第992話  金色に輝く…

 この可愛らしい人形…っと言うか、寝ているようにしか見えない和服少女が武装?

 そんで、この淡く輝く水晶が鍵って…一体、何を言ってんだ、ボーディは?

 俺と同じように、箱の中の少女を覗き込んでいた、ユズキ、ミレーラ、イネス、マチルダも、全く俺と同じ感想を抱いた様子で、その視線は、箱の中の少女と俺の手の中の水晶、そしてボーディへと慌ただしく行き来していた。


「ん、何じゃ? どうしたのじゃ?」

 そんな俺達の様子を見ていたボーディが、不思議そうに俺達に訊ねた。

「いや、何って言うのか…この子が武装って…」

 この気持ちを、どう表現してどう伝えればいいのだろう。

「武装じゃが?」

 そんな俺の心の葛藤は、ボーディには伝わって無い様だ。

「ああ、うん。それは聞いたんだけど…この女の子の人形が? んで、これが鍵?」

 水晶を見ながらそう言うと、何が言いたいのかボーディにも伝わったらしく、

「お主はロマンティストなのかや?」

 心底呆れた…違うな、馬鹿にした様な目で見られた。

「ロマンティストって…。武装って、こんな可愛らしいお人形さんじゃないか。そんな言い方って…」

 だて、まじで可愛いんだもん…。

 ユズキだって、そう思うよな? な!?

「あのなぁ、お主が持っておる武装と言うのは、剣じゃとか槍じゃとかのイメージじゃろう?」

「あ、うん。その通りだ。女の子が武装って言われても、ちょっと…」

 お俺の考えてた武装って、もっとメカメカしい感じだったとは言えない雰囲気…。

 俺的には、懐かしのコミック・ボ〇ボンに連載されていた、プラモ狂〇郎に登場する、ガ〇ダムをパーフェクト・ガン〇ムにする時の追加のアーマーとか武器とかを思い出しちゃうんだけどなあ。

 あ、俺だけじゃなく、皆も頷いてるから、やっぱそう考えてるらしい。

「それがロマンティストじゃというのじゃ。武装の見た目など関係なかろうが。要はそれが武装としてきちんと用をなすかどうかじゃろ」

 ボーディの言う事は、確かにその通りなんだけど。

「あと、その水晶は鍵と言うたが…」

「ああ、そう聞いたな」

 確かに、さっき聞いた。

「この人形を呼び出すために必要な鍵じゃ。まあ、人形が錠前で水晶が鍵という事になるの」

「…呼び出す?」

 って、それじゃこの子は、普段は俺達とは一緒に居ないのかな?

「そうじゃ。この人形は、普段はこの次元に非常に近い隣接次元とでも言うべき別の次元…まあ、武装が待機しておる次元じゃから、言ってみれば武装待機次元とでも呼ぶべき次元におるで、人目にはつかぬぞよ」

「武装待機次元って、もしかしてメカ〇元か!? ゴールドラ〇タンかよ! か~〇るんだ、かわ〇んだ~♪ って歌っちまいそうになったわ!」 

「ごーる〇らいたん?」

「めかじげん?」

「歌いそうになった?」 

 それを知っているユズキは、クスクス笑っているが、その他の面々は、俺の言葉に首を傾げていた。

「あ、いや…今言った事は忘れてくれ…」

「う、うむ…」

 ボーディ、空気を読んだのか、今の一幕は忘れてくれる様だ…ほっ…。

 今は不要な前世の知識を表に出す時では、まだ無いな、うん。


「ついでに、お主が創った鎧を身に付けておる家族や協力者達の分もあるぞ」

 武装少女と愉快な仲間たち?

「とは言っても、これはあくまでも武装じゃ。これ単体で戦うことも可能じゃが、本来の使い方は、決戦時に纏った鎧を強化するための追加武装じゃ」

 単体でも戦うことが出来るって……何と言うか、突っ込みたくてうずうずしちゃう設定だな、おいっ!


「えっと、ボーディ様。その子を私達にもくれるのですか?」

 黙って聞いていたユズキも、鎧の追加武装と聞いてわくわくしてる。

 だけど…いいのかユズキ、それはロリ枠だぞ? ユズカが怒らんか?

「うむ、当然じゃ。じゃが…」

 ボーディの言葉が、ちょっと煮え切らない?

「じゃが?」

 あ、ユズキはそう問い返すのか。

 俺は、思わずジャガイモってボケそうになったわ。

「カジマギー、ちょっとアレを持って来やれ」

 ボーディが振り返ってカジマギーに声をかけると、

「は、すでにここに」

 すでに、うやうやしく小箱を差し出す用意の良いカジマギー。

「はやっ!」

 あ、ボーディもあまりの用意の良さに驚いてる…やるな、カジマギー。


「ゴホン…さて、これがソレなのじゃが…まあ、見てみるが良い」

 ボーディがカジマギーから受け取り、ユズキに小箱を手渡しつつそう言った。

 ユズキは受け取ると、すぐに蓋を開けて中身をみるが、かなり微妙な顔。

「ふっふっふ…驚いたかや? それはかなりの自信作じゃ!」

 嫁ーずも、興味深げに覗き込んでいたので、ユズキは小箱をマチルダに手渡した。

 そして箱の中を見た嫁ーずも、同じく微妙な顔。

 え、どうしたん? ってか、その小箱がこの女の子と一緒なの?

「えっと、トール様…ちょっと見てください…」

 困り顔のマチルダから手渡された小箱の中は、金色に輝く直方体の物体。

「どうじゃ、妾達ダンジョンマスターの知識と技術の結晶、最高傑作じゃ! それは金色じゃが他のカラーもあるし、直方体だけでなく円柱状の物も…」

「やっぱ、ゴールドライ〇ンじゃねーか!」

 もう、突っ込まずにはいられなかった!

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