第1025話  土産?

 東の空から、真っ白で巨大な飛行船がネス湖の上空を通り過ぎると、我が家の上空で大きく旋回した。

 そして、ネス湖の畔と我が邸の裏庭の塀との間に、その巨体を降下させた。

 まあ、つまりはいつもの如く、ホワイト・オルター号が裏庭近くに着陸したって事。

 俺と嫁ーず、妖精達とミヤ、そしてドワーフメイド衆が並んでその様子を見つめていた。


 ホワイト・オルター号のキャビンの出入り口下に格納されていたタラップがゆっくりと展開し、裏庭の門の直ぐ近くへ。

 タラップがしっかりと地についた直後に、ガチャリとキャビンの扉が開く。

 最初に扉から出てきたのは、元気いっぱいのユリアちゃんだ。弾む様にタラップを駆け降りると、一直線に俺の元へとやってくる。

「おにいちゃん、ただいま~!」

 スーパー幼女ユリアちゃんの全力疾走タックルを受けた俺は、『ぐふぇ!』っと、少し情けない声をあげてしまったが、それでも何とか踏ん張りてる事で、兄の威厳を保つ事が出来た…と思う。

 抱きついて来たユリアちゃんの頭をよしよしと撫ぜていると、次にコルネちゃんとメリルがゆっくりとタラップを踏みしめて降りてくる。

「こら、ユリアーネ! 階段は走っちゃだめでしょう!」

 お姉さんであるコルネちゃんは、時折こうやってユリアちゃんにお小言を言う様になってきた。

 多分、侯爵家の令嬢として、そして姉として、きちんと妹を導こうとするが故なのかもしれない。

 まあ、お小言を貰うユリアちゃんは、ちょこっとぶー垂れてるのは御愛嬌だな。

 メリルは慎重にタラップの手すりを摘みながら、1段1段確認しながら降りて来た。

 まだまだ、この幼女に貴族としてのマナーとか教えたって駄目だと思うよ。

 コルネちゃんも同じぐらいの歳の時って、元気いっぱい走り回ってたじゃんか…とは、姉の威厳の為にも言わないけど。

 次いで現れたのは、我が家の末の弟を抱っこした母さんと、その母さんの腰に手をあてた父さん。

 そして、同じく赤ちゃんを抱っこしたユズカと、階段を降りる妻を心配そうに見つめるユズキ。

 最後に、サラとリリアさんが、軽快な足取りでタラップを降りて来た。


 お出迎えの為に並んでいた俺達の前に、全員がタラップを降りて向かい合う様に並んだところで、

「ただいま戻った。何か問題は起きたか?」

 そう父さんが口を開く。

「お帰りなさい、父さん。特に大きな問題は無いかな」

 そう答えた俺なのだが、全員が俺の右横の黒い着物を着た幼女へと視線が集中していた。

「いや、トールよ…どう見ても何かあった様にしか見えないんだが…」

「おにいちゃん、あたらしいおよめさん?」

 父さんが言葉を続けようとしていると、ユリアちゃんがインターセプト&カウンター発動した!

「「お嫁さん!?」」 

 ユリアちゃんのカウンター攻撃に即座に反応したのは、コルネちゃんとメリル。

「ち、違うからな! 絶対に違うからな!」

 全力で俺は否定をした。

 だが、直後にミヤが右手にヒシッ! と抱きつき、上目遣いでうるうるした瞳を俺に向けてきたので、全力全開の否定の言葉も虚しく水泡に帰す事となる。

「これは、後程じっくりとお話をする必要がありそうですね」

 ニッコリ笑いながらそう言うメリルの目は、決して笑ってなかった…怖いよ…。


 その後、船体の中央よりやや後側が一部開いてクレーンがせり出し、皆の荷物などがゆっくりと降ろされた。

 2泊3日の小旅行だし、そもそも王都に家のある父さん、母さん、コルネちゃんにユリアちゃんの荷物は少ない。

 通信を入れて着替えを王城に届ければ済むだけの話だし、メリルに到っては完全に里帰り。

 ユズユズとサラにリリアさんは、最低限の手荷物程度(中型のスーツケースぐらいかな?)しか持ち込んで無い。

 なのに、降ろした荷物が何でこんなに多いんだろう…木箱が10個もあるんだけど?

「ああ、トールよ。陛下から土産が沢山あるから、荷の搬出には気を付けてな」

「え、陛下から土産?」

 国王様からお土産って、ヤバい物じゃないよな?

「ああ。どうやらマタニティー用品とベビー用品の第一弾らしいぞ」

 ああ、メリルは元は第3王女だったんだから…って、

「第一弾!?」

 って事は、この他にも届くの!?

「ああ、第一弾らしいぞ。まずは急ぎ必要な品物だけだそうだ。後はアルテアン商会の長距離運送便で送ってくれると言っていたな。2台チャーターするとか」

 はぁー!? 

 我が商会の蒸気式トラックの長距離便って、1台あたりの積載量は10t近くあるんだぞ? それが2台って、どんだけ買い込んだんだよ、国王様!

「まあ、お前の妻達5人分だと言ってたが…。諦めろ、トール」

 マタニティー用品とベビー用品の為だけに、倉庫を新しく建なきゃ駄目だな。

 でも、そんなに貰っても、絶対にほとんどの品物使わないと思うんですけど…。



※ 妖精女王の騎士 ヴィー ≪Knight of the Fairy Queen、Vee ≫ 改訂版

  https://kakuyomu.jp/works/16817330657187983790

  旧作品の設定・文章等を見直して、再投稿始めました

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