第849話  赤よりは、白か黒

 さてさて何の勘のとありましたが、一応ではあけれども俺の生活は落ち着いてきたと言っても良いのではないでしょうか。

 嫁ーずの夜襲が落ち着いた生活なのかは別として、ダンジョンマスターズに頼んだ事も、この世界をどうにかしそうな怪物の出現予報も無いしね。

 俺が目指していたスローライフとはかけ離れている気がしないでもないけれど、そこま仕方がないと諦めるしかないかな。

 うん、時には諦めも肝心だ。

 だからサラよ…いつまでもソファーにしがみ付いてないで、諦めてリリアさんに拉致されてしまえ。

「いーやーだー! わーたーしーはーさーぼーるーんーだー!」

「仕事は幾らでもあるんですから、サボりは許しません!」

 ソファーに全力でしがみ付くサラの両足を引っ張るリリアさん。

 こんな光景、アニメとか漫画でよく見るけど、本当にあるんだなあ。

 ちなみに、サラのパンツは丸見えです。

「ふっ…赤か…」


 何故丸見えなのかと言うと、サラの両足を両手でガッチリとホールドしているリリアさんが、時折足でサラのスカートを蹴ってまくり上げているからだ。

「お、大河さん、見たいんですか! とうとう、サラちゃんの魅力の前にメロメロのデレ期到来ですね! いいでしょう、パンツと言わずその中身も存分にご堪能下さい!」

 ソファーにしがみ付き、両足を引っ張られて宙に浮き、なお且つパンツ丸出しの馬鹿サラが、俺に向かってドヤ顔でしてるが…

「いや…似合わんな…と思って」

「何でだーーー! せくすぃーぱんちゅの美少女から、大河さんも目が離せないだろーが!」

 何言ってんだ、こいつ?

「俺の好みは、確かにせくすぃーでスケスケなレースの下着かもしれない欲を言えば赤よりも清楚な白か妖艶な黒が好みではあるのだが赤でも可ではあるがそんな物をサラが履いた所で圧倒的ボリューム不足なロリ体形のせいかエロさなど微塵も感じないどころかお子様が背伸びしてあだるてぃな下着を履いただけという微笑ましい印象しか無くデレ期など100万年経ったところで体系に変化など来るはずも無いサラに俺がメロメロになる事など絶対にやって来ない!」

「うぉ! 滅茶苦茶早口でディスられた!」

 サラが喫驚した瞬間、ソファーにしがみ付く手の力が弱まったのか、リリアさんが一気に引き抜いた。

 それはそれは豪快に、すぽーーんっ! と。

 となると、当然反動でサラは吹っ飛んで行き、どこかのTシャツに貼りついたカエルの様に壁に激突して貼りついた。

「た…わ…ば…」

 どっかの一子相伝の拳法の伝承者に殺られたザコキャラの台詞みたいだな…サラ。


 車に轢かれたカエルの様な姿のままのサラを、リリアさんは引きずって執務室から出て行った。

 ちなみにサラの右足だけを掴んで引きずって行ったので、赤いパンツは丸見えのままです。

 いや、引きずられるたびに、ちょっとずつその最後の砦たる薄く赤い布切れもまくれ上がって行ってるが、どうでもいいか。

 はぁ…やっと落ち着いてお仕事が出来る。

 毎日の様に書類を見てはサインしているというのに、何故に毎日の様に書類がうず高く山となるのだろうか?

 いや、そんな事を考えるてる間に、さっさとサインしてしまおう…時間がもったいない。

「はぁ…」

 俺が小さくため息を付くと、

「ため息をつくと幸せが逃げますよ?」

「んをっ!?」

 不意の俺の背後から気配がしたかと思うと、ナディアが空間から滲み出て来た。

「ナディア、お前ずっといたのか!?」

「ええ、全て見させて頂きました」

 俺、こいつに話してない事、さっき色々と口走ってなかったか?

「マスターは、白か黒がお好みなのですね。実は今日の私の下着は、白のスケスケですが…見ますか?」

「うおぅ! お前は何を言ってくれちゃってるの!?」

 痴女なの? ねえ、君は痴女なんですか? そんな風に創った覚えはないぞ!?

「いえ、マスターのお好みとあらば当然奥様方にもお話しせねばなりませんがその前にマスターの反応も見てみたいですし何より遠い過去に約束していただいた私の順番は何時になるのかと悶々とした日々を送るのにも飽きた頃でもありますのでそろそろ私からマスターに迫って襲ってみるのも良いかとか考え始めている今日この頃であり良い切っ掛けになるかと考えていたところちょうどマスターの好みの下着を履いてたので能動的に行動すべきではないかと考えた所存です」

 超早口だな、おい! 

 てか、さっきの俺の真似かよ!?

「あ、いや…そう言うのは遠慮したいかなあ…っと」

 流石に俺好みの日本の美少女アイドル風の容姿に生み出したナディアであっても、それは…。

「私だけでなく、アーデ、アーム、アーフェンも、閨に呼ばれるのは何時の事かとお待ちしているのですが?」 

「あの3人もか!?」

 天鬼族の3人は、サラと同レベルの容姿だから、まだ幼い…ぞ?

「あら、幼く無ければよろしいのですね? では、私ならば問題は無いと」

「ち、ちが!」

「では、私は幼いと? 少なくともミレーラ奥様よりは成熟しておりますが」

「あ、え、い、う…え…お…あ…お…」

「何故に発声練習を?」

 咄嗟に出ちゃったんだよ! じゃ無くて、

「お、俺はホラ…5人も嫁さんがいるじゃん。ナディアまで娶るとか、反対されるだろうから…な?」

 怒らせたら嫁ーずは、本当に怖いんだぞ。

「そうですか、では奥様方の許可を頂いてまいります」

 俺の言葉を聞いたナディアは、またこの部屋の空気に溶け込む様に、光学迷彩を発動して姿を消した。


 目の前でナディアが消えた事には驚いたが、執務室の扉の動きで、ナディアがここから出て行った事は一目瞭然だ。

『いえ、扉をちょっと開け閉めしただけです』

 まだ室内にいたのかよ、おいぃ!

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