第1024話  一番の地雷

 執務室のど真ん中で、俺は女性陣に囲まれて正座で説教を受けました。

 あの時、ミヤが何を言ったのかを白状させられた俺は、嫁ーずには欲求不満だとかロリだとか疑われ、ナディア達には『それならやっぱり愛しき人と呼びましょうか』とか言われ…。

 でも、俺は主張したんだ! 俺が悪いわけじゃないって!

 あくまでもミヤのアナグラムの所為で、性的な意味になっただけだって…駄洒落じゃねぇぞ?

 俺は無実だ、むしろおかしな呼び方をさせないために頑張ったんだと、必死に主張したかいあって、何とか許してもらえたのだ。

 いや、ミレーラ、イネス、マチルダには、今夜もう一度とことん話し合いましょうと言われたけど…ベッドの上でって。

 

 それはさておき、何とか場も収まったのだが、もう何時ホワイト・オルター号が帰って来てもおかしく無い時間だ。

 王都を往復する間に幼女が1人増えてるこの状況を、どう説明したらみんなに納得してもらえるだろうか。

 家族やユズユズにはきちんと話したって問題は無いかも知れないが、間違いなくサラとリリアさんも説明の場には同席するだろう。

 わざわざ別々に説明なんてしたら、それこそ怪しさ爆発だしな。

 変に勘繰られない様に、一緒に説明をするのが一番良い。

 って言うか、ミヤが別次元だっけ? に姿を隠して待機してくれたら、何の問題も無いんだけど、俺が正座で女性陣の説教を受けている間も、俺の横にちょこんと正座して俺の袖口をずっと引っ張ってた。

 え、ミヤも説教を受けたのかって? まあ、受けるには受けたのだが、全然反省とかはしてませんよ。

 別次元で待機しとけって言っても、俺の傍から離れもしねぇし。 

 そもそも、自分の行動や言動が正しいのか間違ってるのかすら、ちゃんと理解出来てないみたいだし。微妙にその辺は幼い子供と変わらないんだよなあ。

 さて、マジでどうすべ。


「え、普通に話せば良いのでは?」

 サラやリリアさんに、ミヤの事をどう説明したもんかと俺が頭を悩ませていると、マチルダがきょとんとしてそう言った。

「いや、普通にって…どんな風に?」

 普通に話せば良いとか簡単に言うけれど、まさか『この幼女は、お前達を倒すためにダンジョンマスターが用意した秘密兵器だー! わーっはっはー!』とか、言えないよな?

「何故、高笑いする必要が?」

 しまった、また声に出てたのか…。

「まあ、普通と言ったら普通ですよ。ミヤは別次元で待機するのが嫌な様ですから、取りあえずサラとリリアにはダンジョンマスターが創り出した分身体とでも言えば良いのでは? 別に兵器だとか説明する義務もありませんし」

 何でもない事の様にマチルダは言うけれど、

「そんな説明で大丈夫か?」

 何のためにそんな分身体を~? とか、どうしてこのタイミングで~? とか言われたりしないだろうか。

「全然大丈夫でしょう。サラとリリアには、ダンジョンマスター達は例の場所をまだ調査中だって言ってるんですよね?」

「まあ、その通りだけど。実際、父さん達をあっちに送り込んで…「ああ、そこは良いです」…えっ?」

 俺の話をぶった切ったマチルダ。

「詳しい説明とは不要なんですよ。ミヤがここに居る説明なんですから、シンプルでいいのです」

「ほう…シンプル…とな?」

 マチルダには、何か良い案があるってのか?

「いえ、ですからダンジョンマスターと分身体の繋がりを使うだけです。ダンジョンマスターが調査している例の土地で何か発見したら、ミヤを通じて教えてくれると。ミヤが喋れない理由に関しては、単に急拵えだったため声帯機能が間に合わなかったとか何とか、どうとでも言えますし」

「おぉ! なるほど!」

 流石は我が家のブレインだ!

「まあ、エネルギー補給に関しては、トールさまが何か良い言い訳を考えて下さいね」

「ぉぅ…」

 そこが一番の地雷かも知れない…。 



※ 妖精女王の騎士 ヴィー ≪Knight of the Fairy Queen、Vee ≫ 改訂版

  https://kakuyomu.jp/works/16817330657187983790

  旧作品の設定・文章等を見直して、再投稿始めました

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