第1204話  無い知恵を振り絞って (呼び出し前夜)

 リリアの長い長い話は、その日の夜遅くまで行われた。

 はっきり言って、長すぎる! っと、サラは散々憤ったものの、そんなクレームはリリアの耳には届いていたのだろうが無視された。

 散々話をしたかと思うと、自分自身で納得したのか満足したのか、「では先に寝ます」と、さっさとベッドにもぎり込んでしまった。

 結局のところ、リリアの話は全て推論だけで構成されており、何の結論も言ってはいなかった。

 そんな状況で、独りベッドで悶々としていたサラは、どうせ眠れないのならと、何とか自分で理解出来る様に長い長いリリアの話の中の要点を纏めようとしていた。


 サラが無い知恵を振り絞ってリリアの話を纏めた内容とは?

 ・魂には決まった形が無い。

 ・この世界の始まりから現在に至るまで、魂自体が存在していない。

 ・魂だと思われていた物は、実は精神体とエネルギーの集合体である。

 ・解放魂魄統轄庁のダンジョンマスター達は、魂と呼ばれていた物を創り出せる。

 ・自分達が輪廻転生管理局で教えられてきた魂に関する事柄は、嘘八百だった。

 

「ん~っと、こんな感じかなぁ…?」

 明かりを消した部屋の、これまたベッドの上に大の字になったサラは、先程まで長々と独演会を繰り広げていた暴走気味のリリアの話の中から要点をかいつまんで並べてみた。

「ってことは…私達があっちに置いてる本体に入ってるのって、魂じゃないって事かな?」

 そう考えた時、ふと違和感に気付く。

 こんな簡単な事にリリアが気付かないわけが無いのに、何故リリアはそこに言及しなかったのか? っと。

 いや、管理局での教育が全て嘘八百なのであれば、リリアもそれは当然織り込み済みなのかもしれない。

 って事は、あれは今現在サラやリリアとして入っているこのボディに収まり切らないエネルギーなだけなのかも。

 …って事は…未だ顔かたちがはっきりしない管理局長って、もしかしたら完全なエネルギーと精神体の塊?

 そう考えると、色々としっくりくるものがある。

 輪廻転生システムで、転生を待っている無数の仄かに光る球体。

 あれが魂と教わってきたが、よくよく考えると局長は球体でこそないが、常に仄かに光っている。

 球体には顔も手足も無いが、もしもアレにもっともっとエネルギーが有ったら?

 輪廻転生する時には、記憶がリセットされるだけでなく、幾何かのエネルギーが消費される。

 消費されたエネルギーは、役職た立場などに応じて、サラ達にも極僅かではあるが分配される。

 当然、そこには局長も含まれる…。  

 もしも局長が超巨大なエネルギーと精神体の塊だと仮定してみると、あの転生を待つ球体達が、もっとエネルギーを保有するに至れば、局長の様に手足の様に見える形状になるんじゃないのか?

 そうだよ、エネルギーは精神体と切り離す事が出来るんだ!

 そうじゃ無かったら、輪廻転生システムがあの球体からエネルギーを奪ったり、自分達がエネルギーを貰ったり出来ないはずだ。

 もっと言えば、大河さんなんて、ガンガンエネルギーを魔素に与えて精霊にしちゃったり、ダンジョンにエネルギーを注ぎ込んだり、あのエネルギー変換玉で自分の持ってるエネルギーを物質に変換したりしてたじゃないか!

 エネルギーと精神体は、どっちも物に触ったり出来ないけれど、局長は触ってるのを見た事がある。

 って事は、精神体とエネルギーの集合体である局長も、何らかの方法で…いや、大河さんの持ってるエネルギー変換玉の様な方法で、手足を創り出したり出来るんじゃないのか?

 あれ? んじゃ、精神体とエネルギーしかなかった最初の頃に、どうやってシステムとか創り出したんだろうか?

 んんん? 解放魂魄統轄庁のダンジョンマスターって、どうやって産まれたんだ?

 もしかして、エネルギーと精神体には、まだ秘密があるのかな?

 ん~~~っと…リリアの話にはそこんとこ出てこなかった気がするなぁ。

 もしかしたら、この世界の始まりっていう存在自体に秘密があるのかな?

 そ、そうだ! 始まりの存在は多くの精神体が集まったのと莫大なエネルギーって管理局では聞いたけど、もしかしてそれが間違いだったとしたら、なんとなく話が繋がる気が……する……かもしれない?

 始まりの存在には、物質的な肉体…っぽい何かがあった?

 そうすると、解放魂魄統轄庁は、その肉体の一部を持った何者かが中枢に居て、創り? 造り? 出した…のかな?


 ん~よく分かんないなぁ…これはリリアとダンジョンマスターに聞いてみよう…。

 いつか…きっと…今度…ふぁぁ…おやすみぃ~ご…。

 って、これって大河さんが良く言う…やつ…じゃ……。

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