システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

第974話 バグでは有りませんよ？

　俺…悟りを開けるような事をしてたっけ？

　ってか、間違いなく知ってるって言われても、全然そんな覚えもないんだが？

「まあ、分かり難いかも知れんのぉ。簡単に説明すると、その方法とは鍛錬じゃとか修練じゃとかお主が言っておる、空手とか呼んでおる武術の動きじゃな」

「空手の…型の事か？」

　そうだよ…な？

「うむ、それで合っておる。面白いことに、お主の前世で住んでおった地球という所は、何故かどの次元の地球であっても【動禅】の道を確立した特異な場所なのじゃ」

　…へ？

「多くの次元の知的生命体においては、様々な偶然が重なって動禅へと至ることは有るが、基本的には【静禅】でしか悟りは開けぬ。しかし地球と呼ばれる世界に関してだけは、多くの武術や様々な様式・技を究極までつき詰める求道的な文化が発達しておっての…」

　あ、そう言えば…さっきひよこ達が前世でしてたのって…。

「あ奴らは、それを道と呼んでおった。どうやら主にアジアとかいう地方で盛んな様じゃの」

　そうだけど…。

「奴らが道と呼んでおったそれらは、全ての所作をつき詰めるということは、星や宇宙と一体となることが究極の完成形だとか言っておったが、それがすなわち悟りなのじゃ。覚えが無いかや？」

　まさか空手の型が？　あ、でも…いわれてみれば、自分の動きに完全に集中してた時は、何か世界と一体化した様な、世界に溶け込む様な感覚が…。

「あ奴らは、道は違えどそれぞれが頂きを目指しておったと言う事なのじゃろうのぉ。まあ、実際にそこに辿り着ける者は、ほんの一握りのはずじゃ。それをひよこ共は別々の次元で成し遂げたのじゃ」

　なるほど！

「それで…じゃ。ひよこ共は、転生した後、前世で続けておった道を極め、悟りに至ったのじゃが…お主だけはその域に達しておらぬ」

　悪かったな！

「別にお主が雑念だらけじゃとか、煩悩まみれじゃとかは言わん」

　ほっとけ！

「妾達は、それは管理局が干渉しておるからじゃと睨んでおる」

　そうなん？

「お主、心あたりは無いかや？　何かに手が届きそうなときに限って、あの管理局に邪魔された…とか」

「ある！」

　思いっきり、今までも心当たりが有る！　有りすぎる！

「やはりのぉ…。お主が並列思考だの、脳波遮断の玩具だのを造っておったりしておったから、もしかしたらと思っておったが…」

　そうだよ、確かに俺はあと一歩で何かを掴めるっていういい時に、何故か管理局絡みで邪魔されてきた覚えが有る！　

「他の奴らは無事に悟りを開き、輪廻転生の輪から抜け出すことができたが、お主は違った。それどころか、お主はしずてむバグで輪廻転生の輪から外れたと嘘を信じ込まされておった。っとなると、お主は管理局にとって、かなり重要な存在じゃということになるの」

　そうか…俺って、システムバグで転生したわけじゃなかったのか…ん？

「ちょっと待ってくれ。んじゃ、ユズキやユズカもそうだけど、お前達に管理を任せている大陸に転移してきたのって、システムバグじゃないのか？　システムのバグって、滅多に無いって聞いた気がするけど、めちゃくちゃ多い気が…？」

「トールヴァルド様、それはバグでは有りませんよ？」

「ち、違うのか？」

　いや、そうは言いますけど、モフリーナさん…実際に…？

「それはのぉ…何かを隠すために、わざとやった事じゃな。よく思い出してみよ、その転移前後に何か大きな事件とか起きてはおらんかったかや？」

　大きな事件って、何かあったっけ？　いや、待てよ…？

「もしかして、恐怖の大王カズムに大悪神テスカトリポカ…の事…か？」

　いや、でもユズユズは恐怖の大王が現れる大分前に転移してきた様な気がするから違うか？

「ふふふ…それじゃよ。管理局は、そんな巨大エネルギーを持つ奴を、意図的にこの世界に送り込んだのじゃ」

「そ、それじゃ…その余波でシステムバグが？」

　ユズユズもパンゲア大陸の人達も、結果的には巻き込まれ転移だったのか…。

「いや、違うぞ。彼奴等を転移させる準備じゃな。簡単に言えば試験や実験とでも言ったら分り易いか？」

「えっ？　それじゃ、管理局がその為だけに無関係な人達をこの世界に転移させたってのか！？」

「うむ、その認識で間違いない。どうじゃ、そろそろお主も、本格的に管理局が信じられなくなってきたじゃろう？」

　悪い笑顔でそいう言うボーディだが、目だけは笑っていなかった。

「お主があ奴の術中に嵌っておるからこそ、こういう視点で状況を正しく判断する事が出来なかったのじゃろうな。じゃが安心せい。先にも言ったが、今のお主に絶対必要な物を用意しておる。モフリーナ、準備してまいれ」

　ボーディの言葉にモフリーナは、「はっ！」と短く返事をした瞬間、その姿にモザイクがかかったようにぼやけ、そして消えた。

　急にモフリーナが消えたもんで、モフレンダの頭がカクッとソファーに落ちて、めっちゃ不機嫌になってたけど、俺の所為じゃないよ？