第1175話  ダークゾーン

 俺の大切な大切な宝箱は、結局返してもらえませんでした。

 ミヤとヒナが、その中身を熟読して満足した時に、返却してもらえるそうです…何でやねん。

 まあ、返却に関して条件は付けさせてもらったけどさ。

 え、どんな条件なんだよって?

 それは勿論、返却時は誰の目にも留まらない場所で、俺に直接手渡しで…に、決まってるだろ?

 愛する妹達や嫁ーず、妖精達の前で渡されたら…社会的…じゃない、家庭内での立場が…そのぉ…な?

 この条件はあっさりと2人の同意を得られはしたのだが、返却時期に関しては未定だ。

 寿命で死ぬ間際とかに返されても困るなぁ。


 さて、何か2人は遊んで満足したのか、「「今日は寝る」」とか言って、待機次元へと勝手に戻って行った。

 もう、どこから突っ込めば良いのやら…。

 飲食も睡眠も不要のLガールだったはずなのになぁ、あいつ等。

 まあ、これで漸く俺の寝室も静かになったってもんだ。

 さ、もうかなり夜も更けてきた事だし、俺の瞼も重くなってきた。

 独りでゆっくりと眠れるようになったと思ったら、ノワールにミヤにヒナっていう睡眠を邪魔する奴のせいで、また睡眠時間が!

 もうここからは何も考えずに目を閉じよう!


 って思ったけど…よくよく考えたら、ミヤもヒナもベッドの下から出てきたよな?

 ノワールもベッドの下に居たはずだぞ? 何故か埃まみれだったけど…。

 あれ? もしかしてベッドの下で実は顔合わせしてたんじゃね?

 なのに、ノワールもミヤもヒナも、それに関して何一つ言って無かったな。

 何で? 口裏合わせ? 同じダンジョン関係の出身だから?

 まさか、揃って俺に嘘を吐いてたとか…かな?

 さっきミヤとヒナは何て言ってた? ベッドの下はダンジョンって言ってたよな?

 え、本当に俺のベッドの下はダンジョンになっちゃったの?

 ちょっと待てよ、ノワールは普通にベッドの下に潜っていて、ミヤとヒナはベッドの下のダンジョンに居たってのか?

 モフリーナかボーディあたりが、もしかしてダンジョン化したってのか!?

 そして、俺の宝物は、ダンジョンの宝箱!?

 待て待て待て! もしもベッドの下が、ダンジョンと繋がってるとしたら…?


 俺は、ゴクリッと唾を飲み込むと、恐る恐るベッドの下を覗き込んだ。

 窓から差し込む淡い星明りでは、超巨大ベッドの奥深くまで見通す事は出来ない。

 見えるのは、ほんの少しの部分だけ。

 奥の奥は漆黒の闇に閉ざされている。

 闇の中に何かが潜んでいるような、何かに見られている様な奇妙な感覚が俺を襲う。

 室温は高く無いはずなのに、俺の額だけでなく、背中までも汗がじっとりと滲んで来た。

 ベッドの足元から覗き込む俺が見えない場所…それは当たり前だけど、寝た時に俺の頭…枕のある場所って事だ。

 あのダークゾーンが、寝た時の俺の下になる…。

 何か、ヤバくね?

 ベッドの下がダンジョン化されてて、もしもあの漆黒の闇の中から、寝てる時にモンスターが氾濫したら? 

 いや、それはもう絶対に無いとモフリーナは言ってたけど…何時もぼへ~っとしてるモフレンダのダンジョンだったら?

 俺が戯れで設計したイノセント(インセクトじゃないよ?)型モンスターが潜んでいたら?

 蚊とか蝿とか蛾とか蜘蛛とか蟻とか…そんな形態のモンスターなら、幾らでも隠れれるぞ。

 そいつらが、一斉に襲い掛かってきたら…

 いや、考えちゃ駄目だ考えちゃ駄目だ考えちゃ駄目だ!

 今は、覚醒の為に、しっかりと睡眠をとるんだ!

 さ、さあ…布団をかぶって、さっさと寝てしまおう!

 いや、でも、もしも……………。


 結局、一睡もできませんでした。

 

 翌朝、食堂に現れた見るからに寝不足全開の俺を見た誰もが、びっくりしていた。

 そして、誰もがこう思ったそうだ。

 『やっぱり女と一緒じゃ無いと眠れない男なんだ!』っと。

 その誤解を解くために、俺が寝不足の頭をフル回転させて言い訳をしたのは、言うまでもない事だろう。

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