第1026話 重要会議?
「では、トールさま。ほんの2泊3日留守にしていただけで、どうして新たな女の子がトールさまの側に侍っているのか、詳しくご説明して頂きましょうか」
とっても怖い笑顔のメリルの前で、俺は正座をさせられていた。
帰宅してすぐ、メリルはいの一番に俺を執務室へと引きずりこみ、正座を命じた。
無論、他の嫁ーずと妖精達もついて来て、俺の周りを取り囲んでいる。
いや、君達は事情知ってるはずだよね? ボーディとかと一緒に説明聞いただろ?
俺が正座すると、すぐにメリルのお小言が始まったのだが、ほんの少し前にも、こんなシチュエーションがあった気がする。
って事は、当然だが俺の横にちょこんと幼女が正座してたりする。
ミヤの着物は俺の知る和服とはどうやら違うらしく、生地には伸縮性がある様だ。
今は和服で器用にも女の子座りしてるし、しかも裾が一切乱れてない。
どういう仕組みかは知らないが、超不思議な着物だ…。
「トールさま、聞いてるんですの?」
俺の腕を離すまいと抱きしめているミヤを何となく見ていると、メリルが激オコになってしまった。
「ああ、うん。勿論、ちゃんと聞いているとも」
聞いてませんでした…とか言える雰囲気じゃない。
「それで、その新しい女の子は何ですの?」
そう訊ねながら俺の顔の前にドアップで迫るメリル。
うっ…その圧で仰け反りそうだが、ここは耐えるところだ。
「あ、ああ、うん。この子はダンジョンマスターが造り出した決戦用特殊兵装で、重戦機LガールMark.Ⅱが正式名称。個体名はミヤだ。人に見えるかもしれないが、れっきとした兵器で、人じゃないんだぞ」
「え、人じゃ無くて…兵器なんですの?」
俺の告白…じゃない、説明にちょっと驚くメリル。
「ああ、兵器だ。例の山向こうの土地ではどんな戦いがあるか分からないからと、ダンジョンマスター達が俺の神具の強化用に造ってくれたんだ。あ、そうそう、メリル用の神具強化用の武装もあるからな」
兵器だから平気だ…とか言ったら、ぶっ飛ばされるかな?
「わ、私にもその様な女の子が!?」
あ、ちょっと言い方を間違えた!
「ち、違う違う! 言い方が悪かった! ちょっとミルシェ、Lシリーズを見せてやってくれ!」
何でミルシェは、メリルの後ろクスクス笑ってんだよ!
お前、絶対にこの状況を面白がってるだろ!
「えっと…はいっ! これがLシリーズです」
そう言ってメリルの前に突き出したミルシェの右の掌の上に、いきなり姿を現したそれは、見る角度によって赤や緑へと変わる、直方体をした物体。
「こ、これは…」
うん、びっくりしてるな、メリルよ。
「これはミルシェ専用のLシリーズ…つまり、神具の個々の能力を補助してくれる武装の一種だ。メリルとユズキ、ユズカ、あとは父さん、母さんと、コルネちゃんとユリアちゃんの分も預かっているから、後で渡そう」
ミルシェの掌の上で現れたり消えたりする、不思議な輝きを持つLシリーズを見ていたメリルが、
「わ、私にもその様な武装が!?」
さっきも同じ様に驚いてなかったか?
ってか、自分の分が無かったりしたら、滅茶苦茶怒るでしょうが…君は…。
「ああ、俺の第1夫人なんだから、当たり前だろう?」
ちょっとだけイケメン台詞を言ってみたんだが、正座では完全にギャグですな。
「そ、そうなんですのね…嬉しいです。しかし、何故トールさまの武装だけが、そんな女の子の姿なんですの?」
「ああ、これはモフリーナ達との連絡係も兼ねているかららしい。あと、この邸の最高戦力が俺だから、それを強化とか何とかとか言ってたな」
連絡係は完全に嘘ですけど。
すると、説明を聞いたメリルが、何を思ったのか超真面目な顔で俺に一言。
「なるほど…。ところで、トールさまはその女の子に欲情されたのですか?」
「誰がするかーーーー!」
どっからそんな話になったんだよ!
何とか納得してくれたメリルに、今夜Lシリーズは渡すと約束をした。
その後、漸く解放された俺は、何故だか執務室からしっしと追い出された。
正座で足が痺れている俺の事などお構いなしに、執務室から追い出された俺と入れ違いに、何故かユズカが召喚されて執務室の中へと。
その手にはミカン箱程の大きさの木箱が抱えられていたのだが、一体何が始まるというのだろうか?
「今から、アルテアン家の重要会議を開催しますので、トールさまは入室禁止です」
中を覗こうとした俺を、マチルダが制止した。
「え、でもアルテアン家の会議なんだよね…?」
何故に俺の家名を冠した重要会議で、アルテアン伯爵家の長である俺が締め出されなきゃならんのだ、何かおかしくないか?
「乙女の秘密会議です!」
マチルダさん…あなた、もう乙女って年齢でも…いえ、何でもございません!
瞬間、マチルダの背後に般若が見えた俺は、不埒な考えを即座に止めた。
何故に俺の考えが読めるのだろうか、我が家の連中は!?
結局、乙女の秘密会議があるとかで、俺は廊下に締め出されてしまった。
「はぁ…仕方がない。父さん達が居る応接室にでも行くか…。どうせお前の事も説明もせにゃならんしな…」
俺は右手に相変わらず黒地の着物を着た幼女をぶら下げたまま、応接室へ続く廊下をとぼとぼと歩くのであった。
あれ? そう言えば、サラとリリアさんも、ミヤの説明時には同席するかもって、事前に考えてたけど、どこ行ったんだ?
※ 妖精女王の騎士 ヴィー ≪Knight of the Fairy Queen、Vee ≫ 改訂版
https://kakuyomu.jp/works/16817330657187983790
旧作品の設定・文章等を見直して、再投稿始めました
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