第1203話 ぶっちゃけ長い! (呼び出し前夜)
「つまり、ダンジョンマスター達が、魂を生み出した…と、私は考えているのです」
リリアの考えでは、魂と呼ばれるものを創造しているのはダンジョンマスターなのではないかという事。
「お、おぅ?」
「魂って、そもそも一体なんだと思いますか? 魂には決まった形が有るのでしょうか?」
リリアの思考は、すでにサラの理解の追いつかない遥か地平線の向こうへと飛んで行っていた。
「私が思うに、魂という存在その物には、決まった形状は無いと思います。輪廻転生システムの前に並んだ魂の列…私も何度も目にしましたが、実はあれこそが局長のマインドコントロールなのではないかと思うのですよ」
どこか遠い目をしたリリアがそう言った。
「アレって…アレ?」
少々混乱気味のサラには、もう話に付いて行く事はかなわなかった。
「ええ、あれです。光る球の様な形状…あれこそが魂だと信じ込まされていましたが、実はそうでは無かったのです」
急に鼻息荒くそう断言するリリア。
「え~っと…ちょっと何言ってるのか分かんないんですけど…」
「そもそも、輪廻転生システムという物の機能をもう一度良く考えてみれば、簡単に行きつく答えだったのですよ」
「………」
もう、サラには走り出したリリアを止める事など出来ようはずもく、ただ無言で話の聞き役に徹する事にした様だ。
「いいですか? 魂がシステムを通る時、前世での記憶を消去されるのです。無論、転生には魂のエネルギーが幾何か消費されますが、それはこの際おいておきましょう」
「…おいとくんだ…」
「という事は…です。あの魂と精神体は、一体化していたはずです。光る球が『魂のエネルギーだけ』だと、何故私達は思い込んでいたのでしょうか。あれこそ、精神体と一体化した姿だったのです! そう考えると、魂という物の存在にも疑問が残ります。魂のどこにエネルギーが蓄えられているのでしょうか? おかしいですよね? あのエネルギーの集合体にしか見えない塊に、精神体と魂とエネルギーが一体化していた? では、どうやってダンジョンマスター達は魂を生み出したのでしょうか?」
もう、誰もリリアの独演会を止められない…かに見えたが、勇者がここに居た。
「え~っと、取りあえずここまでリリアの話を聞いたっすけど…結局、どういう事?」
自分の推論を熱く語っているリリアには、非常に失礼なのだが、サラが結論を早く話せと急かす。
「貴女は、私の話を聞く気があるんですか!?」
「あ~うん、あるにはあるんだけど…ぶっちゃけ長い!」
ここにトール達が居ても、きっとそう思った事だろう。
「はぁ…仕方ありませんね。簡単に言いますと、魂なんて物はそもそも無かったんですよ」
「ふぇ!?」
「私達が魂だと思っていたのは、単なる精神体なんです。精神体自体がエネルギーを持っていて、それが肉体から離れた時に、霧散しないように球形になっていただけです。そう考えると、色々と辻褄が合います」
リリアの語る結論とは、サラの予想の斜め上の結論だった。
「そもそもこの世界の始まりは、巨大なエネルギーを持つ精神体です。それが無数に分裂したため、この世界が生まれたのです。所謂、ビッグバンですね。ですが、飛び散らなかった精神体も居た…それが解放魂魄統轄庁です。魂という名称は、きっと解放魂魄統轄庁が造り出した言葉なのでしょう。その精神体達は、この世界に自らと同じ精神体を生み出そうとした。しかし、彼等と違い、エネルギーを与えた人造の精神体だけでは存在できなかった。だから、彼等は精神体とエネルギーを定着させるための肉体を造った。それがダンジョンマスター達なのですよ! オリジナルなんちゃらと言ってましたが、最初にこの世界に生み出されたダンジョンマスターの内の1人が、正しくボーディなのです!」
「いや、結局長いじゃん…」
またまたリリアの独演会が走りだしてしまった。
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