第906話  自業自得

 元気よく返事をしてくれたとは言っても、それはただ俺の前で表面的に取り繕っただけだったのかもしれない

 何故なら、その後何度かナディア達の様子を見て、邸でメイドさん達の用意してくれた晩飯を食った後は、嫁ーず全員に引きずられるようにホワイト・オルター号へと引っ張り込まれたからだ。


 俺との話の後、嫁ーずは父さんの邸の中では気丈に普段通りの姿でいたのだが、それに耐えられなかったのかどうかは分からないが、飛行船の俺の寝室の中では俺に全員がしがみ付き、結構夜遅くまでぐずぐずと鳴いていた。

 なかなか可愛い所もあるなぁ…などと、ちょっとキュン! って感じていたのが悪かったのか、気付くと何故か泣きながら全員で協力して俺を押し倒し、着ている物を剥ぎ取られていく。

「お…おい、何してんだよ!」

 そんな嫁ーず達に声を掛けたが、全員で声を揃えてとんでもない言葉を返して来た。

『着たままします?』

 ……いや、そりゃ脱ぎますけど…。

 君達、未だに涙の後が残ってますけど…それって、もしかして嘘泣き?

 もしかして、俺…君達のその涙に騙されちゃった?

 え、本当に悔しくて悲しくてやりきれない感情を我慢してたけど、俺の顔を見て声を聞いて、我慢できなくなった?

 それは、信頼してくれてるって感じがしてすごく嬉しいんだけど…でも、涙流しながら俺の服脱がしてない?

 え、今度は人肌が恋しい? 温もりが欲しい? どこの歌謡曲だよ!

 え、ちょ…メリル何すんだ…って、ミルシェもミレーラも、何で脱ぐ!? おい、マチルダ…はもう脱いでるのか!? イネス、で拳をゴキゴキ鳴らしてんだよ! 

 お前等、さっきまでの泣き顔はど行ったんだ!?

 何で泣き笑い…いや、完全に笑い顔だよな? だよな!?

 あ、ちょ…俺まだ風呂入ってないんだけ…ど…あ”ぁ”ぁぁ”ぁぁ”あ”ぁあぁ”…………。


 女の涙を完全には信用してはいけない…時には嘘もあるのだ…。

 信用しすぎると、俺の様になるかもしれない。

 そこ! 羨ましいとか言うな!

 5人全員が涙を流しながら迫ってくる状況を想像してみろ!

 大変だとか思っただろう? 思ったよな? 

 爆ぜろとか思った奴もいるかもしれんが、滅茶苦茶面倒なんだからな!

「何が面倒なんですか?」

「え、いや…この先の事がね…面倒だなぁって…思っただけですよ、メリルさん?」

「ですよねぇ。もしも私達が面倒とか思ってるなら…」

「…泣きます…よ?」

 ミルシェにミレーラは、絶対に俺の心を読んでるよな!?

「トール様は、意外な所で初心ですからねえ。…まだこの手は使えるかも…」

 おい、最後に何かボソッと言わなかったか、マチルダ!

「水分補給しなきゃな」

 イネスよ、それは泣いたからか? それとも運動の後の水分補給的なものなのか?


 俺の寝室の中での1対5のプロレスごっこは、日付が変わって結構な時間が過ぎるまで続きましたとさ。



 その頃、第9番ダンジョンのとある一室では、3人のダンジョンマスターによる極秘の話が進んでいた。

「モフリーナよ、早速領域を伸ばしたい所なのじゃが…」

 コウモリの様な羽を持った金髪ロリ少女が、豊満な胸を揺らすネコ耳の女性に声を掛けると、

「今回は、急いては事を仕損じる…と言ったところでしょうか。例のひよこは、ほぼ間違いなく、管理局から送り込まれた者でしょうが、蜂達の報告を見ていると、それよりも問題なのが魔法陣の様な物…ですね」

 言わずもがな、コウモリ金髪ロリのボーディとネコ耳巨乳のモフリーナである。

「うむ。そもそも、そのひよこが敵か味方かが、さっぱり分からぬ。魔法陣は間違いなく管理局であろうな。この世界の者達が正確に巨大な陣を森に造り出す事など不可能じゃ。トールヴァルドの様に上空より正確に地上を測量できる手でも使わねば不可能じゃからのぅ」

「確かに…。彼が転生する前の世界でも、古代の巨大なジオグリフがいくつか発見されていたそうですが、あれもいくつかは管理局による物でしたし」

 驚くべきことに、地球で数百も発見されている地上絵のいくつかは、管理局による物だと話す2人。

「現地人が模倣したものもあるやもしれんが、それが良いカムフラージュなっておるで、事の本質はまるで見えぬじゃろうのぉ」

「そうですね…木を隠すなら森の中ですね」

「うむ。彼奴の前世の文化ではジオグリフの詳細を解明は出来ぬじゃろう。なにせ、妾達の類型が存在しなくなった世界故にな。しかし、ここには妾達が居る」

「はい、その通りです。輪廻転生管理局の嘘の報告によって、解放魂魄統轄庁を言葉巧みにみ騙しダンジョンマスターを撤退させたあの世界とは違います。この世界には私達が残っておりますから…ね、モフレンダ」

 何故かヒツジのくせに猫背で、ネコ耳巨乳ダンジョンマスターの影に隠れていた白髪天然パーマの獣人のモフレンダ。

 彼女に声を掛けると、あまり大きい声ではないがはっきりと言葉を口にした。

「…私は管理局の陰謀で、長い間山の天辺に閉じ込められた…許さない…」

 それを聞き大きく頷くボーディも、

「うむ、妾もじゃ。まさか下水道の下に閉じ込められるとはのぉ…。管理局、やりよるわい」

 と言うが、モフリーナとモフレンダは揃ってこう言った。

「それは自業自得では?」「…自業自得…」

「何でじゃーーーーーー!」


 第9番ダンジョンのとある一室では、コウモリ羽の金髪ロリの叫び声が響き渡ったとか。


 最近、こんな締め方多くないか? By 天の声

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