第908話 意外と…?
それは、輪廻転生管理局での分類上、196,811番次元と呼ばれる世界にある地球の、日本という国の出来事。
大河芳樹という地球においては、ごく普通の一般人の男性が命を落とした頃。
もしくは、同じく第2,243,287次元と呼ばれる世界のとある実験星に、トールヴァルドが生を受ける少し前の出来事。
いや、実際には時間など関係ないのかもしれない。
輪廻転生管理局の局員である某局員は、とある計画を思いついた。
それは、トールヴァルドという、とある神にも等しい者の魂の分け身を入れる為の器を生み出す計画。
第2,243,286次元にある、とある実験星は、すでに輪廻転生管理局が管理局たる最も重要なシステムの一部が暴走、もしくは崩壊する寸前であった。
とは言っても、そうなってしまうまでに数百年以上はゆうに掛かるのだが、そんな時間など全時空の輪廻転生を管理する彼等もしくは彼女等にとっては、大した問題ではない。
しかし、歴史ではすでにトールヴァルドは生れ存在している世界。
なので、第2,243,287次元という、更なる別の次元において新たなトールヴァルドを生み出そうという計画なのだ。
もう、第2,243,286次元の輪廻転生システムの崩壊を止める事に時間と労力を費やす事を、輪廻転生管理局としては無駄と判断したからなのだ。
解放魂魄統轄庁の一部所でしかなかった、輪廻転生管理局。
だが、その管理局では、秘密裏に実験が進んでいたのだった…そう、無数の次元世界において…とある実験が…。
「って感じのサブストーリーだったら、バレても責任は局長って事にならないかなぁ?」
長々と語っていたサラの話を聞いていたリリアは、呆れた様な顔をし、
「その、筋も通っておらず不合理で辻褄も会わない嘘話で、一体誰が納得すると?」
ため息と共に言葉を吐き出す。
そんなリリアの表情を見ているのか見ていないのか、サラはさらに話を続ける。
「いや~、この世界で輪廻転生管理局とかシステムの事とか知ってるのって、大河さんとダンジョンマスター達じゃん。だったらバレた時の準備として嘘話も必要じゃないかなぁ~って」
「まあ、それはそうかもしれませんが、あの穴だらけの嘘話で誰も彼もが納得すると、本当に思ってるのですか?」
「だからこそ、局長に内緒で送り込んだんだけど?」
局員たるサラが何やら不穏で問題のある発言をしている。
「ふむ、なるほど。確かに無数の実験星を管理している局長であれば、意外と気付かないかもしれませんね…。しかも、この世界を模倣してこっそりと造り出したあの星もある事ですし、もしかしたら…」
「でしょ、でしょ!? あっちの星を造るのも苦労したんだから。まあ、必要なエネルギーは結構簡単に集まったけどね…大河さんのおかげで」
「でも、ダンジョンマスター達はどうでしょうか。誤魔化せるかもしれませんが。ところで、まるで1人で造ったみたいなことを言いますが、私も結構手伝ったという事を忘れたのですか?」
片眉を吊り上げて、不機嫌そうに宣うリリア。
「もちろん覚えてますって! まあ、情報移送システムの暴走で問題も多々ありましたけど…あれの運用はリリアの分担のはずだけど?」
「いえ、そもそも基幹システムの構築はあなた…サラの担当でしょう? それにテスト運用まで完了したと聞いてましたけど?」
リリアの反撃にぐうの音も出ないサラ。
「こっちの過去にも多大な影響を与えてしまいましたし、最近では例の妖精達にまで。あまり派手にやりすぎてしまうと、局長にバレてしまいますよ?」
「むぅ…ちょこっと自重します」
少しばかり俯きかけたサラの言葉を聞いたリリアが、更なる追い打ちをかける。
「いや、自重じゃ無くて、慎重に事を進めなさいと言っているのです。…まあ、貴女には身長が足りませんけど…」
「今…ぼそっと、身長って聞こえた気がするけど? けど?」
「気のせいです。………胸のサイズも足りませんが………」
胸を張って、しれっとサラを見下す発言をするリリア。
「あんた、間違いなく私の胸を見ながら、何か言っただろ!」
「被害妄想です。空耳アワーです…これだから幼児体型は…」
「今、絶対に幼児体型とか言った! 絶対に言った!」
「絶壁ツルペタ体型なんて、一言も言ってませんが?」
「おま、もっと酷ぇ事いってんじゃねぇか!」
「事実ですが、何か?」
「喧嘩売ってんだろ!」
「はぁ…胸に栄養が足りないだけでなく、脳みその栄養も足りないのですね、サラは…」
「何でそうなるんだよ!」
その後も、トールヴァルドの地下室では、ぎゃーぎゃーとメイド服の2人が騒いでいたのだが、さて…この部屋は、一体どの次元のトールヴァルドの邸の地下にあるのだろうか…。
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