第1081話  現地住民1

 漸く目的地へを眼下にしたサラとリリアにヴァルナル。

 3人はホワイト・オルター号のキャビンから着陸地点を探していた。

 地上でも水上でも、基本的にどこにでも着陸できる、スーパー飛行船のホワイト・オルター号ではあるが、眼下に広がる原住民…もとい、現地住民達の異様な集まり具合に、ちょっと腰が引けていたのだ。

 別に、現地に住む住民達が、空に浮かぶ巨大な真っ白い飛行船を神の使いだと言って崇めているわけでも無く、さりとて敵だと騒ぎ武器を向けていると言うわけでも無い。

 彼等と接触したダンジョンマスター達により、しっかりと事前説明がなされていたおかげで、単に歓迎しているだけである。


 この最果ての地は、巨大な湖のおかげで飲み水に困る事は無いのだが、集落は深い森で囲まれており、樹々も太いためになかなか開拓もままならない。

 遠く離れた場所には、名前も知らないが国もあるそうだが、道も無い深い森の中を彼等が進むのは難しい。

 同じ理由で、名も知らぬ国は彼等を統治している訳でも無く、またそもそもこの地を調査にも来ていないという。

 損分けで、誰からも見放された土地となってしまっているこの場所には、大凡数百人が肩を寄せ合い生活していた。

 この土地に強い獣やモンスターが出現するわけでもないので、のんびりと暮らしている様にも見える。

 だが、先にも述べた様に、かなりの太い樹々が密集する森を切り拓く事は非常に困難で、食料事象はあまりよろしくない。


 そこに、ふらりとやって来たダンジョンマスター達。  

 最初は、犬の様な姿をして会話が出来る魔物が訪れた。

 見た目は変であったが、子供の背丈ほどのその魔物であったためそれほど怖くも無かったし、とても丁寧な口調だった。

「僕は魔物の一種でコボルトです。あまり皆さんには馴染みがないかと思います。もうすぐ来ると思いますが、私達の主は皆様と同じ人種に近い姿をしておりますので、少々お待ちください」

 そう言って、自ら集落から離れた場所で焚火をしながら、その日の夜は野営していた。

 現地の住民達は、多少戸惑いはしたが、遠巻きにその様子を眺めていた。

 見張っていたとも言う。

 夜が明けると、今度は肌色が暗褐色や暗緑色の、やはり子供の背丈ほどの人型のおかしな生物が増えていた。

 どうやら、増えたのはゴブリンらしい。 

 彼等も、とても丁寧にあいさつをし、お近づきのしるしに…と、手土産がわりの焼き立てパンを、相当な量をくれた。

 住民達は、大層喜んだのだが、本当に食べていいのか悩んだ。

 もしや毒でも入っているのではないか? そう疑う者も多かった。

 結局は、住民の子供が、山となっていたパンの1つを掻っ攫って口にし、「美味い美味い」と叫んだことで、あっという間に住民達によってパンの山は崩された。

 少し時間が過ぎた事、今度はどう見ても2人の人族の少女が、集落の外で野営しているコボルトとゴブリンの所に現れた。

 この集落には居ないが、どうやら少女達は獣人の子供らしい。

 彼女達も、また色々な食料などを手土産に、彼等の元へと挨拶に訪れ、色々な会話をした。

 村の生活や食料事情や森の中の様子など。

 森の中を抜けて来たはずの少女が、何故森の中の状況を知りたがるのかには住民達も首を捻ったが、話せば話すだけ食料をくれるのだから、それはもう先を争う様に知り得る限りの事を全員が話しまくった。

「では、あちたには、わたちたちのまちゅたーがきまちゅので、ちょのときにも同じはなちをおねがいちまちゅ!」

 少女の1人がそう言ったのだが、かなり聞き取りにくい舌ったらずな言葉だった。

「失礼。要は、明日にまた我々の主が来訪しますので、よろしくお願いします…っと、言いたいようです」「そうでち!」

 もう1人の少女が、わかり易く話してくれたので、住民は漸く理解した様だ。

 ちなみに、『そうでち!』は、理解出来たたらしい。


 こうして、ダンジョン関係者と着々と現地住民達とのコミュニケーションは進んで行ったのだった。



※ 妖精女王の騎士 ヴィー ≪Knight of the Fairy Queen、Vee ≫ 改訂版

  https://kakuyomu.jp/works/16817330657187983790

  旧作品の設定・文章等を見直して、再投稿始めました

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る