第1163話 100%無理だね
幼い頃に、前世で憧れた仮面のバイクに乗る人をイメージして(銀ピカの宇宙刑事も混ざったけど)創造した、最高の防御力を誇る、この変身スーツ(鎧)。
叩かれようと蹴られようと、たとえ剣で斬りつけられようとも、装着している俺の肉体へのダメージはほとんどない。
そんな最強の変身スーツを着ていても、正座してたら足って痺れるもんなんだなぁ…。
女性陣による、寄って集って行われた説教中、そんな事をぼんやり考えていると、
「鎧でトールさまの表情が見えませんね?」「反省…してない?」「説教のダメージも通さない鎧なんだろうなぁ」
マチルダ、ミレーラ、イネスがこんな事を言い出した。
「マスターは、全然お説教と葉別の事を考えています」「「「反省の色なし!」」」
続いて妖精達が俺の思考を読み取って、言わなくてもいい事を言いやがった。
その言葉に、無言で頷いた寝室に集まった女性陣が、口を揃えてこんな事を俺に向かって言った。
『変身を解除してください!』
かくして俺は、素の寝間着に戻って、床に正座してお説教を受けたのでした。
鍵をかけて何をしていたのかは、必死に誤魔化しました。
皆は俺の話に納得はしてない様だったけど、まあ最後には許してくれた。
だけど、ヒナとミヤとの事だけは必至で否定しました。
これだけは譲れんからな。
だって、俺はペドじゃねーし!
明けて翌朝。
実は、昨夜の長い長いお説教の後、エッチはしないという約束の元、何故か全員で一緒に寝る事になってしまった。
何もしないから一緒に寝よう…って、普通は男の方が言わんか?
隅っこで1人で寝ようとしたんだが、何故か超巨大ベッドのど真ん中に寝かされ、両横を女性陣にガッチリとホールドされたまま、寝返りもうてない態勢で朝まで…眠れるわきゃねーだろーが!
日の出と共に目覚めた俺は、睡眠不足で重い頭と気だるい体を引きずって、日課である鍛錬の為に裏庭へと向かった。
ちなみに、俺と一緒に目覚めたのはナディア、アーデ、アーム、アーフェンの妖精達だけ。
嫁ーずは、ぐーすかぴーと、とっても良い顔で夢の中。
まあ、妖精達って、基本的に食事も睡眠も不要だからね。多分ベッドで静かに横になっていただけなんだろう。
裏庭には、妙に晴れ晴れとした顔の父さんが先に居て、剣を振っていた。
「おう、トールも朝の鍛錬か?」
にこりと笑う父さんの白い歯が、キラリと朝日で輝く。
貴方は、どこぞの犬が怖くて未亡人に懸想しているテニスのコーチですか?
「う、うん…まあ…ちょっとだるいけどね。1日さぼったら、取り戻すのに3日かかるとか言うしさ…」
集中力が途切れた状態では、形だけの鍛錬をした所であまり意味は無いだろうけど…とは言わない。
今はよほど天候とか体調が悪いとか無い限りは、この場所で鍛錬したいと思う。
何時もの立ち位置は、俺の摺り足のせいで雑草1つ生えていない。
剥き出しの地面が、毎日の鍛錬が行われている事を示していた。
まあ、獣道も似た様な物らしいけど。
そういえば、秋田の釣りが得意な麦わら帽子が、水の中でも鯉の通り道には苔とか生えて無くて綺麗だとか言ってたなあ。
あ、こんな馬鹿な事を考えるって事は、やっぱ集中できてないって事だよな?
まあ、とにかく体だけは動かすとしよう。
今日の覚醒は、100%無理だね…うん、間違いない。
そんなこんなで、とっても良い笑顔の父さんと並んで、とにかく体を動かしたのであった。
ちなみに父さん…もうこれ以上年の離れた弟妹は勘弁してね?
鍛錬が終わったら、朝食のお時間。
今日の朝食は、甘い玉子焼きとアジの干物、沢庵と味噌汁に白いご飯。
ドワーフさん、もう完璧な和の朝食ですな…めっちゃ美味しいです。
流石にアルテアン家フルメンバーだととっても賑やかな朝食の場となったが、貴族家の食事がこんなでいいのだろうか?
まあ、元は平民からの成り上がりの家だから、これぐらいゆる~い方が気が楽かな。
ちなみに、俺の嫁さんには元王女もいるけど、こんなゆる~い食事の場に慣れてるみたいだし、まぁいっか。
長い食卓の端っこで、もそもそと食事をしているサラへと視線をちらりとやると、妙にしおらしい。
こりゃ、本気でダンジョンマスター達に相談してやらなきゃ駄目かな。
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