第1041話  爆発寸前

 いつもの如く、毎朝の日課である空手の型稽古に勤しんだのだが、気合がいまいち入らなかった。

 気合が入らなかった原因は、型稽古中もずっと俺の側でぼへぇ~っと立っていたヤツのせいだ。

 イネスも剣を振るっていたが、一心不乱というわけでは無かった様だ。

 まあ、イネスもそれをチラチラ見ていたので、俺の横に立つミヤが気になってたんだろうな…。

 何たって、2人共昨晩はめっちゃ寝不足だからな。

 R指定な大人の夜の夫婦生活をしてたからじゃないぞ?

 みんなも知ってると思うけど、一応言っておかないとな。


 何となく気もそぞろに型稽古を終えた俺は、軽く汗を流して食堂へと向かった。

 シャワー室にまでミヤは入ってはこないのだが、何だか見張られてる気分だな。

 イネスも着替えてから食堂に向かうそうだが、最後までミヤをチラ見していた。

 

 ミヤが来た当初は、その存在をあまり気にしてない感じだったのに、流石にそろそろ気になる様だ。

 まだ怒鳴りつけたりして無いだけ、理性が残っているのだろう。

 だがしかし! メリルとミルシェは妊娠しているから良いとして、ミレーラ、マチルダ、イネスの3人が、果たして昨夜の様な状況が続いたらどうなるだろう?

 まだミレーラは嫁ーずの中でも最年少なので幾分は我慢できるかもしれない。

 だが、マチルダとイネスは、最近かなり焦り気味だ。

 前世での女性の婚期&出産適齢期の範囲内に十分おさまっている2人だし、はっきり言って美人と評してもおかしくない。

 とはいえ、それでもこの世界ではすでに出産適齢期は過ぎる寸前だ。

 いや、身近な母さんみたいにまさかの妊娠&出産だって出来るんだから、まだ焦る事も無いのかもしれないが、それでも本人的には少し焦り始めるお年頃。

 妊娠欲が滅茶苦茶高い2人に諦めろなんて絶対に言えるわけが無い。


 それに、嫁ーずと妖精達の間での取り決めの事もある。

 嫁ーずが全員妊娠したら、次は妖精の順番だとか言ってたからだろうか、ナディア達のミヤを見る目も厳しい物があるのだ。

 ただでさえ男女比率のバランスが崩壊している我が家で、これ以上問題が起きたりしたらた抑えきる自信が俺には無い。

 ここはやはり、ミヤに関してもう一度ボーディ達と話し合う必要があるだろう。


 朝食はいたって普通…じゃないかもしれない。

 嫁ーず&妖精達の無言のプレッシャーと強烈な視線のおかげで、何を口にしても味がしない。

 そいれどころか胃がキリキリと痛くてたまらん!

 こりゃ、さっさとボーディに連絡をせねば、女性陣だけでなく俺ももたねぇ! 

 という事で、朝食後に早速ボーディに連絡を取ってみた。

 えっと…こっちが朝食後だから、あっちでは夜になったばかりだろうから大丈夫かな。

 んだば、通信室へ行きますかね。

 俺が通信室に入ると、ミヤもついて入ってこようとしたので、締め出す。

 恨みがましい目で部屋の外から、小窓にへばりついてこっちを見てるが、中に入れたら面倒だ。 


『もすもす、ボーディか?』

 ボーディ専用の通信の呪法具で発信したら、すぐに出てくれたのでそう言ってみたのだが、

『いえ、カジマギーです。すぐ主様に代わりますので、少々お待ちください』  

『あ、はい。お願いします』

 …なんか、この間がめちゃ気恥ずかしい。 

 待つ事しばし。

『おお、待たせたのぉ。どうしたんじゃ、何か用かや?』

 本日の大本命であるボーディの登場だ。

『何か用かじゃねーよ!』

 思わず怒鳴った俺を誰が咎められよう。

『ど、どうしたと言うのじゃ? 何を怒っておる?』

 言葉の割に、驚いた様子無いな、ボーディ。

『どうしたもこうしたもねーよ! あのミヤってのは、どうなってんだよ!』

『どうなってる…とは、具体的には?』

 あ、こいつ落ち着きやがった。

『あいつ、全然俺の言うこと聞かないぞ? 四六時中俺にくっ付いて離れないから、嫁ーずの色んな不満が爆発寸前だよ!』

『はぁ? 何でそんな事になっておるんじゃぁ?』

 こっちが聞きたいわ!



※ 妖精女王の騎士 ヴィー ≪Knight of the Fairy Queen、Vee ≫ 改訂版

  https://kakuyomu.jp/works/16817330657187983790

  旧作品の設定・文章等を見直して、再投稿始めました

 

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