第773話 やれやれだぜ
俺達がホワイト・オルター号から乗って来た蒸気自動車は、定員数の関係で全員は一度に乗れない。
まあ、手荷物程度とはいえ、荷物も有る事だし、それは仕方ない。
なので、馬車を2台追加して、ホワイト・オルター号の停泊している練兵場へと向かった。
母さんとコルネちゃんとユリアちゃんが、蒸気自動車に乗りたがったので、イネスとマチルダとミルシェは、ちょっとぶーたれながらも馬車に移動。
往きにも思ったんだが、車の中に女性特有の甘ったるいような匂いが充満して…うっぷ…窓開けよ…。
最後尾の馬車には、父さんが(もっち君付き)1人寂しく乗っている。
などと言っても、ゆっくり街中を進んだとしても、たかが数十分の事。
あっという間に練兵場のホワイト・オルター号の前に到着した。
見上げる程巨大なホワイト・オルター号の前に到着すると、ユリアちゃんが車から飛び出してクルクル踊りながら回る。
あれは、今からの空の旅にワクワクしてるんだろうか…いまいち彼女の行動が意味するところが分からない。
母さんとコルネちゃんと嫁ーずも車と馬車から降りて来て、結界が解除されるのを待っているので、出来る男のトール君は即座に結界を解除した。
女性を待たせてはいけないのだよ、男性諸君!
そして女性に待たされることを怒ってもいけないのだ…これは経験則です…怖いですから…止めようね…。
ちなみに、父さんはゆっくりと馬車から降りて来た。
今日はお見送りに来ただけだから良いけど、普段は真っ先に降りて母さんとかエスコートしないと…死ぬからな、父さん。
そんなこんなで、カーゴスペースに蒸気自動車を積みこんで、キャビンへ乗り込むためのタラップを降ろした俺は、
「それじゃ父さん、母さんが無事に出産できる様に、全力でサポートするから安心して欲しい」
「うむ、任せた。母さんを頼むぞ」
そう言って、がっしりと握手をする。
「もちろん、コルネちゃんやユリアちゃんもちゃんと預かるからね。こっちに戻るまでに、クソ見合いの話は潰しておいてね」
「ああ、分ってる。そっちは任せとけ」
さらに握手を交わす俺と父さん。
そんな俺と父さんを見つめる何故か女性陣の目が、異様に冷たかった気がするが、気にしないでおこう。
「あなた、留守中はお願いしますわね」
母さんも父さんに声を掛ける。
「ああ、心配するな、大丈夫だ。お前も無事に元気な子を産んでくれよ」
父さんが母さんを見つめる目は、とても優しかった。
「ええ、勿論ですよ。でも、あなた…」
あれ? 母さんの背後に腕を組んだ屈強な男の姿が…守護霊…いや、まさかアレはスタ〇ドか!?
「うむ?」
「分かっていますよね?」
ごしごし…俺の目の錯覚か!? 母さんのポーズが…。
「な、何の事だ…?」
あ、父さんにも見えたのか!?
母さんが、両足を肩幅程に広げ、やたら仰け反りつつ、右手の人差し指を父さんに付き付け、左手を腰に…。
あれは、まさか有名なやれやれだぜポーズか!?
「やれやれ…では、言葉にしましょうか? 浮気は許しませんよ? した斬り切り落としますからね?」
や、やれやれって言ったーーーー! しかも、斬り落とすって、何を? まさか、ナニですか!?
「わ、わわ、わわわ…分かってるさ…もちろんそんな事は。し…しない…ぞ?」
父さんが微妙に内股になって言葉を返してるけど、俺もヒュン! ってなったから! 怖くてヒュン! って!!
「そ? 分ってるならいいわ。もっち君達、監視よろしくお願いするわね」
父さんの背後にふわふわ浮いてたもっち君1号、2号も、『 (lil゚ω。ノ)ノ 』『 (((=ω=))) 』って、今まで見た事無い様な顔して、めっちゃ震えながら頷いた。
うん、おまいらも怖かったんじゃのぉ…その気持ち、良く分かるぞよ。
「では、お願いね」
さっきまで纏っていた負のオーラをさっと消した母さんは、颯爽とタラップを上がっていった。
「と、トール…マジで母さんを頼んだぞ…怒らせたら怖いから…な…」
まだ冷や汗ダラダラの父さんがそう言うので、すかさず俺も父さんに、
「分ってる…だから父さんも、メイドに手を出したりしたら駄目だぞ…俺には母さんを止める事なんて出来ないからな…」
そう言葉を返し、再びがっしりと両手を握りしめ合ったのであった。
ちなみに、俺も父さんもちょっと涙目で微妙に内股だったのは仕方ないだろう。
※こっそり新作投稿しています。
姫様はおかたいのがお好き
https://kakuyomu.jp/works/16817139558018401730
不定期更新ですが、( `・∀・´)ノヨロシクオネガイシマス!
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