第1023話  ちょっと黙っとけ!

「ところでマスター、1つお伺いしたい事があるのですが…」

 頭の上にカチューシャが無い事をミヤに問いただしていると、ナディアが俺に声を掛けて来た。

「ん? 何か聞きたい事でもあるのか?」

 俺が首を捻っていると、

「このミヤは、マスターの事を何とお呼びしているのでしょうか?」

 えっと…。

「普通にマスターって呼んでるけど…?」

 それが何だって言うんだろ。

「やはり…。私はこのミヤを見た時から、危険な物を感じておりました」「「「おりました!」」」

 お、おお? ナディアだけでなく、アーデ、アーム、アーフェンもか!?

「お前等、口を揃えて危険な物って…何の話だか俺には理解出来無いんだが…」

 それだけで理解しって方が無理があるよな。

「「「「マスター!」」」」

「はいぃ!」

 な、なんだよ口を揃えてそんな大声で…。

「マスターをマスターと読んで良いのは、マスターに生み出された我々だけの権利です!」「「「権利です!」」」

「はっ?」

 何を言ってんだ、ナディア達は…。

「ぽっと出の新キャラが、勝手にマスターをマスターと呼ぶなど、言語道断です!」「「「ですっ!」」」

 ぽっと出ってどこでそんな言葉を…いや、またユズカだな…。

「我々妖精一同は、ミヤによるマスターへのマスター呼びに、断固反対します!」「「「即時中止を求める!」」」

 お、アーデ達が変わったこと言い始めたぞ。

「もしもミヤが呼び方を変えないと言うのであれば、我々が変えます!」「「「…えっ?」」」

 あ、ナディアの主張について来れなくなったな、アーデ達。

「マスター呼びから、『愛しき人』とします!」「「「おぉ!」」」

 いや、ちょっと待て! 何だ、その呼び方は?

「それが嫌なら、即時ミヤのマスター呼びを迅速果敢に変更させて頂きたい!」「「「じんそくかかん?」」」

 俺でも知らない四字熟語が出てきたぞ? それはユズキが元だな。

「いや、まぁ…呼び方って言ったって、皆にはミヤの声が聞こえ無いんだから、どうでもよくないか」

 どうせ俺の頭の中にしかミヤの事は届かないし。

「それでもです! マスターが狐疑逡巡される様でしたら、私達が呼び方を変えます!」「こぎ…しゅんじゅん?」」」

 ほら、またアーデ達がついて来れてないぞ。

 いや、俺もだけど…。


 さぁ、どうするどうすると迫りくるナディアの圧に押され、どうするべかとミヤへと目を向けると…まだ俺の指を見つめていた。

 君、まだ諦めてなかったのか?

「あのな、ミヤよ。俺の事をマスターって呼ぶの止めてくれないかな」

 愛しき人とかナディア達に呼ばれるのは、何かちょっと嫌だ。だったら、ミヤの呼び方を変えればいい。

『…ま…す…た? すまた?』

 おま、並び替えただけじゃねーか! しかもヤバイ方に! 

 お前の声が俺の頭の中にしか届かなくて助かったわ!

「いや、それは却下。別の呼び方で」

 俺がそう言うと、少し考えてから、

『主?』

 …意味は変わってない気がするけど、ナディア達はそれで納得するのだろうか?


「え~、ナディア君達。ミヤが俺の呼び方を『主』とするそうだが、これで問題は無いか?」

 俺がそう発表すると、ナディア、アーデ、アーム、アーフェンは、パチパチと拍手した。

 これで良いって事だよね。はぁ、色々と疲れる日だなあ…。

「ところでトールさま」

 主呼びの発表が終わり拍手も収まった執務室で、マチルダが俺へと声を掛けてきた。

「どうした、マチルダ?」

「いえ、無事にミヤによるトールさまへの呼び方が無事に決まった様でなによりです」

 何だろう、いやな予感がするんですけど…。

「ですが、確かに先ほど何かを却下されてましたね。一体、ミヤはどんな呼び方を提案したのですか?」

 えっ…何か却下した…ああああああああ!

 しまったーーー! 俺、声に出しちゃってたじゃんかよ! 頭の中でやり俊すりゃいいのに!!

「私…気になります!」

 える繋がりですか、そうですか! 

『私達も気になります!』

 いや、ちょっと待とうか、嫁ーずも妖精達も、ちょっと落ち着こう! 

『す…また?』

「ミヤもいらん事言うな! あっ……」

 また声に出してしまった!

「やはり、何か隠していますね、トールさま!」

 マチルダに悟られた!

「ねえ、トールさま。今ここで素直に白状すれば、まだお仕置きは軽くすむと思いますよ?」

 ちょ、ミルシェよ! それは正直に話しても、俺がお仕置きされるって事なのか?

『うふふふふふふふふふふふふふふふふ…』

 あのぉ…全員でその笑い方は、ちょっと怖いんですけど…。

『主…指、舐めても…いい?』

「ミヤはちょっと黙っとけ! …あ、また…」

「「「「トールさま!?」」」」「「「「マスター!?」」」」

 んぎゃーーーーーーーーーー!!  



※ 妖精女王の騎士 ヴィー ≪Knight of the Fairy Queen、Vee ≫ 改訂版

  https://kakuyomu.jp/works/16817330657187983790

  旧作品の設定・文章等を見直して、再投稿始めました

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