第1205話  あったら便利じゃん!

 翌日、トールに呼び出されたサラとリリアは、ダンジョンマスター達が新しいボディ作成のために更なる検査が必要と連絡があった事を告げられ、夕方にその迎えが来る事を告げられた。

 そして、連絡の通りダンジョンマスター達がネス湖の湖畔に建てられたトールの邸の裏庭にある門を開いて、サラとリリアを迎えにやって来た。

 前夜、色々と考え込み過ぎていた2人は、少々寝不足気味(サラの方が酷かった)ではあったが、そんな事をダンジョンマスター達が斟酌する様な事は全く無い。

 リリアはしっかりと自分の足で門を通って行ったが、サラは半ば連行されるかの様に、モフレンダに片手を掴まれて引きずられて門の向こうへと消えて行った。

 そんな2人を見送る為に、裏庭にトールヴァルド伯爵家一同が集まったわけでは無い。

 単にダンジョンマスター達を出迎えただけだ。

 実のところ、この一家にとって大事なのはダンジョンマスター達であり、サラとリリアの重要度は天と地ほどに差がある。

 当たり前だが、天がダンジョンマスター達であり、地がサラとリリアだ。

 まあ、敵対組織の一員で合った事を考えれば、それも当然なのかもしれない。

 トールは多少は思う所はあるようだが、それでもやはり重要度はダンジョンマスター達と比較など出来ないほど低い。

 この先、ダンジョンマスター達によって2人がどう変わるのか…いや、生まれ変わるのかは分からない。

 だが、完全に輪廻転生管理局の束縛から、精神的にも肉体的にも解き放たれるだろう。

 そうなれば、きっとトールヴァルド伯爵家の皆の彼女達を見る目も変わる事だろう。


 っと言う事で、サラとリリアさんに関するあれやこれやは、これまた丸ッとダンジョンマスター達に丸投げだ。

 え、お前はそればっかりだな…って? いや、それはそうでしょう! 

 専門的な事は専門家に任せるのが、一般的な対応だってば。

 どこぞのラノベとかアニメに出てくる勇者じゃ無いんだから、俺は何でもかんでも手を出したりはしないぞ。

 そんな事をして物語を盛り上げたって仕方ないだろう?

 所詮、そんなのはアニメやラノベの中の話だ。

 リアルにややこしい問題が起きたら、きちんと専門家に対処をお願いすべきなんだよ。

 下手に首を突っ込んだら、場が混乱するだけでなく、解決までの時間を無駄に引き延ばすだけだろう。

 トラブルが起きるたびに首突っ込む主人公って、はっきり言って馬鹿だろう?

 しかも、何でか知らんけど都合よくチートが目覚めるし! そんあ現実あり得ん!

 いや、だからこそジャンルがファンタジーなんだろうが! って、お叱りを受けるかもしれないけど、やりすぎはちょっとねぇ…。


 あ、そうそう! サラがあの通り管理局と通信が取れないって言ってる都合上、ガチャ玉が現在使用できない。

 どうもダンジョンマスター達の言葉によると、管理局など通さなくても創造は出来る可能性があるとの事だが、まだその方法は確立出来て無いらしい。

 あのガチャ玉って、俺とサラとリリアさん以外、一切触れないし見えないらしいんで、研究は全然進まないそうだ。

 もしもサラとリリアさんが新しいボディを貰っても、ガチャ玉を見たり触ったり出来たら…研究が進むのかな?

 まあ、それはどっちにしろ先の話だ。

 なので、今は既にこの世界に根付いた理を使って、新しい商品を開発しようかな。



 ダンジョンマスター達が帰るのを見届けた俺は、振り返って年中新婚ラブラブ夫婦(+娘のユズノちゃん)に声を掛けた。

「って事で、ユズキとユズカは、後で執務室に出頭する様に」

「あ、え、は…はい」「え~面倒~!」

 どっちの返事がどっちかは、想像にお任せします。

「良いから来るんだよ! 2人が考えた便利道具を、呪法で造る研究すんだから!」

「なるほど!」「おぉ! んじゃ、タイムふろ〇きも?」

 いやいやいやいや、何言ってんだよこいつは!

「ユズカはそんなもの使った事無いだろうが!」

「だって、あったら便利じゃん!」

 そりゃぁ、そうかもうかもしれないけど…、でもな?

「んなもん、どんだけエネルギー食うかわからんし、そもそも実現できんわ!」

「んじゃ、ひら〇マントとか立体コピ〇紙とかナイヘ〇ドアとか…」

「ひみつ道具ばっかじゃねーか! ってか全部無理だよ!」

 こいつ、ドラえ〇んのファンか?

「無理が通れば道理が引っ込む?」

 ユズカが何か言った。

「何言ってんだ、お前は?」

「えっと、ことわざ?」

 可愛く言ったって駄目だよ!

「この場には全然ふさわしくねーよ!」


 ってか、これって本当に諺? 故事? 俺の記憶的には、確か『江戸かるた』の読み札にこんなのがあった気がすんだけど…ま、どうでもいっか。

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