第967話  根拠?

 って、いやいやいや、そこで納得しちゃ駄目だろ、俺!

「ひよこの中身が人だってのは分った。分かったけど、何でそれが俺なんだ? それに、今日の本題は例の土地の魔法陣とか湖とかの報告とかじゃ無いのか?」

 まさか、今日の本題がひよこって事は無いよな? 無いよな?

「うむ、今日の本題は正しくそれだぞ?」

 ほっ…それじゃひよこは置いといて…。

「しかしその話をするには、ひよこは避けては通れぬのじゃ」

「何でだよ! 避けろよ、ひよこぐらい!」

 何故、全然無い胸を張ってんだよ、ボーディ! 

「避けれぬのじゃ」

 何で2度も言った!?

「じゃから落ち着けと言うておろう? ひよこに接触したからこそ、あの地の全てどころか、管理局長の企みさえもが明らかになったのじゃから、そこから話すのは当然じゃろう?」

 俺の中にある何かが急速に冷やされた。

 管理局長の企みとな?

「そこんとこ、もちょっと詳しく!」


「ああ、それは良いのじゃが、もう一度確認するが…お主、輪廻転生システムのバグによって転生したのじゃったよな?」

 俺は頷いた。それは間違いない。

「エネルギー変換玉を手土産にされたのじゃな?」

「手土産っていうか、便利グッヅだとか粗品だとか言われた気が…」

「エネルギー変換玉を使うには、お主が内に秘めておるエネルギーを使うと?」

「ガチャ玉を手にしてから、大分経ってから、サラにそう聞いたけど…」

 そこまで答えると、うんうんとボーディは頷いて、話しを続けた。

「そしてエネルギー変換玉で創り出す物には、ある程度制限がある…で、間違いないかや?」

 確か、サラが許可だとか認可だとかが下りないとか言ってたから、これもYESだよな。

「やはり、お主は管理局長に完全に騙されておるな」

「騙されてる?」

 いや、あの嫌味っぽい奴は何となく気に入らなかったけど、別に騙されてるって事は…。

「そうじゃ。そもそも、局長はお主は転生などしておらん」

「………え、何だって?」

 俺の耳がおかしくなったのかな?

「お主は、局長に転生させられておらんと言うたのじゃ」

「え…でも、前世の記憶が…」

 アニメとか特撮とかラノベとか…空手をしてた経験も記憶も…。

「無いじゃろ? よく考えてみよ。細かな部分を思い出そうとしても、思い出せぬのじゃろ?」

 名前とか…確かに思い出せない…。

「それはのぉ…言い難い事じゃが、局長によって植え付けられた偽の記憶なのじゃ」

「偽の記憶? え、だって…産まれる前から、俺には意識もあった…」

「そうじゃ。まだ胎児の頃のお主の肉体に、あの男に都合の良い記憶を植え付けたのじゃ。とは言っても、全てが他人の記憶という訳でも無いのじゃ」

 …?

「局長は俺を転生させてないけど、俺は転生してて…って、だとしたら俺の記憶は? ボーディを信じれば局長に都合の良い記憶が…あれ、何かこんがらがってきた…」


「まあ、順を追って説明しよう。まず、お主に前世があるのは間違いではない。しかし、それは輪廻転生システムのバグによって輪廻転生の輪から外れたからではないという事じゃ」

 ん?

「お主が転生したのは、お主自身が輪廻転生のシステムを拒絶したからじゃ」

 んん?

「よいか、よく聞け。そもそも妾はおかしいと思ったのじゃ。輪廻転生システムとは一体何じゃ?」

 あ、それなら分かるぞ。

「全宇宙的に、死んだ人の魂の記憶を消して、その保有エネルギー量で何かに転生させてるシステムなんじゃねーの?」

「うむ、概ね合っておる」

 だれ? 俺って記憶力は確かなんだよ! 

 前世の嫁とかの名前は思い出せないけど…。

「それならば、何故お主は輪廻転生システムのバグでこの世界に記憶を持ったまま転生したと信じたのじゃ?」

「それは、輪廻転生システムを管理している局長が言ったから…」

 最初は神様だと思ってたんだよなぁ…懐かしい…。

「で、何を根拠にそれを信じたのじゃ?」

「そう言われたから…あれ?」

 根拠? 

「根拠など無かろう?」

「確かに…無い…」

 そう言われてみると、何で俺はシステムバグの所為だって信じてたんだろう?

「実際、トールヴァルド様はこの世界に意識や記憶の一部を持ったままで御生まれになられたのですから、信じてしまったのも無理は有りません」

 俺が困っていると、すかさずモフリーナからフォローが入った。

「…盲信も理解出来る…」

 モフレンダもフォローしてくれてるのかな?

「それこそが、あ奴の術中にお主が嵌っておる証拠じゃ」

「へっ?」 

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