第868話 見なかった事にしておこう…
結局、非公式な場とはいえ、陛下には王女様への献上品であるひつじさん号の事をお伝えし、それに付随して発生してしまった、他の王女様(全員、元がつくけれど)との事も報告した。
何故か、最後には王妃様達まで謁見の間に集合してしまい、普通に納品したバギーが王家の闇に消える事となった…つまりは、王妃様達の玩具となってしまったのだ。
いえ、お金さえ払っていただけるのでしたら、納品後の商品がどうなろうと構いませんけれどもね。
ちなみに、俺の義理の兄弟にあたる、王子様達は一切この話には出てきていない。
もしかして彼等は、王妃様とか王女様に虐められてるのだろうか?
そう言えば、陛下も納品したバギーを王妃様達が確保した時も、何も言ってなかった。
王城の兵士や王都の見回り用に購入して頂いたバギーなのだが、王妃様達がそれを掠め取っても、何も言わないのは、もしかして王妃様が怖くて何も言えないのだろうか…。
もしもあの王妃様達の性格をメリルが引き継いでいるとしたら…いや、王女様達を見る限り、確実に引き継いでいるな。
ならば、あの何も言えずにただ黙って笑っている国王陛下の姿は、未来の俺なのだろうか。
いかん! 我が家は、ただでさえ女性比率が高いというのに、もしも俺の子供が娘ばっかりだったりしたら…俺の居場所が家の中に無くなってしまう!
俺の遺伝子、頑張ってくれ! できれば息子を授けてちょうだい!
そんなお馬鹿な事を考えていた俺だが、最後に陛下が申し訳なさそうにバギーの追加発注の言葉に即座に反応し、揉み手で承諾をした。
領民の生活向上のためにも、ここでしっかりと商売しておかねば!
陛下は、何だか俺に助けを求めるような眼をしていたが、見なかった事にしておこう。
さて、王城での全ての用事をこなした俺は、王都の父さんの邸へと向かった。
騎士さん達が、俺を送るのに馬車を出してくれると申し出てくれたので、有難くお言葉に甘える事にした。
そうしてガタゴト街中を馬車で移動して、王都にある父さんの邸へと到着。
王城からそんなに遠くないので、馬車の移動でも苦にならない。
最近、蒸気自動車に採用している、なんちゃってサスペンションのおかげか、馬車の乗り心地も向上している様だ。
以前の馬車であれば、やたらと分厚い座面にぎっちりクッション性の高い詰め物がされている座席でも、数分程度でお尻が痛くなった。
対策としてクッションを置いたりもしたのだが、今の騎士さん達が使っている馬車ではそれが無い。
振動が抑えられ、地面からの衝撃がかなり緩和されている。
なんちゃってサスペンションとは言いつつも、結構本格的な木製のリーフ式。
馬車は基本的にコイルばねではない。
コイルばねでの四輪独立懸架式の馬車の開発もしたのだが、如何せん価格が極端に跳ね上がるのだ。
それならば、蒸気自動車を買ったほうが、コスト面では利が大きい。
だったら、馬車が全部蒸気自動車に置き換わっても良さそうなものだが、そこはやはり既存の商会や工房などの利権にも関わってくる。
馬車の車体を作る工房や、馬車を牽く馬達を生産している牧場に、その飼料を作る所等々。
別に俺はそれらを駆逐したいわけではないし、用途や費用に応じて馬車と蒸気自動車を使い分けてくれたら良いと思っている。
パレードとかは、やっぱりオープンの馬車の方が格好いいし、農家の方々であれば安い荷馬車の方が購入もしやすいだろう。
だからと言って、乗り心地が悪いままというのは納得できないし、馬車を牽く馬の負担だって減らしたいという事で、木製で簡素ではあるが、リーフスプリングと簡素な金属製のベアリングに関する技術を、俺は無料で陛下に預けた。
これを国からの技術供与とすることで、馬車の乗り心地や馬の負担減が実現した。
蒸気自動車という、この世界では最先端の乗り物に使われている技術をフィードバックした形だ。
地球で言えば、レースなどで使われている最新で最高の技術が、市販車に応用されているようなものだな。
こうすることで、蒸気自動車を製造しても馬車関連の工房とかに変なちょっかいややっかみを受けない様になったのだ。
まあ、これでもちょっかい掛けてきたなら、思う存分に叩き潰してあげるんだけどね。
さて、王都の父さんの屋敷へと到着した俺なのだが、邸の前には何時もの如く大勢の使用人さん達がずらっと勢ぞろいでお出迎え(お仕事で出迎えれない人も当然います)してくれた。
んん? 父さんとコルネちゃんユリアちゃんが居ないぞ?
そういや、肝心要のあの人も居ないなぁ…。
いや、別に俺を出迎えろって言ってるわけじゃないけど、何時もなら出迎えてくれるメンバーなの…に?
はてさて、一体何があったんだべさ?
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