第734話 将来が不安
なるほどね。
あの戦争の事後処理は、しっかりと進んでいるって事か。
結構、好き勝手やっちゃった感があるから、ちょっと心配だったけど、これで一安心…かな。
「あ、あの時に配った御守りの呪法具どうなった? あれの有効期限、もうそろそろ切れるけど…」
期間限定で、自然治癒力向上、攻撃力上昇、回避能力上昇って能力が付与される、スーパーな御守り。
開発部長であるユズキが、あの御守りがどうなったか心配してたんで、確認のために訊いてみた。
「あれは既に回収済みなんだが…」
ん? 何か含みがあるな。
「なあ、トール…アレ、配ったらだめか?」
「配る? 一体、誰に?」
もうそろそろ効果も切れる御守りを誰に配るんだろう?
「いやな、戦争参加者のうち、結構な人数があの御守りを欲しいって言ってるそうでな。記念品みたいな感じだろうか」
「ああ、なるほど…」
確かに兵や騎士達は、肌身離さず持ってたって聞くもんな。
でも、そもそも汗で臭うとも、薄汚れているとも聞いている。
そんな物貰ったって、記念品になるんだろうか?
ん~そうだなあ…
「いや、父さん。アレは一旦回収してくれないかな。記念品として、今度はネス様の有り難いお姿が描かれたお札入りのを用意して、戦争参加者には無料で配布する様にするから」
うん、あんなばっちい物は処分だ。
所謂、汚物は消毒だーーー! って感じでね。
「トールよ、配ると言っても…復興支援で王国も神国も、そんあ資金は無いと思うぞ…」
やだなあ、そんなの決まってるじゃないか。
「俺が出すよ。復興に関わらない俺から、今も現場で頑張っている兵隊さんや騎士さんへのプレゼントって事で」
ドワーフさんとかの村に仕事として発注したら納期も大丈夫なはずだ。
代金なんて、嫁ーずのブライダル・プランが軌道に乗れば、瞬時に回収できる。
だから、御守りり配布と同時に、宣伝チラシもくっつけましょうね。
そもそも、あの戦争の時に、「この戦争が終わったら、俺、結婚するんだ!」とかフラグが盛大にあちこちで立ちまくっていたから、独身の兵士や騎士さんがいっぱい溢れているはず。
しかも、あそこには女性兵士や騎士も数多くいたし、後方支援でも女性は多数いた。
もしかしたら、つり橋効果的な感じでカップルが生れているかもしれない。
ここは、ブライダルプランを売り込むチャンスだろう。
ってな事を瞬時に考えた俺は、御守りの無償提供を申し出たのであった。
「トール…そこまで兵の事を思ってくれてたのか…」
何か、父さんの目がうるうるしているが、実は将来に向けての投資でしたとか言えない雰囲気だな…黙っとこ。
「ま、まあ…ちゃんとシリアルナンバーが刻まれてるから、御守りがきちんと返却されてるかチェックはしてね」
「ああ、それはきちんとさせるから安心して欲しい」
うん、ならばヨシ!
「あとさ、母さんに預けておいた父さんの神具…受け取った?」
「ああ、母さんが帰って来てから3日ぐらい経ってから受け取ったぞ」
何故に3日後? まさか、その間、母さんに搾り取られてたんじゃあるまいな?
「母さん…」
思わず母さんを冷めた目で見てしまった俺。
「ナニカシラ、とーるチャン」
声が裏返ってますが?
「何で3日後なのかな?」
「イロイロトアッタノヨ、イロイロト…」
俺は母さんの額から汗が流れ落ちて行くのを見逃してないぞ?
ってか、めっちゃダラダラ汗かいてるな、母さん。
「まあ、別にいいけど」
母さん、明らかにほっとした顔になったけど…やっぱ搾り取ってたね?
お腹に赤ちゃんが居るってのに、何やってんだろうなぁ…この人は。
いや、知らなかったんだから、いいのか? いい分けないよな? いや、どうなんだろう?
「ともかく、父さんの手にはちゃんと渡ってるんだね。それで、使い心地は?」
もう、母さんは放っておこう。
「ああ、一度だけ変身して、練兵場で騎士達と訓練してみたんだが…一度に全員がかかって来ても相手にならなかったな」
まあ、元よりチートな父さんだからな。
「だから、たまにコルネリアとユリアーネに、訓練に付き合ってもらってるのだ。2人は凄いぞ~! すでに騎士団程度の力では歯が立たないからな!」
そりゃ変身したらそうだろうなあ。
「特にユリアーネは、変身しなくても互角以上だからな、騎士達と!」
「ぶふっ!」
「てへ♡」
思わず噴き出した俺と、恥ずかし気に頬を染めるユリアちゃん。
「特筆すべきは、その運動能力だな! 父さんも目で追うだけで精一杯だからな!」
「えへへへへへ♡」
ユリアちゃんの能力は全開放してないはずなのに、そこまでスーパー幼女になっちゃったのか!?
お兄ちゃん、将来が不安です…。
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