第1200話 暗い顔
モフリーナとの話は、実に簡潔にして明瞭なものであった。
曰く、サラとリリアさん用の新ボディー作成の為に、いくらか生体部分のサンプル細胞が欲しいという事と、彼女達の体内にある電池と頭脳の精密な検査を再度行いたいというもの。
前回の検査で、彼女達の細かな部分まで調べはしたが、最終的に新ボディへ移る時に拒絶反応を起こさない様に、念には念を入れたいらしい。
俺は詳しい事は分からないのだが、彼女達の魂はちょっと普通の生命体とは違った形をしているという。
普通の生命体の場合、魂と精神体は脳にあるそうだ。
ところが彼女たちの場合、それらは機械の中に入っている…いや、閉じ込められているという。
なので、正確な形状が分からないらしい。
魂とか精神体に、形ってあるのか?
もしも、どうしても形状を特定できない場合は、新たに魂となる物を造り出す必要があって、それと精神体を適合させなきゃならないとか。
魂って、新たに造り出せるものなのか?って疑問に思ってると、どうやら可能なんだと。
ただ普通の生命体と違って、どちらかというと魔物に近い魂の形になるそうだ。
魔物の魂に近いって聞くと、ちょっと不安に感じたんだが、要は込める精神体の形状によって、魂ってのはいくらでも形を変えるんだとか。
ダンジョンのモンスターとかもふりんとかカジマギー、ミヤとかヒナ、ユリアちゃんなんかの魂も、こうして作り上げたとかなんとかかんとかうんたらかんたら…俺の頭では理解し切れん…。
まあ、面倒な事は全部丸投げ、人生お気楽極楽がモットーな俺なので、この件は全部ダンジョンマスター達に丸っと丸投げしてしまおう!
執務室にサラとリリアさんを呼び出し、モフリーナとの話を伝えた。
2人はまだ微妙に表情が暗いのだが、きっと局長に捨てられた事を引きずっているのだろう。
いや、2人が話してくれないから、本当のところは知らんけど。
モフリーナは、今日の夕方ごろに迎えに来ると言っていた。
検査や細かな調整で数日は掛るとの事なので、お泊りの用意を忘れずにする様に伝えた。
もちろんだけど、新しいボディが手に入るまで、邸でのメイド業は一旦お休みとも申し伝えておいた。
仕事をしなくていいなんて言ったら、普段なら間違いなく小躍りして喜ぶサラだが、暗い顔をしたまま「はい」と小さく返事をしただけ…これはかなりの重傷かも知れんな。
とは言え、俺にはどうしてやることも出来ない。
リリアさんの場合、ある程度は吹っ切れているのだろう。
彼女は頭が良いから、感情はある程度コントロールしているんだと思う。
まあ、だけど長年信じてきた自分の所属している輪廻転生管理局のトップが騙してたとか裏切ってたとか聞かされたら、心の中では色んな感情が渦巻いているんだろう。
いくら理性で感情を抑えつけようとも、どうしても内から溢れ出る負のオーラを抑えきることは出来てないようだ。
同じ立場に立たされたら、俺なら爆発しそうになる感情を抑え込む自信なんて皆無だし。
実は、彼女達を最初にダンジョンマスター達に任せて送り出した時、随時モフリーナから色々な報告を受けていた。
その報告の中には、こういう状況になるかもしれないとは聞いていたんだ。
彼女達の中に埋まっている、管理局製の頭脳やら電池やらに、彼女達が知らない機能があるかも知れない。
2人が管理局にとって敵に回った時、例えばそれが爆発するとか、強制的に命令に従わせるとか、そういった機能が無いとも限らないと。
これは彼女達にはもちろん秘密なんだけど、新ボディに入る事が出来たら、こんな暗い顔をしなくても済むかもしれない。
管理局と、肉体的にも精神的にも魂的にも、本当の本当に決別する事が出来た時、きっと明るく笑う事が出来るんじゃないいか…っと、俺もダンジョンマスター達も考えている。
きっと、その日はそう遠くないだろう。
だって、もう2人はダンジョンマスターを信じ、あの薬を飲んだのだから。
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