第978話 ただいま…
そうか、俺は徹頭徹尾…っていうか、転生する前から管理局に踊らされてたのか。
「まあ、お主が自分のエネルギーの正しい使い方を理解して使える様になるまでには、もう少し時間がかかるじゃろうがな」
そっか…、まあそれは仕方ない。
「じゃが、今までの話でも語った事じゃが、お主の巨大なエネルギーであれば、何かを創り出す事が可能となった時、とんでもないものが創り出せるようにもなる。まあ、大概の事は可能になるぞよ」
「ボーディの言う、大概の事って…?」
「そうじゃのぉ…もう一個、宇宙でも創り出せるやもしれんな」
Wow! そりゃ、確かに大概の事だな!
「しかし、注意するのじゃ」
「いや、宇宙なんて創らんぞ?」
「そうではない。お主の元となった何かの欠片は、全て見つかった分けでは無い。お主や妾達にとって敵となる者が出るやもしれぬ。確かにお主とほぼ同じ前世を持つ者が多いが、欠片の全てがそうであるとは限らんからのぉ。気を付けるのじゃぞ」
「確かに、そりゃそうだな…。何に気を付けたら良いのか分かんないけど、まぁ気を付けるよ」
そんな話を俺とボーディがしていると、どうやら髪型が完成した様で、モフリーナとモフレンダが寄ってきた。
「どうですか、トールヴァルド様!」
むふんっ! と、超自慢気な顔で鼻息荒くモフレンダを俺の前に押し出すモフリーナ。
モフレンダの髪の毛は、ちょっとゴワゴワ気味だったが、どこをどうやったらそうなるのか分からないのだが、見た目的にしっとりしていて、ボリュームを抑えるように髪の毛のうねる様な癖も大幅に抑えられてナチュラルに流れるセミロングに変わっていた。
一部の髪を前から後ろにかけて編み込み、後ろの首の直ぐ上あたりで赤いリボンで纏められたその編み込みは、真っ白な髪の毛の中で可愛らしく映えている。
紅白? とか考えたら駄目なのだろう。
いや、前髪を揃えたのか、何時もは隠れていた目が露わになると、意外…では無いかもしれないのだが、かなりの美人さんだ。
恥ずかしいのか、ちょっと赤くなった顔でモジモジしているモフレンダではあるが、少し猫背なのは変わらない。
それでも少し伏せた顔から上目遣いで俺を見るモフレンダに、こう声を掛けずにはいられない。
「めっちゃ綺麗だ」
その一言で、更に赤くなった顔を伏せるモフレンダ。
「ジゴロですね」「天然物のスケコマシじゃな」
モフリーナとボーディからの、俺への批評が酷いと思う。
真っ赤になってモジモジするモフレンダと、何故か無言で俺を冷たい目で見るモフリーナとボーディ。
え~っと、俺…そしたらいいの?
「では、概ね話も終わった事じゃし、時間も大分経っておるから、そろそろ戻るとするか…」
「ちょい待ち! 例の薬に関して気付いたんだけど…」
ボーディの言葉に被せ気味に、気になってた事を確認してみた。
「なんじゃ?」
「あの薬ってさ、飲んだ者同士の会話って、どうなるん?」
家族全員に飲ませたとして、話しが通じ無くなるんだったら、意味ないよな。
「そこは安心せい。飲んだ者同士であれば、普通に会話できる様になっておる」
そっか、それはちょっと安心。
であれば、あの薬を家族に飲ませた後、ちゃんと事情を説明できるって事だな。
「では、もういいかや? そろそろ戻るぞ」
結局、最後の最後までモフレンダは恥ずかしがって、モフリーナの後ろに隠れたままだった。
「では、お邸の裏手に戻りますね」
揃って立ち上がった俺達が、モフリーナの指定した場所に集まる。
そして、オフリーナが軽く片手を振ると、あら不思議! 俺の邸の裏庭の扉の前に、俺達は戻ってきた。
いやいやいや、出発は邸の応接室の中だったじゃないか!
しかも、もう辺りは暗いぞ? これって、危険なヤツなんじゃないのか!?
俺の顔色が青くなっているのを敏感に察したのか、
「妾達は失礼させてもらうとするかのぉ。まだ全てを話したわけでは無いが…」
「ええ、そうですね…それではトールヴァルド様、本日はこれで失礼します」
「…また…ね…」
おい、ボーディ、モフリーナ! 逃げる気か?
モフレンダは…うん、またね…じゃねーよ!
ってか、まだ話してない事があるのかよ!
「お、おい! ちょっと待て…」
っと言っている間に、まだ空いていた例の扉の中へと、そそくさと逃げ込んで扉を閉めてしまった。
引き留めようとする俺のてが虚しく空を切り、俺の声だけが響く邸の裏庭。
当然だが、俺の帰りを待っている屋敷の住人の耳に入らないわけが無い。
「あら、遅いお帰りですね、トール様」
何時間には俺の背後に立っていたマチルダのその声は、俺の頭から血の気を引かせるには十分な威力を持っていた。
「た、ただいま、マチルダ…」
「応接室から、何時の間に裏庭に?」
その微笑みが怖いんですけど…
「あ、いや…ほら、大切な話なんで、ダンジョンの中へと移動したんだよ…あははははは…」
「そうですか。皆様に、お茶でもお持ちしようと応接間にお伺いしたら、誰も居られなかったので…ええ、私たちに何の断りもなく、誰も…」
「あ、うん…ごめんね、お茶を無駄に…」
「いえ、残された者で寂しく頂きましたとも。ええ、寂しく…ね」
そこで更に笑みを強めないで! めっちゃ怖いから!
「それでは、何の断りもなく黙って出ていかれて残されてしまい、とてもとても寂しい思いをした者達が手ぐすね引いて待っておりますので、連行しますね」
れ、連行!?
「……はい…」
マチルダが軽く振り返ると、ドワーフメイド衆が裏口からワラワラと出て来て、俺を取り囲んだ。
「では、参りましょうか」
口元は笑ってはいるが、目が笑っていないマチルダが先頭に立って、裏口から邸へと。
その後に続き、ドワーフメイド衆に囲まれて逃げ場のない俺はとぼとぼと歩いてついて行く。
メリルとミルシェの妊娠が発覚して、より一層妊娠欲が高まる嫁ーずの元へと、俺は連行されるのであった。
俺…今夜は眠らせてもらえるんだろうか?
そんなことを考えながら連行さる俺の小脇には、あの薬が入った小箱があった。
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