第838話  今日は3人に頼みが…

 モフリーナのダンジョン内移動の能力によってトールがやって来たのは、この惑星でトール達が住む大陸の丁度裏側にトールが造った大陸。

 その名もパンゲア大陸だ。

 ここは元々はモフリーナのよってダンジョン化されていた。

 無数の塔型のダンジョンと、実際にはモフリーナが苦手とする地下型ダンジョンの複合したダンジョンだけの大陸。

 地上だけでも2,200万平方キロメートルと広大であるのに、それが地下に3層も有り、しかも塔型ダンジョンも有る。

 このダンジョン群を完全攻略する方法は、完全機密ではあるが、決まった順番通りに同一人物を含めたパーティーで攻略しなければならない。

 2,200万平方キロメートル×4層と無数の塔型ダンジョンを順番どおりに攻略…しかも同一人物が参加する必要がある…って、絶対に不可能だ。

 1個でも順番を間違えると、振出しに戻る…つまりはやり直し。

 ま、俺もやり過ぎたとは思うが、実はこれはとある目的の為にやった事だ。

 とある目的…それは、管理局のシステムバグによる、異世界からの大量転移者の受け入れ場所としての大陸。

 転移者の数は、約1万人。

 どっかのラノベの様に、ちゃんと人物を選定したわけは無い。

 無作為に無数の次元に存在するあらゆる世界から転移されてくる異邦人。

 中には悪人もいれば、魔物かと言う様な凶暴な生物さえもいる。

 この大陸は、そんな転移者の内、この世界に不要だと俺が考えた奴らを効率的に始末し、モフリーナのダンジョンのエネルギーにしてしまうためのもだった。

 勿論、その目論見は成功し、必要だと思われる人材や保護すべき対象以外は物理的に始末出来た。

 結局、大勢の命を奪う決定をしたのは俺だし、直接手を下したのはモフリーナ(実際は大陸に配置された魔物)であるが、、何故か心は痛まなかった。

 残った数千人は、手厚く保護する事となり、この大陸の住人となった。

 そして先の暗黒教ダークランド皇国との大戦での被害者達や投降して来た敵軍の兵士達をも放り込んだ。

 更にその最中に発見したダンジョンマスターであるモフレンダとボーディをも取り込み、大陸そのものを大改造し、3人となったダンジョンマスターが大陸を仲良く分け合い、更に複雑なダンジョン大陸へと生まれ変わった。

 今ではこの大陸も、10万人を超える住民を抱え、全員が平和に暮らしている。

 そしてダンジョンマスター達により、この増えた住民達を統治するため、表向きこの大陸を統べる3人の王が造りだされ、聖なる女神ネスを主神とし、太陽神、月神、大地神をそれぞれ祀る宗教国家を建国。

 元の大陸に戻ったり、この残ったりと、当初は人の流れも複雑ではあったが、それも落ち着き、元の大陸にはモフレンダとボーディ―のダンジョンが造られ、そこへ入るとこの大陸へと転移されるシステムの構築も完成した。

 今では多くの冒険者達があっちの大陸とこっちの大陸を行ったり来たりしている。

 まあ、冒険者本人達は、このダンジョン大陸…パンゲア大陸と、自分達が住んでいる大陸が別物だとは考えていない様だ。

 そら、ダンジョン潜って別の大陸に飛ばされるなんて、普通考えないよな。

 

 てな事で、俺はパンゲア大陸の中心にある最初の塔型ダンジョンの最上階フロアにモフリーナと共にやって来た。 

「久しぶりじゃのぉ」「…ご無沙汰…」「おひさしぶりでちゅ!」

 相変わらずボーディ―は偉そうだし、モフレンダはコミュ障気味だ。

「久しぶりだな、ボーディ、モフレンダ、もふりん。元気そうで良かったよ」

 うん、皆とても顔色も良いし元気そうだ。

 山の天辺で長い間ぼっちだったモフレンダも、長く休眠している間に下水の下に埋まっていたボーディではあったが、ここでほっといても魂のエネルギーの収支がプラスになり、大分色々な事に余裕が出来て来たようだ。

「それで3人の王様は?」

 モフリーナの造り出したテーラ・マテールと、ボーディの造り出したヘーリ・オース、モフレンダのディー・アーナの3人の王。

 彼等の姿が見当たらないのだが…?

「彼奴等は今は執務中じゃ。お主が来る事は伝えておるで、もうすぐ来ると思うぞ」

 ダンジョンマスターの中で、一番のちびっ子だが一番偉そうな(実際偉いらしい)ボーディが、俺の問いに答えた。

「そうか…特に用事は無いんだが、まあ良いや」

「トールヴァルド様。では本日は、どういったご用件なのでしょうか?」

 あれ? 俺、モフリーナに用件を伝えて無かったっけ?

「そっか、伝えて無かったか。実は、今日は3人に頼みがあって来たんだ」

 俺がここにやって来た理由…おっと、それを話す前に、ヘアピン型のたっちゃんたっちゃん(たっちゃん)を装着!

「本日来たのは他でも無い。俺の分身を造り出せないかっなって相談に来たんだよ」

「分身ですか?」「分身じゃと?」「…分身…?」

 俺の用件にを聞いた3人は、ニュアンスは微妙に違うが同じような言葉を口にしたのだった。 

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