第1042話  正座して待っとけ!

『はぁ~? 言う事を聞かぬじゃとぉ~!?』

 事情を説明すると、ボーディは素っ頓狂な声を、通信の呪法具の向こうであげた。

『ああ。別次元だったか? への行かせ方も分からんが、そもそもそこに行けと言っても言う事を聞かないからな。あと、確かに能力のテストはして確認は出来たんだが、あいつおかしな記憶とか知識とかを持ってないか?』

『ううむ…別次元空間での待機を拒否している…と言う事か。それは問題じゃのぉ…調整ミスか? あと、変な知識とは?』

 なるほど、調整ミスか…ってか、完成検査しろよ! 新車だって工場から出荷される前には、きちんと完検すんだぞ!

『ボーディになら話してもいいか…。俺の前世の知識を持ってるみたいだ。どこまでの知識を持ってるかは分からんけど』

 だって、ティ〇・フィナーレって言いながら、あのマスケット銃で最強の一撃をぶっ放したんだぞ?

 それは、間違いなくお菓子の魔女に喰われた巴マ〇さんの必殺技だろーが! 俺の推しキャラの1人だよ!

 ってな事を説明したら、

『はぁ…確かにお主にとってその技名は前世の記憶にある『あにめ』とかで出てくる名なのかも知れぬが、『とどめの一撃』という意味の言葉であって、別に必殺技の名前というわけでは無いぞよ?』

 え、マジで!? 

『マジじゃ。まあ、妾もお主の前世の記憶とやらを完全にトレースしたわけでは無いからはっきりとは言えぬが、お主の前世の記憶にあるどこかの地方の言葉じゃな』

 …ちょっと待て。

『完全にトレースしたわけでは無いって、どういうことだ? って事は、俺の記憶を何らかの方法でお前等持ってるって事なのか?』

 さっきの言い方だと、絶対に俺の記憶をコピってるよな? 

 前世の記憶のどこかの地方って、完全に言っちゃってるよな?

『えっ?』

『えっ? じゃねーよ!』

『……』

『おぃ!』

 何黙ってんだよ!

『そ、それよりも言う事を聞かんとは、ミヤにも困ったものだの…』

『話を逸らすな、誤魔化すな!』

 俺はそんな事では誤魔化されんぞ!

『あ、妾…ちょっと用事を思い出して…』

 逃がすわけ無いだろうが!

『なら、モフリーナを問いただす…いや、パンゲア大陸を元の海の底に沈めるとするか。跡形も無くな』

『ちょ、ちょっと待っておくれやす! それだけは止めてたもれ!』

 どこの言葉だよ!

『やめて欲しくば、ちゃっちゃと話せ!』

『ぁぅ…』

 ボーディが通信の呪法後の向こうで項垂れてるのがはっきりと分かった。


 その後、ボーディから色々と話を聞きだす事が出来た。

『っと言うわけなのじゃ…。すまんかった…』

 どうにもグダグダと脱線しそうな気がしたので、端的に話をさせたのだが、その内容は実に簡単な物だった。

 太陽電池でエネルギーを補充するという俺のアイデアの出所が気になったボーディによって、俺があの黒竜の胃の中の異次元空間から通常空間へと戻る際に、モフリーナによって俺の記憶を捜査させたんだとか。

 そんな事が出来るのかと少々驚きもしたが、よく考えるとユリアちゃんを造り上げた時にも、元々の身体にあった脳内の記憶をコピーした上で、加工してから新しい脳に焼き付ける事が出来るほどのテクノロジーを持っているのだから、容易い事なのだろう。

 とは言っても、ユリアちゃんの時と今回では、ちょっと違う。

 ユリアちゃんの時は、そうしなければ下手をすると暴走してしまう可能性もあった。

 だが、俺の記憶を覗き見たのは、単なるボーディの好奇心によるものだ。

 とは言え、正直に言って貰えば、協力するのも吝かでは無かった。

 俺に黙って勝手に記憶を漁ったりするから、俺は怒って居るだけだ。

『ミヤを作る以外には、誓ってお主の記憶を漁ったりはしておらぬ! もしも今後使わねばならぬ事態が起きた時には、真っ先に許可を取るから、記憶を記録しておくのを許して欲しいのじゃ』

 まあ…恥ずかしい記憶とかを見られたり、誰かに見せたりしないのであれば、別にそれは良いかな。

 個人情報の漏えいは許さんけどな。


 ん、待てよ…? 

『ティロ・フィナ〇レって、やっぱ俺の記憶の中の巴〇ミさんの必殺技だった…って事だよな?』

『…いや、それはお主の前世の記憶にあるどこかの地方の言葉で…』

『嘘つけ! そんなどっかの国か地方とかの知識はねーわ! ってか、太陽電池の事調べる為って言ってたけど、あれも間違いなく変身前の青いヘルメット被ったイチ〇ーがモデルだよな!?』

 普通太陽電池っていえば、太陽光発電…つまりはソーラーパネルを思い浮かべるはずだ。

 だが、ミヤのカチューシャが太陽光発電のソーラーパネルじゃない事は確かだ!

 だって、それだと色は黒くなるはずだからな。

 なのにミヤの太陽電池とやらは、間違いなく銀ピカだ。

 これは間違いなく、『悪のある所必ず現れ、悪の行われる所必ず行く…』って崖の上から見栄を切る、白いトランペットの俺の憧れのあの人で間違いない!

 俺の記憶の中では、イ〇ローの太陽電池なんていう記憶はかなり古い物のはずだ。

 年代順に記憶が並んでるのかどうかは知らんが、ソーラーパネルの方が圧倒的に新しい記憶だし、現実的に考えたってそっちの方を見て参考にするはずだ。

『お前等…俺の恥ずかしい古い記憶まで、余さず全て確認しただろう?』

『……』

 沈黙するという事は、肯定したと見なす!


 よーし、お前等、ちょっと正座して待っとけ! 今から成敗に行ってやるわ!



※ 妖精女王の騎士 ヴィー ≪Knight of the Fairy Queen、Vee ≫ 改訂版

  https://kakuyomu.jp/works/16817330657187983790

  旧作品の設定・文章等を見直して、再投稿始めました

 

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