第837話 天国かよ…
ま、まぁ…気になっていた事が1つ解決したから、これはこれで良いか。
取り合えず、気になっていたひつじさん号関連は、これで終了っと。
んでは、ちょっとお出かけしましょうかね。
えっと、そこの…あ、名前知らんかった…んっと、ドワーフメイドさん、伝言お願いしてもいいかな?
ああ、嫁達や母さんや妹達に、ちょっと商会との打ち合わせに出たって言っといて。
帰りは昼を過ぎるから、昼食は食べるように伝えてね。
んじゃ、行ってきまーす!
ってなわけで、脳波遮断装置(たっちゃん)を手に、モフリーナの管理する第9番ダンジョンへの裏口へ、俺は蒸気自動車で向かった。
俺の領地は、相も変わらず人出も多い。
特にネス湖の底に静かに佇む女神ネスの像が見える鳥居は人気の観光スポットだ。
今日も大勢がネス詣でに訪れているし、周辺には出店も立ち並んでいる。
それを通り過ぎると、今度は我が領最大の歓楽スポットである、温泉スパリゾートが見えてくる。
ここも連日の大盛況だ。
親子連れであればスーパー温泉と各種の屋台型ゲームや、お子様に大人気のアトラクション『君もダンジョンに挑戦だ!(推奨年齢6歳~12歳)』は、常に長蛇の列だ。
女性陣向けには各種のエステ&お土産物店があるし、独身男性の為には娼館(人魚さんが主だが…)がやはり人気スポットとなっている。
そこそこ小金を持った男性にはカジノが人気だ。
王国の多くの領地が必死に食料を生産しているのに対して、俺の領地は基本的に生産性は低い。
蒸気自動車や呪法具関連の精算は、隣の父さんの領地に築いた大規模工房…もはや工場だが、そこが一括して請け負っている。
もちろん基礎研究や設計関連は、工業関連は全て俺の領地の保護地区内に隔離・隠蔽されているドワーフ衆が行っているし、薬物関連は一見してただの放牧地で魔族さんが全て取り仕切っている。
無論、それでも秘密を探ろうとする奴は絶えないのだが、アルテアン領の警備部門を統括する、筋肉エルフ族が厳重な警備体制を敷いているため、機密漏洩は一切起きていない。
そんな温泉スパリゾートを通り抜けると、父さんと俺の領地を隔てる巨大な山脈が見えてくる。
最高峰はエベレストぐらいある(推定)かもしれないが、それはちょっと離れている。
基本的には徒歩での山脈縦断も出来なくはないのだが、そんな事をせずとも、俺と(主に)精霊さんによって開通したトンネルを抜ければ父さんの領地までは、そう遠くない。
トンネル内には、照明も取り付けられ、換気装置も完備しているので、馬車や蒸気自動車の通行も問題なく行うことが出来る。
そうそう、最近では父さんの領地と俺の領地を繋ぐ、蒸気バスの定期運航も開始した。
これでより一層、俺の領地は潤うってもんだ!
ってなことを考えているうちに、長いトンネルを抜けて父さんの領地側の出口へとたどり着いた。
トンネルの出口を抜けるとすぐに目に入る巨大な塔。
これがモフリーナの管理する第9番ダンジョンだ。
塔の最下層は、昔見た東京ドームぐらいありそうだよなあ。
最初の頃は、小さかったのだが、俺がエネルギーを渡すようになってから、ぐんぐん大きくなった。
今では最上階なんて雲の上だから、見上げたって見えない程だ。
そんな巨大な塔の正面入り口を避けるようにぐるりと回りこみ、裏口へと向かう。
裏口といっても、特に出入口などは設えられていない。
巨大な塔の壁の一部が、俺が近づくといきなり消えてなくなり、そこから入れるって仕組みだ。
そして中に入ると…。
「ようこそいらっしゃいました、トールヴァルド様」
ナイスボディーの巨乳猫耳お姉さん、モフリーナが待ってくれている。
「うん、わざわざ出迎え申し訳ないね」
ま、ちょっと」場所を貸してもらうだけのつもりだったんだけど、出迎えてくれるとは。
「いえ、トールヴァルド様の申し出ですので、最大級の礼をもってお出迎えしませんと」
車を降りた俺の腕をそっと抱き寄せるモフリーナ。
ちょ、当たってるんですけど!
「あ、うん…まあ、こっそり黒猫のノワールに伝言頼んでたように、ちょっと誰にも見られない場所を貸して欲しいんだけど…」
そう長くなくてもいい、じっくりと考え事がしたいので、邪魔されたくない云々。
「それでしたら、丁度良い場所がございます。早速向いましょう」
そう言うと、モフリーナはより一層強く腕に絡みついてきた。
あ、めっちゃ腕に当たる感触が…天国かよ…。
「では行きます」
半分呆けていた俺は、瞬時に『ふわっ!』と、あのエレベーターで味わう身体が一瞬浮くような、金〇が『しゅん!』と縮んだような、何とも微妙な感覚に包まれた。
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