変身している我が家族とブレンダー、クイーン達にに野営だと言えども天幕も寝床も不要である。
俺達が着こんでいるこの変身スーツは、完全な温度調整機能が付いているし、そもそも全天候型なので雨が降ろうが雪が降ろうが、装着者にとって全く問題なし!
ブレンダーもクイーンも、普段は邸で日向ぼっこをしてはいるが、実はこいつらも全天候型。
野営で問題が有るとすれば、それは脳筋エルフさん達である。
とは言え、普段から狩猟を主な仕事にしている彼等の事。
食事も野営も実にワイルドだ。
布の四隅を樹々に縛り付けてその下で寝るという。
朝露だけ凌げれば大丈夫なんだとか。
食事も、超カッチカチになった干し肉と、保存性だけ追及した様な、これまたカッチカチのパンを、ワイルドに喰いついている。
硬い物を食べる事で、顎が鍛えられるとか…いや、食事ぐらい美味しく頂かない? え、味は二の次? そですか…。
我が家のメンバーは、取りあえずウルスラグナを2機背中合わせで座らせ、その翼を広げる事で屋根代わりに。
食事は簡単ではあるが、スープとパンを用意した。
えっと、パンは普通に柔らかいパンだからね?
食事が終わったら、おトイレタイム。
ちゃんと小型の天幕をユズカが準備してくれtれいたので、それを組み立てて女性陣は順にトイレに行った。
男は…大でない限り、その辺りで…。
流石にお風呂は我慢だ。
最近、温泉に凝っているエルフさんを始め、嫁ーずもユズユズも駄々を捏ねたが、たかが1泊2日のワイバーン討伐で、風呂まで持参は出来ない。
なので、帰りにホテル・ニュー大滝で汗を流してもらう事で納得してもらった。
って、変身してたら、ユズユズも嫁ーずも汗なんてかかないだろうが!
そう言うと、汗かいて無いからと言って汚れて無い分けでは無い! ともの凄く怒られました。
理不尽に感じちゃうのは、俺が何か間違っているからだろうか…。
さて、そんなこんなで、夜も更けてきた事だし、そろそろ明日に備えて就寝です。
まあ、俺達はちゃんとしたテントを用意してたんで、そこでお寝んね。
俺もユズユズもちゃんとしたアウトドアーの経験なんて無かったもんで、テントの再現にはなかなか苦労した。
いや、普通の三角形のを造るのなら、そう難しく無かった。
ドワーフ親方にお願いして、テントの骨組み? ってのを作ってもらい、魔族さん達に撥水性の良い布地を寸法通りに裁断・縫製してもらったらすぐに出来たんだ。
だけど、俺が目指していたのは、ワンタッチ? ポップアップ? どっちが正しい名称かは知らないけれど、とにかく収納袋から出して地面に放り出したら勝手に広がって立ち上がるテントだ。確か、片付けも簡単に出来るって、何かで見た事がある。
あれを再現したかったんだが…仕組みがわからんかった…無念…。
なので、本日は普通の三角テント。
いや、このテントでさえ、この世界では中々ハイテクノロジーなんだけどさ。
ま、男女で二つのテントに別れて、今夜はさっさと横になる。
何たって、本番は明日の早朝。
陽が昇る前には出発しなければならない。
まぁ。野営の片づけは放っといて前進するから、そんなに大変じゃないけれど、それでも寝起きドッキリ! ワイバーン戦! だからね。
今夜は大人しく寝よう。
おい、ユズキ…こっそり夜中に抜け出してユズカと森で逢引なんてすんなよ?
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