第1032話 あの辺
何で俺はこんな場所に居るのだろう…。
上を見上げれば、そこは宇宙の海…俺の海…って、俺の海じゃねーな…そんな歌もあったけど、いや、そうじゃ無くて!
下を見下ろせば、遠く離れた青い地球…って、青くて丸い惑星だけど、ここは地球じゃねーよ! いや、その歌でも無くて!
どっちも原作者はあの偉大なる松〇零士先生だよな…って、そうでも無くて!
俺の乏しい知識でも知ってるけど、ここって高度200kmは越えてるだろ?
って事は、ミヤも言っていたが、もはやここは宇宙!
なんか知らないけど、ふわふわ浮いてるのって、無重力ってやつかな。
こう、何て言うか…股間がきゅっ! ってなるな、この光景って。
ホワイト・オルター号で空を飛んだことはあったけど、流石にこの高度まで来た事は無かったなぁ…勿論、前世だって宇宙なんて行った事無いぞ。
TVとかネットで宇宙の星とか、地球の画像とか良く見てたけど、まさかこの目で直接見る事になるとは思いもしなかった。
俺が浮いてるこの空間は、大気圏でもほぼ宇宙よりの場所らしい。
周りを見渡しても、何も浮いてたりしない。
飛行船で飛ぶと言っても、頑張っても高度数kmが限界。
モフレンダが最初に居たあの盆地を取り囲む山脈だって、標高6kmぐらいだったけど、それすら飛び越えるのは困難だったからう回したぐらいだ。
地球で有名なあのエベレストなんて、標高8.8kmぐらいだったけど、山頂付近なんて、ほとんど酸素も無いって聞いた。
たまにホワイト・オルター号で高空を飛んでる時なんかに、低空を漂う雲なんて物も見たりしたが、それらは俺の遥か下に見える。
真下は青と白のマーブル模様になった光景が広がるだけだが、少し目を左右に向けると、それが宇宙に浮かぶ巨大な球体だと言うのが良く分かる。
もしかしたら宇宙ステーションとかから地球を見たらこんな感じなのかな?
低軌道を周回してるらしいけど、それでも確かあれも高度400 kmぐらいはあった気がする。
この高度まで来ちゃったら、確か有害な宇宙線とかの影響もあるんじゃないかな?
それとも、そんな物もシールドで防げてるんだろうか? 謎だ。
しっかし、この無重力状態ってのは、もの凄く頼りない様な怖い様な不安になる様な感じで、あんまり好きになれないな。
うん、俺って宇宙飛行士にはなれないわ、絶対に!
いや、なろうとも思わないけどさ…。
『それじゃ、テストを開始』
俺があり得ない場所に来ちゃってる事に、驚き戸惑い混乱しているというのに、ミヤは全く動じずテストするとか言って来た。
まあ、どうせしなきゃならないんだから、誰にも迷惑かける事も無いここなら問題ないけど。
『飛行能力から』
「ちょっと待て! ここまで来たんだから、飛行能力が凄いのは分ってるぞ?」
宇宙にまで行けちゃう飛行能力を見せつけられてるのに、今更そこんとこのテスト必要?
一瞬ってのは言い過ぎだけど、それでもあっという間にこんな場所まで急上昇でこ来れるんだから、普通に水平飛行したらマッハ軽く超えるだろ?
『ちぃ…やり過ぎか…』
「お前、今舌打ちしなかったか?」
『気のせい』
「絶対にしてたよな?」
『じゃ、エネルギー砲の試射』
こいつ、スルーしやがった!
『あの辺』
おんぶしていたミヤが左手をすっと伸ばし、目標となる場所を差し示した。
その先にあるのは、ただただ真っ青な海。
サラやリリアさんからの情報によれば、この惑星には俺達が住んでいる大陸と、その丁度真反対に俺が創り出したパンゲア大陸しかないので、この惑星の大半は海という事になる。
つまりは、よほどの事が無い限り、海に向かって鉄砲撃ったぐらいじゃ問題は起きない。
津波が起きたって、どちらの大陸にも到達しないだろう。しないよね?
っちゅーか、地震とか起きたんなら別だけど、ミヤが持ってる鉄砲ぐらいで津波なんて起きるはず無い。
一応、注意だけはしておこうかね。
「何にもない場所だよな? 間違っても大陸とかに撃ち込むなよ?」
『当然!』
妙に自信満々だな。
「んで、そのエネルギー砲ってのは、放射能とかの影響とか無いよな?」
『………』
「………」
黙るなよ! 何か喋れよ!
『多分、大丈夫』
「多分なのかよ!」
『………』
「おーーーーい!」
めっちゃ不安…。
俺が何か言う前に、ミヤは左手を再度俺の首に回し、右手で超長いマスケット銃を構えると、
『ティロ・フ〇ナーレ!』
おい、何でその名前知ってんだよ! この帯って、もしかしたらリボンなのか!?
俺がそう突っ込むよりも早く、途轍もない衝撃が俺の身体を襲い、俺の身体を後方へとふっ飛ばした。
ミヤの持つマスケット銃から、とんでもなく極太のビームの様な物が発射され、海に向かって一直線。
白く海の上空を漂っている雲のど真ん中をぶち抜いて海に向かってビームが進む。
一瞬で雲は蒸発して海に突き刺さったビーム。
こんな高空からでは海面の状態ははっきりわからないが、爆発とかはなさそうだ。
やがて銃口から出ていたビームが止まると、海に吸い込まれるようにして、その光線は消えていった。
『試射終了。約2千トンの海水が蒸発しただけで、放射能汚染の心配は無し』
「………」
えっと、ミヤさん…2千トンの海水って…25mプール何杯分でしょうか?
※ 妖精女王の騎士 ヴィー ≪Knight of the Fairy Queen、Vee ≫ 改訂版
https://kakuyomu.jp/works/16817330657187983790
旧作品の設定・文章等を見直して、再投稿始めました
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