第850話 第142回 トール様の嫁会議での決定事項
あの後すぐにナディアは執務室を出て行った。
やっぱり光学迷彩を発動したままなので、勝手に扉が開いた後に閉まるという、どっかのホラー映画っぽい事になったのだが、原因を知っていたので驚く事も無かった。
1人になった(と思う)俺は、黙々と仕事を熟し、ネス湖がオレンジ色に染まる前には、本日分の仕事を片付けた。
出て行ったナディアが、一体嫁ーずとどんな話をしたのかは気になる所だが、誰も何のアクションも起こさないので、まあ大丈夫だろう。
仕事で凝り固まった肩をグルグルまわして解しながら、俺はディナーの為に食堂へと向かった。
すでに母さんを筆頭に、コルネちゃん、ユリアちゃん、嫁ーずにナディアに天鬼族3人娘が席に着き、和やかに話をしていた。
やっぱ、あんなことを言いつつも、ナディアはちゃんと空気を読んでくれてたんだな…一安心。
そして、食事も程よい会話を挟みつつ愉しく頂く事が出来た。
会話と言えば、母さんもユズカも母子共に順調な様で、ユズカは悪阻もそうきついという訳でも無く、母さんに到っては悪阻などほとんどないと言う。
毎日2人で湖の近くを運動がてら散歩しているらしく、今日はちょっと肌寒かったとか話していた。
まあ、お腹の子供と母体が無事であれば問題ないのだが、ちゃんともう一枚何かを羽織る様に言っておいた。
食後は、応接室というか最近ではほとんど家族しか使わなくなったので居間と言っても過言では無い部屋の巨大ソファーセットに、母さん、コルネちゃん、ユリアちゃんと嫁ーず5人に、ナディア、アーデ、アーム、アーフェンが座る。
男は俺だけなんだけど…まあ、気にしないで良いか。
さて、のんびりお茶でも頂きながら、王女様の専用車をいつ献上に王都に行くか相談しようかな…。
可愛い(肉食系だが)嫁達に囲まれ、厳しく(怖く)も優しい、何時までも若い母さんに、そろそろ女性らしい身体へと変化しつつある可愛い妹と、まだまだ幼いもう一人の妹。
そして俺の眷属でもある妖精達。
うん、これぞ異世界での勝ち組の日常の光景だよなあ…俺流スローライフ万歳!
と、思ってた時が俺にもありました。
「では、全員揃ったところで、第142回 トール様の嫁会議での決定事項を発表します。司会進行は、私マチルダです」
お茶を愉しんでいると、急にマチルダが立ち上がり、そんな事を言いはじめた。
「は、はいぃ?」
周りを見回すと、俺以外誰も驚いていない。
え、コレ知らないかったの、俺だけ?
いやいや、そもそも嫁会議って142回もやってるの!?
「今回の嫁会議の議題を提示してくださったのは、トール様の眷属であるナディアさんです。議題は、『妖精族もトール様との子供が欲しい』という物です。これは、アーデさん、アームさん、アーフェンさんも同意見との事ですが、再度お伺いいたしますが、この内容に間違いありませんね?」
えっと、ナディア…マジで話したのか?
「はい、その通りで間違い御座いません。この場にいる我々4名、誰も異論はございません。と言うか、熱望しております」
天鬼族3人娘も、ナディアの言葉に揃って頷く。
「了解いたしました。では、この発表の場に先だって行われた会議で話し合いました、ナディアさんの議題についての結果を発表いたします」
俺が呆気に取られていると、ナディア、アーデ、アーム、アーフェンの妖精族一同が、小さく息を飲んでいた。
「まず、大前提として、私達嫁連合は反対は致しません」
嫁連合…て…
「「「「やったーーー!」」」」
マチルダの発表に、思わずと言った感じで立ち上がり、ぴょんこぴょんこと飛び上がりながら喜ぶ妖精一同。
ところで、そこに俺の意見は入る余地は無いの?
「皆さん、落ち着いてください。まだ続きが御座います」
そう言ったのは、第一夫人としての貫禄が出て来た(様な気がする)メリル。
「「「「あ、はい…」」」」
その言葉に従い、大人しく座り直した4人。
「ごほんっ! 先ほど、『大前提として、私達嫁連合は反対しない』とお伝えしましたが、許可するには条件がございます」
いや、許可って…俺の事だよね? だよね?
意見を言ってもいいかな? そもそも、何で嫁ーずが許可出すの?
「その条件とは、まず私達5人に子供が出来る事…これが条件です」
マチルダの言葉に、ナディア以下天鬼族3人娘も深く頷き答えた。
「「「「当然ですね!」」」」
えっと…当然なの?
もしかして、嫁達が全員妊娠したら、俺はナディア達に性的に食べられちゃうって事なの?
「条件はご了解頂けたようですね。まあ、その日はそう遠くはないかと思いますよ。もちろん、4人の協力があれば、さらにその日は近くなる事でしょう」
ナディア達に、何の協力させるつもりなの?
「「「「了解しました!」」」」
了解すんのかーーーい!
そんな発表を優しい目で見つめる母さんと、呆れた顔でお茶を啜っているコルネちゃん。
ちなみにユリアちゃんは、コルネちゃんにもたれ掛かって、船をこいでいた。
「では、発表は以上です」
言うだけ言ったマチルダは、何事も無かったかのように、ソファーに深く腰掛けると、少し冷めたお茶を口に含んだ。
嫁ーずはにこやかに、妖精一同はとてもわくわくと嬉しそうな顔で俺を見ている。
えっと…この後、俺どうしたらいいんだ?
めっちゃ気まずいんですけど!
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