第1108話  俺にだけ秘密

「それで、これが新しく家族になったヒナだ」

 全員が挨拶をし終わったタイミングで、俺はヒナとミヤを召喚して紹介した。

 ヒナだけ呼び出したりしたら、きっと後でミヤが拗ねるだろうと思っての事だ。

「ヒナ…ちゃん? ミヤちゃんとそっくりね」

 ミヤとヒナが瓜二つな事に、少しだけかあさんは驚いた様だが、それ以外に特に驚く事は無かった。

 俺的には、もっと驚いて欲しかったんだけど…いや、深い意味は無いんだけど、何となくね。


「ヒナです。この度、ご主人様の愛の奴隷となりました」

「うぉーーーーい! 何を言っちゃってくれてんのかな、君は!?」

 ヒナの挨拶は、かなり斜め上の方にぶっ飛んでたんで、俺が叫んだのも当然の事だよね?

「トールちゃん…あなた…」「お兄さま…不潔…」「おにいちゃん、あいのどれいってなに?」

 見ろ! 母さんもコルネちゃんもユリアちゃんまで、ヒナのおかしな言動を信じちゃってるじゃないか!

「ぷぷぷ! 伯爵様ったら、お盛んねぇ~!」「伯爵様、児ポ法に完全にひっかかりますよ?」

 ユズカもユズキも何言ってんだよ!

「ヒナの冗談に決まってんだろうーが!」

「私もこの度、ご主人様にご奉仕する為の調整を受けてきました」

「ミヤも何言っちゃってんの!?」 

 思わずヒナとミヤを睨み付けた俺だが、2人はさっと顔を背けた。

 こいつら、完全に俺を弄ってあそんでるな?

「ふぅ…。トールちゃんが幼女好きってのは知ったけど、まさかここまで幼い女の子に劣情を催すなんて…。しかも、その為にダンジョンマスターさん達の力借りてまで…。お母さん、もう世間様に顔向けできないわ…」

 よよよ…と、どこから取り出したのか分からないけれども、ハンカチで目を抑えて震える母さん…どう見ても小芝居だな。

「大奥様…そのお気持ち私も良く分かります。こうなっては仕方ありません。伯爵様をこの場で亡き者に…」

 ユズカは、母さんの小芝居に乗るな!

「いいえ、お義母様、それは違います。トールさまは、幼女から成人女性までいける、オールラウンダーです!」

 メリルも何を言い出すんだよ!

「確かに、私やイネスも性的な対象に入ってますね…」

 マチルダ、要らん事を言うな!

「「「でしたら、私達にも十分可能性が…」」」

 見ろ、アーデ、アーム、アーフェンが、めっちゃ喜んでるじゃねーか!

「と、トールさまが望むなら…私は成長を止めても…」

 いや、ちょっと待とうか、ミレーラさん! 成長って自分の意思で止められるの?

 って、んな事はこの際おいといて、俺は断固主張せねばならない!

「俺はロリコンでもシスコンでもねーわ!」

『いや、シスコンでしょ?』

『んぎゃーんぎゃーんぎゃー!』

 何で全員で口を揃えて、んな事言うかなぁ…。

 ほら、皆が力強くおかしなことを言うから、エド君とユズノちゃんが泣いちゃったじゃないか。

『誰かが叫んだからでは?』

 原因は俺ですか? そうですか…。


 家に帰ってすぐにゴタゴタしまくったけど、俺の努力の甲斐あってか、漸く応接室の空気も落ち着いて来た。

 実は、母さんもコルネちゃんもユリアちゃんも、ついでにユズカちょユズキも、ヒナとミヤの事は知っていたそうだ。

 ちゃんとモフリーナが通信を入れてくれてたんだって。

 もしかして、普段からこの次元に2人を召喚しておくんだったら、部屋の準備も必要かも…なんて気を回してくれてたらしいけど、だったら帰り際にそれは教えて欲しかった。

 しかも、嫁ーずも妖精達も、ダンジョンマスター達が母さんに2人の事を知らせてたって知ってたとか。

 俺にだけ秘密って…悪意しか見えない…。

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