第1106話  準備OK!

 多少、面倒くさい出来事はあったものの、このパンゲア大陸での目的は果たせたと思う。

 ミヤが抱えていた問題点の改善と、嫁ーず達によるLシリーズの実戦での慣熟訓練。

 おまけでヒナも付いて来る事になったし、対母さん用の教育をミヤとヒナに施す事になったのは余計だった。

 あと、俺が覚醒しそうだとかいうのも自覚できた。

 覚醒しても死ぬまでは、普通に生活出来るってのには、俺以外の女性陣が喜んでいたけど…。

 それと、死んだ後の俺は、どうやら神になるのは間違いないらしい。

 しかも、俺が選んだ相手であれば、従者として神の世界で俺と共にいられると知った女性陣は、もの凄く喜んでいた。

 俺、今でも毎日の様に絞り取られて死にそうなのに、もしかして死んでも絞り取られ続けるんだろうか?


「取りあえず、あのメイド達には感づかれてはいないようじゃが…邸で直接見られたら、隠し様が無いのぉ…」

 トール達の滞在予定があと少しで終わろうという時、とある部屋ではダンジョンマスターたちが何やら話し合っていた。

「ええ、確かにボーディ様の仰る事も良く分かりますが、そもそもここでの覚醒を止めたのもボーディ様ではないですか?」

 ボーディのぼやきに近い呟きに対して、モフリーナが問いを返す。

「まあ、その通りじゃ。ここで覚醒でもして管理局に気取られたりしたら、こことあ奴との関係を勘繰られるでのぉ…」

「確かに。その線から、例の薬の存在に気付かれでもしたら…」

「計画に大きな狂いが生じるのぉ。まあ、今のところは半覚醒といったところじゃで、まだ輪廻の輪の内側じゃ」

 どうやら、ダンジョンマスター達の会話の中心…つまり話題はトールの事の様だ。

「ですが、輪から外れたのを察知するのは、基本的に管理局が先。我々は輪から外れた魂を拾い上げるしか出来ません。まあ、今回は私達の監視かで覚醒するのですから、例外かもしれませんけれど…」

「うむ、その通り例外じゃ。じゃから、管理局よりも先に我々があ奴を確保出来るのは確実じゃ。しかしのぉ…それでも管理局に、いやあの男には確実に気付かれるぞ?」

「ボーディ様の危惧しているあの男というのは…アビスの事ですね?」

「ああ。管理局長…またの名をアビス。あの男の所為で、生きたまま輪廻の輪の一番深い所に落された魂が如何ほどあろうか…思い出しても悔やまれる…」

 唇をかみしめながら、ボーディが絞り出すかのように言葉を吐き出した。

「別の次元や過去の事を嘆いても仕方ありません。今回は、我々は大将と知己も信頼も得ましたから、大丈夫ですよ」

 宥める様にモフリーナは言うが、

「そうじゃとええのじゃが…」

 それでもボーディの不安は解消されなかった。

 無論、この場にはモフレンダも居るには居たのだが…ヒナとミヤの調整で疲れ切っていて、モフリーナの膝の上で寝ている。

 つまりは、何にも聞いていなかった。

 まあ、たとえ寝ていなくとも、大した事は言わないであろうが。

「これからも、注意深くあ奴を観察せねばの。覚醒と同時に、我が庁でマーキングせねばの」

「ええ、勿論です。その為にミヤとヒナを押し付けたのですから」

 ダンジョンマスターの2人が、ふふふ…と悪い顔をして笑っていたのを、トール達が知る由も無かった。


「んで、晩飯はどうする? あっちに戻ったら、また朝だけど?」

 ダンジョンマスター達が、どんな話をしているかなど知らないトールは、嫁ーずにこの先の予定を相談していた。

「そうですねぇ…帰っていきなり朝食の用意を頼むのも申し訳ないですし、こちらで頂いて帰りませんか?」

「メリルさんの仰るように、こちらで食事をしてから帰った方が良いと思います。そうすれば、帰ったら寝るだけですみますし」

 メリルとマチルダがトールに向かって、考えを口にした。

「なるほど…それはそうだな。まあ、完全に半日時差があるから、帰ってすぐに朝から寝るのもどうかと思うけど…」

「それは仕方ありませんよ、トールさま」

「そうだな、ミルシェの言う通り仕方ない。まあ、朝から搾り取るのも自粛しよう!」

 ミルシェがトールに同意しつつ宥めようとしていたが、イネスの言葉で台無しである。

「えっと…、私は、朝からでも…いいですけど…」 

 ミレーラは最近大胆になり過ぎである。

「マスター、私達に睡眠は不要ですので、何時でもスタンバイOKです!」

「「「準備OK!」」」

 ナディアと妖精3人は、何のスタンバイが出来ているというのだろうか。

「いや、俺は帰ったら絶対に寝るぞ? 夕方まで…とは言わないが、それでも寝るからな? そんで更に夜も寝るぞ?」

 予防線を張り巡らすトールであるが、果たしてそれに効果があるのかどうかは定かでは無かった…。

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