第1043話  話は簡単

 まあ、パンゲア大陸を元の海の底に沈めるとするか…なんて言ったりもしたけれど、そんな事は勿論できません。

 管理局長から貰ったアイテムを使ったわけなんで、局長にならもしかしたら出来るかもしれないが。

 転生の時に貰ったガチャ玉もそうなんだけど、創造する事は出来ても、消去は出来ないんだよね。

 だから、創造時には、目茶苦茶よく考えなきゃならない。

 今までは、俺の創造しようとした物が、問題ないかどうか管理局にサラが確認をしてくれてた。

 まあ、それも実際には管理局に害を成す可能性が低い、若しくは無い物しか許可されてなかったってんだから、実は創った物も本当は消す事だって可能なんじゃないかって、最近思う様になってきた。

 結局、このガチャ玉にしても、局長から貰った大陸創造のアイテムも、役に立ってるっちゃ~立ってるんだが、俺には便利なんだか不便なんだかいまいち判断出来んようになってきている。

 

 そんなできもしない事で脅しを掛けたら、モフリーナとボーディが慌てて裏庭にあるパンゲア大陸直通の門からやって来た。

 流石に邸で話も出来ないので、俺は2人と共に大陸へと、すぐに渡った。

 家族には、『晩飯までには帰るから~』とだけ言い残して。

 ミレーラ、マチルダ、イネスは、それはもう盛大に笑顔で俺を送り出してくれた。

 あのまま数日の間、ミヤ問題を放置してたら、あの笑顔はきっと…ぶるぶるぶる…考えるのは止めよう…怖い。

 

 さて、邸のある大陸の丁度惑星の真裏に存在するパンゲア大陸へと渡った分けだが、ちゃっかりとミヤもついて来ていた。

 いや、そりゃミヤの問題なんだけど、俺は連れてくるつもりは無かったんだ?

 だって、こいつの製造過程に関する事や、いろんな知識に関する事なんだから、当人(?)を目の前にしてたら話しづらい。

 なので、全部が綺麗にまとまってから呼ぼうかと思ってたんだけど…俺にもモフリーナにもボーディにも、一切気配を悟られず、こっそりと俺の後ろにくっ付いて来たんだよ。

 何だよ、その無駄に高等な隠密技能は! お前はJapanese Ninja か?

 大陸で俺達を出迎えたモフレンダ、もふりん、カジマギーが、俺の後ろにいるミヤを見つけなかったら、ずっとその存在すら感じられなかったわ!


 まあ、ついて来てしまったのは仕方ない。

 俺達はローテーブルを囲んでソファーに腰をおろした。

 ミヤも同席してはいるが、こいつに関しての話を始めるとしよう。

 とは言っても、話は簡単だ。

 どうやってミヤに言う事を聞かせるか…問題はこの1点に限られているのだから。

「お主…何故、こ奴の言葉に従わぬのじゃ?」

 ボーディがド直球でミヤに問いをぶつけたが、ミヤは知らん顔。

「うぬぬぬぬぬ…創造主たる妾の問いに答えぬつもりか!」

 一瞬でボーディが沸騰しました。

「ちょっと待ってください。そんな勢いで話してもミヤが委縮するだけです。きっと今も怖くて何も話せないんだと思いますよ」

 モフリーナが、ミヤを庇いつつボーディを抑えていたのだが、ミヤは我関せずと俺の背中によじ登りはじめた。

 正確には、ソファーの背もたれに上り、俺の背中におんぶの格好になった。

「ちょ…あなた、聞いているんですか? 今、私、あ・な・た…つまりは、ミヤを庇ってるんですよ? 聞いてます?」

 あ、普段温厚なビジネス・ウーマン風スーツの巨乳ネコ耳ないすばでぃモフリーナですら、ちょい沸騰気味かも。

 モフレンダは、何か助け舟を…出すわけ無いですね…わかってましたけど、一応…ね。

「ぼーでぃちゃまも、ましたーちゃまも、ちょっとおちついてくだちゃい。みやちゃんがこわがりまちゅ。ここはひとつ、わたくちとかじまぎーちゃんに、まかちぇてみてくりゃちゃい!」

 ボーディとモフリーナを落ち着かせるべく、ミヤと同じ幼女枠のもふりんが声をあげた。

「はい、もふりんの言う通りです。どうかこの場は、私達におまかせください」

 カジマギーもそう言って、

「お姉ちゃんと、あちらで少しだけ話をしましょう」

 ミヤに向かってにこやかに、右手で手招きをしつつ、左手で部屋の奥を指さした。

 背中にミヤがくっ付いているのだから、当然俺にはその表情は見えないし、頭の中に何の声も響いてこないので、ミヤが何をしているのか考えているのか分からない。

 はずなのだが…もふりんとカジマギーの、みるみる変貌する表情を見ているだけで、何となく察した。

「あ、あっかんべー…だと…!?」「この私を愚弄しているのですか!?」

 ああ、うん…あっかんべぇは駄目だよね…怒るのも無理は無いよ、うん。

 

 なんだろうなあ…もうミヤは俺の家族だけでなく、ダンジョンマスターと分け身までを敵に回すつもりなのかなあ…。

 俺がどうしようかと天井を仰ぎ見た瞬間、

「…ミヤ…オペレーティング・システム、強制停止…」

 大きな声では無かったが、モフレンダがミヤに向かってそう呟いた。

 その瞬間、俺の背中にへばりついていたミヤが、ころんっとソファーに転げ落ちたのだった。



※ 妖精女王の騎士 ヴィー ≪Knight of the Fairy Queen、Vee ≫ 改訂版

  https://kakuyomu.jp/works/16817330657187983790

  旧作品の設定・文章等を見直して、再投稿始めました

 

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