第1164話 通信内容
「ふむふむ…なるほどのぉ。あい分かった。妾達に全て任せるが良い。こちらで意見がまとまり次第、また連絡をするでの」
トールからの通信を受けたボーディは、次の連絡を約して通話を切った。
そして、暫し目を閉じて天井へと顔を向けて考える。
モフリーナは、そんなボーディへと声を掛けた。
「それで、トールヴァルド様のお話とは?」
結構な時間話していたボーディとトールの話が、単なる世間話では無い事は、側で聞いていたモフリーナにも分かっている。
いや、どちらかというと結構重めな話題であったであろう事も、憶測程度ではあるが掴んでいた。
「うむ…」
ゆっくりと閉じていた目を開け、声のした方…つまりは、モフリーナへと顔を向けたボーディは、何かを躊躇っていた。
モフリーナは、ボーディが語り始めるのを、黙ってじっと待っていた。
その様子を見つめていたボーディは、意を決してその口を開いた。
「実は…あ奴からの通信は相談事じゃ」
「相談?」
「ああ。それもかなり重要な…な」
そして語られたトールとの通信内容。
それはトールとボーディの通信内容をある程度は予想していたモフリーナにとっても意外な内容であった。
管理局からこの星へと派遣されてきているサラとリリアが、どうやら管理局と一切連絡が取れない状況に陥っている事。
リリアの考えでは、管理局に捨てられた可能性が高いという事。
現在、2人が使用しているボディは、短ければ10年程度、長くとも数10年での使用限界が来る事。
管理局にある2人の本体は、すでにこの地の2人にエネルギーを送るためだけの存在となっており、活動していない事。
ボディの使用限界が来た時は精神体が消滅し、同時に本体はただの抜け殻となってしまい、朽ち果てるであろう事。
ダンジョンマスター達に、やがて来るボディの寿命までに、代わりのボディを用意して欲しい事。
そして、これらに付随する細かい事柄などが、トールとの通信内容であった。
「なるほど、ボーディ様が考え込むのも分かる気がします」
「で、あろう?」
ボーディの話を聞いたモフリーナは、何を苦悩しているのかがはっきりし、納得顔になった。
「それで、どういたしますか?」
とは言え、ただ納得しただけでは話が進まない。
「条件付きではあるが、あの2人に協力してやっても良いと、妾は考えておる」
モフリーナにトールとの通信内容を話す事で、結構冷静にその内容を噛み砕き理解する事が出来たボーディの意見は、サラとリリアに協力するという。
そのボーディの言葉に、少々驚くモフリーナ。
「協力するのですか、管理局の走狗に?」
「ああ」
だが、ボーディの答えは変わらなかった。
「このまま寿命が尽きてくれた方が、色々と手間が省けると思うのですが…」
そんなボーディの言葉に疑問を呈するモフリーナ。
「うむ、それはその通りなのじゃが、先にも述べた様に、妾は条件付きで協力してやっても良いと考えておる」
「そういえば、条件付きと仰ってましたね」
条件によっては手を貸すと、確かにボーディはそう言っていた。
「うむ」
ボーディの考えた条件を確認してから、もう一度この問題は議論すべき。
そう考えたモフリーナが、条件の内容を問うた。
「それで、その条件とは?」
それを聞いたボーディは、ニヤリと笑うと、
「あの2人には、管理局を完全に抜けてもらう」
「抜ける?」
意外という程では無いかも知れない。
だが、管理局べったり依存の2人に、管理局から完全に抜けるという事は、かなりの大問題となるはずだ。
すでに管理局と隔絶されたとはいえ、未だに彼女達の本体は管理翼の何処かで眠っているはず。
なので、その管理局から抜けるという事は、もう輪廻転生の輪には戻れなくなるという事に等しい。
これは、本体に魂が、この星に精神体が分離しているために起きてしまう現象なので、近い将来どちらにせよ解脱以外の方法で輪廻の輪から外れてしまう事を意味する。
つまり、未来永劫、彼女達の魂は如何なる物や者にも生まれ変わる事が出来ないという事に他ならない。
「安心せい。妾に1つ良いアイディアがあるのじゃ」
先程よりも悪い顔で、ニヤリと笑うボーディであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます