第824話 風呂入って寝よ…
帰りの飛行船の中は、とても静かだった。
俺は、またメリルが帰路の船内でも俺から搾り取るつもりなのでは? と、心配していたのだが、杞憂だった様だ。
朝早くに王都を出発し、帰路は全速力で飛んだ事も有って、陽が沈む前には見慣れたネス湖の上空まで戻る事が出来た。
もちろん、事前に連絡をしていたので、俺達が帰った時には裏庭で皆が出迎えてくれた。
母さんはバルコニーでにこやかに手を振っていたので、俺も笑顔で手を振っておいた。
引き攣って無かったよね? ちゃんと自然な笑顔で応える事が出来たよね?
あの母さんの微笑みの裏に潜む恐怖を俺は知っている…だがそれを表に出すわけには行かないのだ。
まだ死にたくないから…ガクガクブルブル…。
メリルは、とってもいい笑顔で屋敷で留守番をしていた嫁ーずと合流していたが、何やらひそひそと全員で話した後に、ちらっと俺へと視線を向けたのを知っている。
うん、こっちも怖い…。
そんな事を考えていると、メリルが…いや、嫁ーず全員が俺の方を向いて手招きした。
あれ、俺の事呼んだ? と思ったら、どうやら違う様だ。
呼んだのは、王都から連れ帰ったもっち君。
俺の屋敷に残っていたナディア達を含めたアルテアン家の女性一同が、もっち君を連れて屋敷の仮名へと入っていった。
えっと…俺も屋敷に戻ても良いんだよね?
ホワイト・オルター号も湖に沈めちゃうよ?
良いよね?
俺の心の声なんて誰も聞いてくれるわけも無く、さっさと後片付けをする事にしました。
はぁ、色々と疲れた…まだ早いけど、風呂入って寝よ…。
「それで、王都の屋敷でのあの人の様子は?」
ここは、ウルリーカのトールヴァルド邸であてがわれた自室。
メリルが王都から連れて帰った、もっち君の通訳役としてナディアも同席した集まりである。
ウルリーカ、コルネリア、ユリアーナ、メリル、ミルシェ、ミレーラ、マチルダ、イネス、そして通訳のナディアにアーデ、アーム、アーフェン、そしてその他妖精さん達多数とトールヴァルド邸担当で残ったもっち君3体と王都から交代で帰って来たもっち君2体。
もっち君の性別は不明だが、それ以外は見事なまでに女性だけの尋問…もとい取り調べ…もとい、聞き取り調査の場。
「( ̄ω ̄;)」
「ほうほう…なるほど。では、屋敷では?」
「(((´・ω・`)」
「本当ですか? 目を離したりはしてないでしょうね?」
「Σ(・ω・`|||)」
「そうですか。もしも嘘をついていたらどうなるか…分ってますね?」
「(((((°ω°;)」
「なるほど、理解しているのでしたら良いのです。まあ、後ほど嘘の証言をしていたと発覚した時には…捻り潰します」
何やらもっち君を尋も…聞き取り調査を行っていたナディアが、会話の内容を一同に伝えた。
「大奥様、どうやら大旦那様は王都では浮気などはしてらっしゃらないご様子。ただし、屋敷のメイドには少しばかり目を奪われてはいる様です。彼等がその存在を掛けて証言いたしましたので、まず間違いはないかと」
それを聞いたウルリーカは、満足そうに大きく頷いた。
コルネとユリアは、父親の命が費える様な事にならず、小さくほっと溜息をつく。
「ナディアさん、有難うございます。では、私が王都に泊まっていた夜に、侯爵邸で一人だったトール様の様子も聞きだしてください。あの屋敷には、確かに目を奪われる様なメイドも多いですから」
次にメリルが発言をすると、嫁ーずは小さく息を飲んだ。
もっち君も、少しばかり緊張し、「 (=゚ω゚)」っと、白目がちになっていた。
この日、ウルリーカの部屋では、王都から帰還したもっち君が緊張で汗をダラダラと汗を流していたという。
そしてそれを宥めるトールヴァルド邸のもっち君も、次の交代は自分か? と、妙な緊張感でカチンコチンになっていたとか。
母さんの部屋で集まったアルテアン家の女性陣の事など我関せずと、俺はのんびりと風呂に浸かり、軽く夕飯を頂いた後、少し早いが寝る事にした。
いや~今回の王都行きは、中々に収穫があったなあ。
あの人生遊戯盤は間違いなくヒット商品となるだろう。
もっとも作りも簡単なので、すぐに類似商品が販売されるだろうが、本家とか元祖としてもお墨付きを陛下に頂いて焼き印でもすれば、当分は市場を独占出来るんじゃなかろうか?
あとはバギーだけど…マーリア第5王女様にカスタムした物を上げる約束しちゃったよなあ…ユリアちゃんのきつねさん号に近い構成でドワーフ親方にお願いしよう。
王女様なんだから、どうせ王城でしか乗らないだろうし、スピードは二の次だな。
見た目に同じ物は駄目だろうから、うさぎ、きつね、くま…次は、ねこさん号かいぬさん号にでもするかな?
そうそう、王家の紋章も入れた方が良いだろうなあ。
ま、明日またメリルとかに相談しようっと。
今日は何だか静かだから、さっさと寝るとすっか…おやすみぃ~。
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