第1199話 もしも~し
山々の稜線から、ようやくお日様が顔を出そうかという夜明け近く。
やっと嫁ーず3人をノックダウンさせることに成功した(性交とか言うな!)。
どうやら嫁ーず会議で、メリルがこの案を唱えたらしい。
つまりは、俺が覚醒するのは最優先だが、そのための犠牲が大きい。
この犠牲は、つまりは嫁―ずの欲求らしいが…。
なので、妥協案として週に五日は我慢しろと。
そして俺には、週に二日は頑張れと。
この案は、嫁ーず会議において満場一致で決定したそうだ。
そこに俺の意見など欠片も入る余地は無いと、これまた満場一致で……ちくそー!
要は、週に二日は覚醒の為の朝の鍛錬を止める、もしくは鍛錬してもいいが覚醒は二の次にする。
休みの前夜は、しっかりと妻たちに奉仕する。
んで、昨夜がその休日前の夜になっていたそうだ。
急遽嫁ーずによって決められたこの休日って、何が基準だったんだろう?
いや、制度を決めたら、即実行したかっただけって気もするけど…そこは触れたら駄目なんだろうな。
とは言え、毎朝の鍛錬は習慣だ。
出先などでは無理だが、我が家に居るのにやらないわけにはいかない。
またもや寝不足の目をこしこしと擦りながら、着替えて裏庭へ。
はい、皆様の予想通り、集中なんて到底できるわけも無く、覚醒なんて出来ませんでした。
でも、毎日のルーティングワークを崩すことなく行うってことも大事だと思うんです。
こういった習慣を崩すことから、生活が乱れるんだと思うんです。
なので、これはこれでアリ…かなぁ…。
鍛錬をすることが目的になってきてる気がしないでもないけど…。
まあ、変わり映えしない朝食を頂いた後、これまた毎度毎度どっからこんだけ出てくるんだってぐらい山積みになっている書類を執務室でせっせと熟していると、不意に扉をノックする音が。
「はいはい、どうぞ入って~」
かる~く返事をしているが、基本的にこの屋敷で執務室の扉をノックするのなんて、嫁ーずとユズキとドワーフメイド衆とサラとリリアさんぐらい。
誰にも伯爵としての威厳なんて通用しないし、そもそも普段の言葉使いすら砕けてるのに、今更丁寧なしゃべり方も気持ち悪いよね。
俺の返事とともに、そっと扉を開けて入ってきたのは、ドワーフメイドさん…の1人。
いまだに名前すら教えてくれないメイドさんだ。
でも、そもそも見分けが付かないから、名前教えてもらっても呼び分けられないんだけどさ。
俺の記憶力が悪いのか、人を認識する能力が低いのか…。
「どうしたの?」
「通信が入ってますだ」
あっさりと俺に向かって伝えると、さっさと退出してしまった。
えっと、どっかのセクハラおやじとかと違って、俺と話したからって妊娠とかしないよ?
いや、話したぐらいじゃ妊娠なんてしないけどさ…。
前世で1回だけ言われたことあるけどさ…。
その時、めっちゃ落ち込んだけどさ…。
いや、そんな事はどうでもいいから、今はとりあえず通信に出なきゃね。
さて、いったい誰だろうか?
俺はぽてぽてと廊下をある木、食堂近くの通信室へと向かった。
廊下に面した壁、2畳ほどの小部屋がある。
小さめの扉を開くと、ずらりと並ぶ通信の呪法具。
この通信の呪法具、離れた人と連絡が取れるのはいいのだが、対応する呪法具としか連絡が取れないという、ちょっと不便な面がある。
前世の地球での電話とかと違い、多くの人や場所と連絡を取ろうと思ったら、それだけ沢山の呪法具が必要になってしまうのだ。
しかも、この呪法具ってのは、そこそこ嵩張る。
昔の映画などで出てくることもあるのだが、デザインの元はロウソク型電話機。
机の上に置いたマイクの様な形の送話器と、片耳にあてる受話器がセットになってるタイプ。
はっきり言って、持ち運ぶのに不便な事この上ない。
なので、実は個人的に小型化した超高級品である通信の呪法具も持ってはいるのだが…それでも対の物としか連絡が取れないので、どうしても連絡先の数だけ呪法具は増えてしまう…改良の余地ありだな、うん。
今後は、地球で使われていた様な携帯電話を目指そう!
機種代金と通信料で、ウハウハな未来が!
でも、電話交換機の仕組みを知らんから、造れる気がしないけどさ…。
さて、俺は壁一面に並ぶその呪法具のうちの1つを手に取った。
これは、ダンジョンマスター…というか、モフリーナに一方を渡した呪法具だな。
局長側に、何か動きでもあったんだろうか? そんな事を考えながら、俺は受話器を耳に押し当てた。
そして、送話器に向かって、日本人であれば誰もが使ってしまうあの言葉で呼びかけた。
「もしも~し」
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