第733話  確認しておきたい事

 そんなこんなで、取りあえずしがらみ関係で断り辛い物に関して、一応コルネちゃんはお見合いをするという事で落ち着いた。

 父さんも貴族連中の中での面子もあるだろうから、申し込まれた一部のお見合いだけは受ける方向で調整するとの事。

 コルネちゃん自身は、あくまでもお見合いイベントに出向くだけであって、婚約を受ける気は毛頭ないとの事なので、一安心。

 いや、安心してちゃ駄目なのかな?

 いつか俺がちゃんと結婚相手を見繕って、ネスから神託って形で紹介しなきゃならんのだよな。

 う~~む…気が重い…。

 

 それはそれとして、ちょっと父さんに確認しておきたい事がある。

「父さん、それで例の戦争の後始末はどうなった?」

 暗黒教ダークランド皇国との戦争は、色々と酷い最後だった。

 あの皇国の通った跡は、俺達一家がほぼ更地にしちゃったし、皇都に到っては焦土と化したまんまだ。

「ああ、あの戦争な。今は復興の指揮をウェスリー殿下がとっているぞ。あと、アーテリオス神国も協力しているな」

 メリルの実のお兄さん、グーダイド王国第三王子ウェスリー・ラ・グーダイド殿下が復興の指揮か。

 あと、べダム首長も全面支援…まぁ、それが当然か。

「どこからともなく、壊滅した国々の人々が舞い戻って来てな。思ったよりも早く復興しそうだぞ? どこからともなく…な」

 父さんは、ダンジョンの秘密を知っているが、どこに誰の目と耳があるか分からんから、言葉を濁している。

「あと、月神教の教会がポリン司祭長の元で建立が開始されたとか聞いたな」

「ポリン司祭長って誰?」

 俺の知り合いか?

「トールさま…あの恐怖の大王戦の時に出会った、例の不思議ちゃんでは?」

 首を傾げていた俺に、そっと教えてくれたのはメリル。

「お、おお! あの不思議ちゃんか! ってか、教育終わって司祭長になったのか?」

 何とびっくり!

「ああ、もう基本的な教育は終わったそうだ。月神教に関しても、太陽神教の教義を参考に作りあげたらしいぞ? 何気にあの娘、頭は良かったようだな」

 父さんが何やら感心した様に、そう言った。

 宗教の教義を、お手本があったとはいえ数年で作り上げるとは、なかなかやるではないか電波少女!

「それに伴って、あの地下に住んでいた人達も、教会のある地へと移り住むとか聞いたぞ。ああ、それと復興中の土地に、ダンジョンが新たに2個見つかったそうだ」

 それは規定事項だな。


 モフレンダとボーディのダンジョン…正確には、やってきた冒険者達をパンゲア大陸へ転移させるための、形だけのダンジョン。

 足を踏み入れたら、パンゲア大陸にある本当のダンジョンに跳ばれされてしまう。

 それじゃ、パンゲア大陸にある、それぞれのダンジョンを攻略したら、ダンジョンコアが壊されるんじゃね? っと、心配もしたものだが、実はコアはこっちの大陸のダンジョンの中にある。

 しかも底すら見えない程に地下深く掘られた穴の底にある横穴に置かれていて、とても一般の人では行く事は出来ない。

 コアにたどり着くには、意を決して穴に飛び込むか、ダンジョンマスターのダンジョン内の移動手段を用いる必要がある。

 はっきり言って、攻略不可能なのだ。

 それってダンジョン作成のルールに抵触するんじゃないのか? って思ったが、ちゃんと人が通れる通路(縦穴だが…)があり、それなりに長いロープでも使って攻略しようと思えば出来るから、ルール上は問題無いそうだ。

 ロープの長さは人が造れる長さではないし、それに掴まって降りるのも、果たして何時間何日かかるか分からない程に深い穴の底だが…。

 しかもその穴がダンジョンに足を踏み入れたら、すぐに現れるという、滅茶苦茶人をおちょくった仕様。

 いや、その穴の底にコアが眠っているなどと誰も教えてないから、今では穴に落っこちないように、ご丁寧に冒険者たちで柵を作っているそうだ。

 何か、ダンジョンマスターって、色々とズルいな。


「まだまだ復興までは時間が掛かるそうだが、陛下もべダム首長もトールには感謝していたぞ」

 ほっ?

「あんなに無茶苦茶やったのに、感謝される事ってある?」

「復興とは言っても、結局は新たに国を興すに近いだろ?」

 まあ、それはそうだろうね。

「だから、グーダイド王国やアーテリオス神国のそこそこ優秀な人材を送り込んで、その新たな国の重要ポストに就けるらしいぞ。とは言っても、ネス様からのお言葉で、私利私欲に走りそうな馬鹿は絶対に使わないそうだが」

 なるへそ。

 余ってる貴族家の次男とか三男とかを送り込む気だな。

「人種差別とかしそうな奴は、ちゃんと事前に排除してくれてるって事?」

「ああ、その辺は間違いなくやってくれるている。だから、かなり風通しが良い国が出来るだろうな」

 うん、それは重畳! 

 いつか復興した国々を旅してみたいものだね。

「陛下と首長が、たまには復興中の各地を周って欲しいって言ってたぞ? 時間を作って、そのうち見て周ろうな」

 ……2人に先手を打たれた様だ。

 でも巡視とかで長期間家を空けたらりしたら、またお仕事が…また人魚さん達に借りが…

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