第1031話  ここって宇宙?

 左手を天に伸ばした直後、ミヤの背部…と言うか、背中が眩く輝いた。

 そして現れた物は…。

「ランドセルじゃねーか!」

 モビ〇スーツのバックパックとかの事じゃないぞ、小学生が背負って学校行ってるあのランドセルだぞ?

 しかも、昔懐かしい女子小学生御用達の、あの真っ赤なランドセルだ!


「らんど…せる?」

 ランドセルを知らないコルネちゃんが、俺の言葉に首を捻る。

 この世界には無いんだから、初めて聞く名前に首を捻るのも当然かもしれない。

「あれは、背嚢ではないでしょうか? 少々形は変わっておりますが…」

 マチルダはミヤの背中にくっ付くランドセルを見て、冷静に分析する。

 うん、確かに背嚢という言い方も間違いでは無いな。

 ランドセルの起源は背嚢なんだから、それを否定する気は無い。

 だが、俺的にはランドセルはランドセルなのだ! 背嚢はどっちかと言うと、リュックサックだ!

 いや、ホントどうでも良い事だけど…。

 しかし、黒い着物に真っ赤なランドセルって似合わねぇな…ってか、どうやって背負ったんだ?


 さて、フル装備(でいいのかな?)になったミヤは、もの凄く鼻息荒くドヤ顔で俺を見ていた。

 ああ、うん。凄いですね…感想を言うのが躊躇われるぐらい…。

 ミヤの武装展開を見学していた居並ぶ面々も、何故か全員で『おぉー!』と拍手をしていた。

 でもさ、そのマスケット銃は武装だってのは分るよ、見た目的にもね。

 だけど、その真っ赤なランドセルて、本当に飛行ユニットなの?

 あ、いや…そう言えばどっかのアニメでランドセル背負って空飛ぶ何かを見た様な気もする。

 何だっけ、アレ? いや、そもそも記憶違いだったかな?

 俺が考え込む表情は、変身中であるため誰にも見られる事は無かったが、暫く動かなかったからか、

「トールさま、どうかされましたか?」

 メリルがそう声を掛けて来た。

 すると…負い紐? スリングって言うんだっけ? で、ミヤがマスケット銃を右肩にかけ背負った。

 次いで、ミヤは俺の後ろに回り込み、何故だか知らんが俺の背中をよじ登り始めた。

 そして、両手を俺の首に回し、両足で腰をしっかりと挟み込んだミヤの声が俺の頭の中に。

『同化…合体…』

「そりゃ、❝ どうか ❞ 違いだ、馬鹿者が!」

 駄洒落かよ! こりゃ、ただのおんぶだ!

 俺の怒鳴り声を聞いた皆は、ミヤが何で俺の背中によじ登ったのか、何故俺が怒鳴ったのかを、説明せずとも理解してくれた。

 そして、何だかこの場が微妙な空気となってしまったのだが、俺は悪くないはずだ。


「んで、同化か合体かは知らないが、ここからどうするんだ?」

 俺の右肩から顔を出しているミヤに声を掛けると、

『…飛ぶ…』

 頭の中に、ぽそりとミヤの声が。

「へ?」

 俺の間抜けな声と共に、背中におんぶしたミヤから何が伸びて来て、俺の胸から腹ににかけて巻きついた。

「帯が?」

 ユズキ君、説明どうもありがとう。

 さらに、俺の背後から何やらガシャンガシャンと音がしたかと思ったら、いきなり『ヒュィーン…』という甲高い音が聞こえて来た。

 俺が背負ったミヤの背中の事なので俺には見えないが、

「ら、ランドセルが変形!?」

 またもやユズキ君、説明をどうもありがとう。

 ランドセルが変形したらしい。

「ユズキ、見てみて! あれ、絶対ジェットエンジンだよ! しかも羽、羽だよ!」

 ユズカ、大興奮。

 でも、一言いいかなぁ…俺、全然見えないんですけど…。


『…ミヤ…いきまーす…』

 ものすごく平坦なミヤの声とほぼ同時に、『シュゴゴッゴゴゴゴッゴッゴ…』と辺り一帯が轟音に包まれた。

 そして、いきなり俺(+ミヤ)の体重を支えていた両足から力が抜けたと思ったら、強烈なGが俺の身体中に圧し掛かった。

「えええええええええええええええええええええええええええ!!??」

 一瞬にして俺の身体は空高く舞い上がっていた。

 さっきのGは、急上昇による物だったらしく、今は…えっと…ここって高度何メートルなん?  

『マスター、煩いです。今から水平飛行に移行します』

 きゅ、急に流暢に喋り始めたな、おい! 

 ミヤの言葉の通り、徐々に真っすぐ飛び上がっていた体勢が水平方向へと傾き始めた。

 完全に水平飛行へと移行した時には辺りは随分と暗く…暗く? 今はまだ昼間じゃ無かったか?

 漸く落ち着いて状況を確認すべく周辺を見回すと…あれ? ここって宇宙?

『ここは熱圏。外気圏がまだあるけど、ほぼ宇宙』

 …ミヤの説明って俺には良く分からん。

 つまりは大気圏って事? あれ、成層圏ってどこだっけ?

『成層圏は遥かに下。一応、外気圏までは大気圏と呼ばれている。もう空気はほとんどない』

 なんか、ミヤが恐ろしい事を言い始めたーーー!

『安心して。完全にシールドで覆っているので、空気は十分。ここなら全力でテストしても問題ない』

 全然、安心なんて出来ねーーーよーーー!



※ 妖精女王の騎士 ヴィー ≪Knight of the Fairy Queen、Vee ≫ 改訂版

  https://kakuyomu.jp/works/16817330657187983790

  旧作品の設定・文章等を見直して、再投稿始めました

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