第909話  んんん?

 翌朝、いつもの事なのだが、俺はヘロヘロになりながらも、ホワイト・オルター号から降りて、父さんの邸へと向かった。

 目的は当たり前だが、ナディア達の様子を見る為。

 昨日の様子から考えても、まず容態が急変するとは考えにくい。

 もしも急変していよう物のならば、夜間であろうとも付きっきりで見ていてくれているメイドさんが知らせてくれてただろう。

 ちなみに、ホワイト・オルター号を降りたのは俺一人。

 嫁ーずは、昨夜の激闘で全員ノックアウトさせておいた。

 俺も成長したもんだよ…うんうん。


 さて、父さんの邸では、朝も早くからメイドさん達が忙しそうに動き回っていた。

 どうやら俺達の朝食の準備と、ナディア達の看病のためらしい。

 俺が『嫁ーずは、まだ当分起きて来ないので、朝食はゆっくりでいいよ』と伝えはしたのだが、仕込みなのかな? だけは、しっかりとしておくそうだ。

 本当にご苦労様です。

 そんなメイドさん達を横目に、ナディア達が横たえられている部屋を目指して、階段を上がる。

 ここは、懐かしくも俺が幼少期を過ごした部屋。

 自領の邸に引っ越した後は、来客用の宿泊用にリフォームされていたらしいのだが、入り口の扉は昔のまんまだ。

 そんな懐かしい部屋の扉をノックすると、中から巨乳メイドさんから返事があり、扉を開けてくれた。

 俺が部屋の中へと足を進めると、上半身をベッドから起こしたナディア、アーデ、アーム、アーフェンの姿が。

『マスター!』

 俺の姿を認めた4人は、声を揃えて俺を呼ぶ。

「こらこら、大きな声を出さない。メイドさんも、看病有難う」

 ちなみに、俺はメイドさんの名前なんて、いつもの如く知らん! 

 下手に女性の名前とか覚えると、嫁ーずが怖いんだよ…察してくれ…。

 ベッドから立ち上がって俺を迎え様とする妖精達を手で制した俺は、

「まだ起きるな。少なくとも今日一日は安静にしていろ」

 と、ベッドに横になる様に言うと、4人は素直に横になる。

 こんな時だけは、俺の言う事を素直に聞くのね、君達…。

「まあ、ちょこっとだけ話を聞かせてくれるかな」

 扉の近くにあったメイドさんが看病のために持ち込んでいたであろう椅子を引き寄せ、俺は全員の顔が見渡せる場所にどっかと座った。


「なるほどなぁ。おおよそ蜂達の証言と一致するな」

 4人の話を聞く限り、事前に蜂達から聞き取りしていた内容とほぼ同じだった。

 違ったのは、例のひよこ。

 あ、違うわけではないのか…蜂達はひよこの大きさについては、何も言ってなかったからな。

 ナディア達が遭遇したひよことは、なんとアーデ達とほぼ変わらぬ身長だったそうである。

 ん~~~っと、天鬼族3人は、前世地球でいう所のJCぐらいの見た目なので、身長は150cm前後。

 それと変わらない身長のひよこって、デカすぎじゃね?

「あ、それとマスター…そのひよこの頭には、角みたいな長い1本の毛が生えててました」

 アームが思い出したようにそう言うと、

「確か、赤色のとんがった毛でした…あれ? あれって、毛なのかな?」

 アーデも、そう証言する。

「毛にしては靡かなかったけど…角?」

 アーフェンは角かもと推測? している。

「私にも角の様に見えましたが…それにしても黄色いひよこの身体には、ちょっと不釣り合いなほど長かった気が…」

 ナディアの記憶を思い出しつつ、そう答えた。

 えっと…隊長機のマルチブレードアンテナかな? 

 だとしたら、量産型のひよこがいたりして…な~んてな。

「あとは、多分蜂達の報告と違いはないかと思います。私達には、あの巨大な陣が何をするための物なのか分かりませんでした」

「そうか…」

 ナディアの証言を聞いた俺は、それしか言う事が出来なかった。

「あ、そう言えば…」

 俺が考え込んでいると、ふと思い出したようにアーデが、

「あの陣に足を踏み入れた瞬間に、身体から力が一気に抜けた気がしたんですが」

「うん?」

「私が足を踏み入れたから光ったのでしょうか?」

 えっと、どゆこと?

「ああ、そう言えば確かに! 私も足を踏み入れた瞬間でした!」

 アームも、

「確かに、私も1歩足を踏み入れた瞬間に…」

 アーフェンも、

「私もですが…おかしいですね…」

 ナディアも同様であったと証言したのだが、それの何処がおかしいんだ?

「私達は全員がバラバラに山向こうの森林地帯を調査していたのです。ですから、全員が同時に陣を踏む様な偶然は…」

「え、バラバラに調査してたのか? 一緒じゃなく?」

 こりはびっくり!

「はい。全員がバラバラです。これは間違いありません」

「ちょっと待て、ナディア。俺達が救助した時、お前達は全員一緒だったんだぞ?」

 確か、ナディアのシールドに包まれたまま漂流していたんだ、海を。

「マスター…そう言えば…」

「どうした、アーム?」

「あの陣が光った時、何故かアーデとアーフェンと同じ場所に居た気がします。その後にリーダーが来たような」

 リーダーって、ナディアの事かな? 4人でアイドルグループでも結成したの?

「あ、私の周りに居た蜂達も一緒だった気が…」「あ、それ私の所も!」

 アーデとアーフェンもそれに同意し、ついかの情報も付けてくれた。

「言われてみれば、私も何故か3人が居たので、必死に全員を手繰り寄せて結界で覆った様な…」

 ナディアも頤に指をあてて天井を見つめながらそう言った。

「う~~む。つまり、その陣に足を踏み入れたタイミングはバラバラだったが、何故か同じ場所で4人は出会ったと。あ、ついでに蜂達もか。んで、いつの間にか海のど真ん中に放り出されていたと?」

「はい、そうとしか考えられません。私がマスターに救助要請をしたのは、全員で一塊になった時…あれ? でも、蜂達はぶんぶん飛んで集まって来てた様な…」

 んんん? 何か、謎がますます深まった気がするぞ?   

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