第885話  憧れたんだ

 そういや、蜂達って独力でここまで帰って来れるのか?

 え、クイーン、どうした? インク壺なんて持って来て…んんっ?

 前足をインクに浸けて…ああ、地図の時みたいに、何か書くつもりなんだな。

 えっと、何々…『部下は、ファクトリーから発信しているビーコンを辿って戻ってくるから、大丈夫』っとな。

 なるほどなあ、上手く出来てるんだな。

 ちなみに、俺がお前達を創造した時に、そんな機能を付けた覚えはないんだけど。

 『最初から搭載されてた機能』って、そうなんだ。

 まあ、確かに遠く離れて戻って来れなくなったら大変だもんな。

 管理局が気をきかせてくれたのかな?

 ところで、あとどのぐらいで蜂達が帰還するか分かるか?

 『不明。だけど、信号の強さから、明日にはたどり着ける程度の距離』…か。

 うん、取りあえず蜂達が帰ってきたら教えてくれ。

 そんで、帰ってきたら、ちゃんと労ってやるんだぞ。

 『ファクトリーに帰還したら、自動的に1日でメンテナンスは完了』って、いや…お前…メンテナンスって言い方…。

 確かに、ファクトリーの機能って、蜂達の格納、修理、増産って創造したけれど、労うのはクイーンの仕事なんだぞ?

 蜂達が怪我とかしてたら、そりゃファクトリーで修理? 治療? も必要だけど、せめて『お疲れ様』ぐらい言ってやれ、な?

 理解してくれたか? うん、それは良かった。

 んじゃ、任せたからな。

 

 そっかぁ…ファクトリーはビーコン発信してるのか…知らんかった。

 確か、あの蜂達は、俺がワイバーン退治の時に創造した物。

 ビ〇トとかファン〇ルの様に、脳波で意のままに操ってオール〇ンジ攻撃でワイバーンを仕留めようと思ったけど、異世界でメカメカしいのは違和感ありまくりだからってので、モチーフに蜂を選んだんったよな。

 だけど、何故か俺の脳波での指示はクイーンに届き、それが蜂達に届くって形になっちゃった。

 何でだろうなあ…もしかしたら、昔はイメージ力が足りなかったのかもしれない。

 まてよ…だとしたら、俺の変身ベルトも、もしかしたら今だったらもっと凄いの出来たかも?

 あのシールドを自在に扱えるナディア達が瀕死の重傷(?)を受けたぐらいの強敵だ。

 俺の装備も、いい加減にグレードアップしても良いかもしれない。

 いや、それならばコルネちゃんやユリアちゃん、嫁ーずにユズユズの装備も一新すべきか?

 まあ、ちょっと真剣に考えてみよう。

 だけど、まずはナディア達の救出が最優先だな。


 今日は仕事が手に付かないから、執務室のソファーにごろんと横になる。

 そういや、俺って何であの装備を創ったんだっけ?

 ああ、そっか…子供のころから憧れてたヒーローになりたかったんだ。

 そもそも、何でヒーローになりたかったんだ?

 ん~っと…確か、誰かのピンチに颯爽と駆けつけて、困っている人を助けて、悪を討つのに憧れたんだ。

 だから、いざ困っている人がいたら助けられるように、身体を鍛え、空手道に邁進し、TVのヒーロー物にのめり込んだんだ。

 気が付いたら、ヒーロー物から戦隊物、果てはアニメに漫画に小説にも手を出して、どんどんヲタク化したんだった。

 結婚して子供が生まれたぐらいは、その趣味も鳴りを潜めたけど、離婚して独り暮らしになって、またぶり返しちゃったんだよな。

 この世界で、ガチャ玉で大抵の物を創造できるって知ってから、いつの間にか、ヒーロー物の様に変身する事が目的になってしまっていたけど、本当は悪を討つための力が欲しかったはずなんだよなぁ。

 だからこそ、圧倒的な力を持つ装備を創造したってのに…目的と手段がいつの間にかすり替わっちゃってたのか…反省。

 初心に戻ろう。

 俺が本当に手にしたかったのは、理不尽な悪に困り悩む人々を救う事。

 どっちが正しいかとかの話はどうでもいい。そんなの水掛け論になるからな。

 TVで見てたって、悪の組織にも主張はあったし、ヒーローにも理不尽な言動とか行動はあった。

 だから、そこは論じない。

 俺が救いたいと思った人を助ける。

 シンプルに、そう考える事にしよう。


 あれ、最初は何の話しだったっけ。

 ま、いっか。

 装備の更新とか改造は、取りあえず蜂達が帰って来て、ナディア達を救出し、話を聞いたからだな。

 ふう…何だか眠くなってきたな…そろそろ昼…だけど…瞼が………ぐぅ…。

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