第772話 かぼちゃパンツなんて嫌!
さてさて、本日は俺の家へと帰る予定日。
朝からユリアちゃんは、「そらとぶおふねにのれる!」と、とってもご機嫌。
早く早くとニコニコ顔のユリアちゃんに急かされて、予定を前倒しにして、朝食後すぐに出発する事となった。
だからと言って、嫌な顔なんて誰もしないし、していない。
「しょうがないわねえ。それじゃトールちゃん、少し早いけど出発しましょうか」
母さんすらも苦笑いでそう言う程、ユリアちゃんの笑顔の破壊力は凄いのだ。
とは言え、旅支度には少しだけ時間が掛かる。
女性の移動の準備は時間が掛かるものだ。
…よく考えたら、俺以外全員女だった。
いや、まぁ、それはいいや。
前世で結婚した時も、新婚旅行の前に元嫁はすんごい時間を掛けて荷物を準備してたもんなあ…。
俺なんか、旅行先で着る衣類をてきとうに買ってきたり、タンスから引っ張り出して纏めてカバンに詰めるだけだったけど、女性は記念写真ではどう映るかとか現地のファッションとずれてないかとか、色んな雑誌を見ながら準備してたからなあ…そりゃ~時間もかかるわな。
俺が適当すぎただけって感じもするけど…事実、元嫁から旅行カバンの中身をチェックされて総入れ替えされたけど…何でだ?
斯様に、女性の旅支度ってのは時間が掛かるものなのだ。
だから俺は準備が出来るのを、食堂でお茶を飲みながらじっと待って…、
「ほら、トールちゃん。さっさと準備なさい。もうみんな玄関に向かってるわよ?」
あれ? やけに早いな…しかも母さん、小さなカバン1つだけ?
「荷物それだけ?」
思わず訊いてみたんだが、
「ええ、そうよ?」
何言ってだ、こいつ? って顔を母さんがする。
「だって、母さん俺の家で出産とか育児とかで長期滞在じゃん。えっと着替えとか大丈夫?」
少なく見積もっても数ヶ月から1年ぐらいは滞在する予定なんだけど…もしかしてそのバッグは、空間拡張機能とか付いた夢の魔法のバッグですか?
「今日と明日の着替えだけあれば大丈夫でしょう?」
「え、2日分だけ? あ、あれ?」
母さん、事もなげにそう言うが…。
「だって、王都のお店にある服も装飾品も香水も、全部アルテアン領の方が上質でファッショナブルじゃない。私は、王都のいかにもお貴族様ですよ~っていう、ゴテゴテした飾りの付いた服なんかもう飽きちゃったのよ。あっちで最新の服を買うわ!」
ま、まあ…確かに貴族の女性は滅茶苦茶コルセットでウェスト絞り込んでるし、引きずるほど長い裾のスカートは、パニエと膨らますための骨組でふんわり広がり、歩く時に足元なんて絶対に見えない程だし…アレって、トイレ大変だよな?
男だって、陛下に謁見とかの正装は、めっちゃ派手な帽子と原色派手派手の服を着てたりするし。
まあ、中世前期頃のヨーロッパみたいなラフと呼ばれてた壁襟みたいなのは流石にあまり見かけないけど、全く見ないってわけじゃないし、王都の服飾関係は確かに時代遅れって感じするな。
しかも、女性用も男性用も下着はかぼちゃパンツみたいなのが一般的なんだぜ、信じられるか?
はっきり言おう、俺は絶対に履かない!
対して我がアルテアン領で最近一般的なファッションといえば、服自体にはゴテゴテした余計な装飾は一切無く、動きを阻害する様なデザインは使われておらず、柔らかい少し薄手の布を使っていて、しかもその布のたるみを活かして活動しやすいシンプルなデザインになっている。
スカートの裾だって、足首ぐらいまでの長さしかない。
装飾はレースとかリボンとかで部分部分にワンポイント入れる程度で、はっきり言っておしゃれである。
まあ、アールデコ調とまでは言わないが、王都と比較にならないほどにはファッショナブルだ。
下着だって、我が領では男性用はトランクスが主流だし、女性用のブラジャーとショーツやガードルもあるし、コルセットを愛用してた貴婦人様には、なんとボディースーツまである。
これは、ユズカが自分好みの服や下着をドワーフさんの女性職人に発注したのが切っ掛けだったが、ドワーフさんからエルフや魔族に、そして温泉街で徐々に広まって、いまでは父さんの街までもめっちゃ広まった。
確かにそう言う意味では、最新ファッションの発祥地と言えなくも無いかな。
いや…元はユズカが『かぼちゃパンツなんて嫌!』って言った事が発端だけど。
しかも、それを聞いたユズキがちくちく手縫いでユズカ用の下着とか服を作ってたんだけど…女性用下着を手縫いで造りあげたユズキ…もはや男じゃない、漢だよ。
ファッション界を引っ張るファッションリーダーだよ!
だけど、お願いだから、おネエ言葉を使ったりしないでね。
んん、ごほん! そしてその作品に衝撃を受けたドワーフさん達が、これは間違いなくファッション界に一石を投る! っと、それはもう夜も寝ずに夢中で製造しまくくり、それが俺の領地だけでなく父さんの領地にまで一気に広まったのだ。
さらに、俺が最近開発した呪術式縫製機械の試作機がその勢いに拍車をかけた!
呪術式縫製機械を見たドワーフさん達は狂喜乱舞してそれを自分達の村に取り込み、日々最新ファッションを探求し続けているらしい。
もう、我が領地の服飾関係は、地球の近世ぐらいまでは進んだんじゃないかな?
ちなみに、人魚さんだけは、何故か元からブラジャー(女性用水着のトップス)だけはしてたし、ドワーフさんとエルフさんは、元はサラシとふんどしだったけど。
「ま、まあ…そしたらまずは父さんの屋敷に寄って、服屋を呼ぼう。ゆっくりと必要な物を買い込んでから、俺の屋敷に移動って事で良いかな?」
「いいとも~!」
母さん、その返しはお勧めしないぞ?
※こっそり新作投稿しています。
姫様はおかたいのがお好き
https://kakuyomu.jp/works/16817139558018401730
不定期更新ですが、( `・∀・´)ノヨロシクオネガイシマス!
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