第975話  ナノマシンだよね?

 その後、ボーディから長い話を聞いた。

 ひよこ達は、普通に悟りを開いた者達の保有するエネルギーなど耳クソ程度に感じられるほどの巨大なエネルギーを持っていたから、魂魄解放庁の管轄下に入るのを拒否出来た…何かシステム的にどうとか言ってたけど…らしい。

 そんなひよこ達よりも巨大なエネルギー保有者である俺は、確実に魂魄解放庁の管理課には収まらないそうだ。

 過去に悟りを開いて解脱した偉い人達は、一般人よりも魂のエネルギー量こそ多い物の、俺やひよこのそれと比較すれば、数千分の一程度なんだとか。

 んで、魂魄解放庁の管轄下に入る = 輪廻転生の輪から外れる と言う事であり、 全宇宙のエネルギー総量という分母から引き算されるそうで、特に輪廻の輪から外れても問題は無いのだとか。

 俺やひよこ達ほどの巨大なエネルギーともなると、かなりの問題が起きる可能性もあるそうだが…。

 あと、どうも異世界のラノベや漫画でアジア系の人が多く転生や転移をしているのも、そう間違いでも無いらしい。

 何らかの道を極めんとするのは、アジア系が多いから、その影響だとか。

 そう言われてみれば、空手や柔道も、欧米ってパワー…つまり筋力の方を重視してるもんな。

 結構、技とか型って軽視されてたっぽいから、道を極めるとかいう発想が無いのかもしれん。

 そもそも茶道や華道って無いだろうし…。

 中国とかだと少林寺ってお寺の僧侶が功夫やってたけど、なるほど武道って禅に通ずるものがあるのかもしれん。

 ふむ…道を極めるか。

 この道を行けば どうなるものか 危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし 踏み出せば その一足が道となり その一足が道となる

 迷わず行けよ 行けばわかるさ ダーーーーーーー!

 しか思い出せんが、なるほどこの詩の内容も、もしかしたらもしかするのかもしれないな…。

 

 まあ、そんな事を長々と話していたわけだ。

 モフリーナは、ずっと不貞寝してたけど…。

 

「お待たせしました」

 ボーディとの話がちょうど一段落したところで、モフリーナが戻ってきた。

 何か小さな箱を抱えて。

 その箱何ですか?

「おお、ご苦労じゃったの。例の物も?」

「はい、ばっちりです」

 ボーディとモフリーナの間で、何やら怪しい会話が。

「お帰り…んで、例の物って?」

 いや、気になるだろ? 誰だって訊くよな? 

 その手に持ってる箱の中身は何なんだよ。

「ただいま戻りました。この箱の中身ですか? えっと、ボーディ様…よろしいでしょうか?」

「ああ、構わぬ。渡してやれ」

 鷹揚にボーディが応えると、モフリーナは小さく頷いてはこの蓋を開けた。

 そして無造作に中に手を突っ込み取り出した物は…ナニソレ?

「これは、超極小機械式疑似分霊装置とでも言ったら分りますでしょうか?」

 いや、全然意味わからん!

「私が持っているこの小さなプセルの中には、最初にこれを体内に取り込んだ人の魂のエネルギーの一部に強制という形で体内に留まり、特定の動作をする機会であります。つまり、体内に分け身を造るような物ですね」

「分け身…? それってもふりんとかカジマギーみたいな?」

 でも、それってカプセル怪獣…じゃない、ナノマシンだよね?

「いや…分け身は幼女型が…」

「モフリーナの説明の通りの優れ物じゃ。お主の希望などそもそも考慮にも値せぬわ!」

 ボーディに怒られた…。

「トールヴァルド様。これは管理局からの監視を逃れる為に必要な物です。これを体内に入れた者の思考を常に監視し、危険な情報などを別情報に自動的に変換して管理局に流してくれる物なのです」

「ん?」

 どゆこと?

 俺が首を捻っていると、ボーディが分かりやすく解説してくれた。

「つまりじゃな…そうじゃのぉ…お主に分り易く説明するとじゃな、自動翻訳装置を体内に取り込んだと考えるのじゃ」

「ほう?」

「その自動翻訳装置は、あえて間違った翻訳をしてくれるのじゃ。そう、管理局が重点的に監視しておるワードなどをな」

「おぉ! つまり、管理局が俺に知られたら都合の悪い情報を俺がもし考えたりしても、違う内容にそれを変換して管理局に流してくれるって事か?」

「うむ、理解が早くて助かるわい」

 これは結構凄い物なんじゃないか?

「完全に肉体や精神には影響はありません。ただ、この装置の特徴として音声まで偽情報に変換されますので、管理局の関係者に話を聞かれますと少々問題が起きます」

 音声まで変換するのか、そりゃすげえ! でも、問題って?

「唇の動きと音声が違う現象が起きてしまいます」

 あ、唇の動きか…なるほど。

 サラはともかく、リリアさん辺りは持ってそうだな、読唇術。

「トールヴァルド様のご家族分、ユズキとユズカ分、妖精達やペット達の分まで用意してあります」

「ああ、ありがとう…でも、そんなに数いるかなあ?」

「現在、100個ほど製造完了しております。管理局の手の者以外、全員に飲ませるのがよろしいかと」

 モフリーナが、めっちゃずずいっと迫ってきた。

 顔、怖いんですけど…。

「ここを出る前に、お主は飲め。それを確認した後、本日の会談は終了じゃ」

 ボーディの顔も怖いんですけど…。

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