第1095話  教育の必要性

 ヒナとミヤは、そう時間もかからず目覚めた。

 ただ、異様に我が家の女性陣を恐れていたのだが、そこは…まあ、仕方ないかもしれない。

「それじゃ、2人共。出番が来るまで、ちゃんと待機しててくれるかな?」

 いいとも~! なんて返事は期待してませんよ。

 2人は黙って頷いたあと、その場で目を瞑ると、この場から本当にいきなり姿を消した。

 誰からとは言わないが、もしかしたら、逃げた…のかもしれない。 

 次に呼ぶときは、女性陣が居ない所で呼び出そう。


 ヒナとミヤが居なくなり、女性陣も冷静さを取り戻したように見える。

 ダンジョンマスターによる調整って、本当に何を調整したんだろうかと考えてしまう。

 確かにミヤに発声機能が搭載されたし、幾分聞き分けも良くなったような気がする。

 だけど、同じ仕様で調整されてやって来たヒナに関しては、ちょっと疑問が残る。

 だって、いきなり空気を読まない発言だぞ?

 もしかして毒舌機能も追加搭載されたのか?

 それなら、発声機能なんて付けない方が良かったんじゃないだろうか。

 俺にだけ聞こえていたのなら、俺が気を付けてさえいれば女性陣が激怒する事も無かっただろう。

 いや、もしや単に無邪気なだけなのか? 

 実は悪意とか全く無く、感じたまま言っただけの事なのか?

 幼女だしな。

 あの年頃の子供って、確かに場の空気とか読んだりしないし、禁句とか考えて会話したりしないもんな。

 無邪気に感じたまま声に出すのは、普通の事かもしれない。

 ヒナもミヤって、ちょっと大人っぽい感じがしたから、空気読め! って思ったけど、子供だもんな。

 前世で呼んでたラノベとかだったら、用事でも大人っぽい考え方したりするのが普通だったけど、リアル幼女にそんな事を求めたって駄目なのは当たり前だ。

 子供を教え導くのは、い俺達の様な大人の仕事だもんな、うん。

 そう考えると、あんな子供の失言1つに目くじら立てて集団で説教した我が家の女性陣の方が子供なのかもしれない。


「ミヤとヒナは、これから色々と教えなきゃな」

 そうは思っても、俺が嫁ーずや妖精達に面と向かって文句を言えるはずも無く(色々と怖いから)、こんな無難な言い回しになってしまうのは仕方ない事ではないでしょうか?

「そうですね。2人には折を見て、きちんと教育を施さねばなりませんね」

 俺の言葉に、メリルがそう答える。

「理解力はある様ですから、常識を教えれば問題ないでしょう」

 マチルダも、メリルの言葉に大いに頷き賛同した。

「うむ。2人にはきっちりとその身に刻みこんでやろう!」

 イネスは、やたらと前のめりだ。

 …マチルダとイネスが、一番年齢年齢に関しては気にしているからな。

「はっ! お、お義母さまに…変な事を言う前に…教えないと…」

 ミレーラの言葉で、この場の空気が一瞬で張り詰めた。

「た、確かに! ミレーラさん、確かにその通りです!」

 ミルシェが、ヒナとミヤが母さんに対してババア…いや、年増…ではなく、要らん事を言った場面を想像したのだろう。 

 真っ青な顔で点を仰ぎながら叫んだ。

「ミレーラさん、ナイスです! トールさま、帰る前に一度じっくりと2人に行っていいことと悪い事を教え込みましょう!」

 俺に向かって、メリルが家に帰る前に2人を呼び出せと言う。

「お…恐ろしい…何て恐ろしい事を…」「「「…絶対にそれだけは駄目です…」」」

 ナディアもアーデもアームもアーフェンも、その場面を想像してか、青い顔をしてガタガタと震え始めた。

 だが、確かに俺も恐ろしい…想像するもの恐ろしい。

 なので、きちんと教育はしておいた方がいいだろう。

 それが例え数時間だけの事になろうとも!

「分かった。帰るまでに、まとまった時間をとって、2人を召喚しよう。教育は皆に任せてもいいかな?」

 真面目な顔で俺がそう言うと、

『いいともー!』

 全員が声を揃えて、そう答えた。  

 …その返しって、異世界でも通用するのね…。



※ 別作品  妖精女王の騎士 ヴィー ≪Knight of the Fairy Queen、Vee ≫

       https://kakuyomu.jp/works/16817330657187983790

      シスバグとは全く違う世界観をお楽しみいただけたら嬉しいです。 

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