第1174話  十分に理解できた

 あの後、少しばかりミヤとヒナと話をしたが、どうやらこいつ等は自分達にとって都合の悪い部分を、自分たちで改良出来るように進化したらしい。

 らしいってのは、つまりは俺にも良く分からんのだ。

 きっと、こいつ等を改良したボーディやモフリーナ、モフレンダにも予測出来なかった事だろう。

 しかし、何だろう…確かダンジョンマスター達が、俺の戦力強化の為にこいつ等を造ったはずなんだが…微妙に精神的にダメージが蓄積されている気がする。

 確かに自立行動出来るって事は、色々な場面で有用ではあるのだろう。

 けれど、現状では俺の命令を軽く拒否ってるんだよね。

 おとなしく待機次元でじっとしてると思ったのに、ベッド下の探索とか…どうなん、これって?


「「考えが、あまーーーーーーーー!」」

 何だ何だ? いきなり叫びやがって!

 もしかして、俺の考えを呼んだのか?

「もしも成層圏から落下中に待機次元にどちらかが送られたら?」

 真剣な顔で(感情表現、元から薄いけど)ミヤが俺に問いかけた。

「え、ミヤからヒナに交代だろ?」

「次にミヤが待機次元から呼び出されたら?」

 今度はヒナか…えっと、

「俺の横に現れるんじゃね?」

「「やっぱ、あまーーーーーーい!」」

 ふぇっ!?

「では代表して、ミヤが説明しましょう」「うんうん」

 何、こいつ等…。

「この次元から待機次元に送られる時、私たちに掛かっている運動エネルギーはそのまま維持されます」

 はぁ…それで?

「高高度から落下中に待機次元に送られたら、次にこの次元に現出した時には、落下の最中のエネルギーをそのまま維持して現出するのです」

 まあ、そうなるわな。

「もしもマスターが地面で私を呼び出したら?」

「あっ!?」

 わかっちゃった!

「いきなり高い運動エネルギーを維持したまま地面に呼び出されたら、いきなり地面と激突してぺっちゃんこになります」

 その理屈だと、確かにそうなるな…。

 そういえば、それがあるから、待機次元に送るときはなるべく動かないようにさせてたんだった。

「斯様に、私がヒナに交代する時が、常に安全とは限りません」

 そ、そうだね…ごめん…。

「戦闘中など、どんなタイミングで召喚され送還されるかなど、予測出来ないのです」

 …おっしゃる通りで…。

「なので、私たちは待機次元へと送還される時に、その時に保有している運動エネルギーをキャンセル出来る様に進化したのです!」

「おぉ!」

 確かに、それはとても重要な事だ!

「では、ここからはヒナが説明しましょう」

「はい、宜しくお願いします」

 ここは大人しく説明を聞いておいた方がいいな。

「なぜ自ら待機次元から出れるようにしたのか」

 ふむふむ。

「敵がマスターを襲うのに、場所も時間も選びません」

 まあ、そりゃそうだわな。

「もしかしたら、私達を召喚する時間すらないかもしれません」

 言われてみれば…。

「なので、常時マスターの周囲を監視しております。そして、脅威度が一定以上に上がった時には、マスターの意思に関わらず、マスターをお守りするために私たちは自ら現出できるようにしたのです」

「な、なるほど…」

 言われてみれば納得かもしれない。

 俺だって慌てたりすれば、召喚を忘れてしまうかもしれないもんな。

「「なので、自らバージョンアップをしたのです!」」

 確かに、色々な場面を想定すると、ボーディ達による2人の改良には問題点もあったのかもしれない。

「なるほどね。君たちの考えは十分に理解できた」

「「むっふー!」」

 めちゃどや顔で自慢げだね、君達。でもね…、

「んで、危険でも何でも無いのに、何で2人ともこの次元に居るんだ?」

「「ぎくっ!」」

 さっき、脅威度が一定以上に上がった時に、自らこの世界に現れるって言ってたよな?

「んで、何でベッドの下を漁って、嫁ーずの下着とか俺の宝物とか持ってったんだ?」

「「ふひぃ~ふひぃ~♪」」

 口笛吹けてないぞ?

「何でドワーフメイド衆とかと仲良くなってたり、下着をもらってたりしたんだ?」

「「だらだらだらだら…」」

 顔面汗だらけになってるけど…そんなオノマトペを自分の口で言うやつも珍しい。

「まあ、それは大目に見たとして…」

「「ほっ…」」

 何を安心した顔してんだ? 本題はこれからだぞ!

「俺の宝箱を中身ごと返せーーーーーーーーーーーーーーーー!」

「「やだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」」 

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